第20話 堕天使
起きるとバッキバキになった体をほぐし更に下に降りていく。
「流石に石に直寝は全身痛くなる…。バッキバキだしお風呂入りたい…。意地でも下行くけど、お腹も空いた…。二週間以上飲まず食わずで生きてられるんだから結構この世界の人類の体って頑丈だなぁ。」
更に数日降り続けるとやっと底が見えてきた。
「やった!!底だ!!底が見える!!最高!!何があるかなー?」
急いで最後まで降りると50m以上はあるであろう大きすぎる扉があるだけだった。
「デカ!!?大きすぎ!!紋様も付いててロマンある!!…取っ手ないし押し戸じゃないと動かせなくない?」
一応全力で押してみるが動かない…。
「ここまできてそれは無いよ!!…動かしようが無いのなら破壊するまで。この扉を残しておく事で感じられるロマンより破壊して中を見れるようにする方がロマンあると思うし。」
亜空間魔法を扉に穴を開ける。マジこれ便利だなぁ。相手の強度関係なく切断出来るもん。私の使い方が頭おかしいだけだろうけど、無機物切る時とか料理する時とかに非常に便利なんだよねー。色々試した結果長時間使用又は大規模使用しない限り負担も少ないみたいだしコスパ良し。
『わーお、まだ作ってる途中なのにここまで来ちゃうなんてダメだよー。』
「は?」
目の前に居たのは前世で宗教関係の本や歴史書にもよく出てきた所謂天使?いや、悪魔?まぁ、どっちかではある事は明らかであった。見た目は白髪の幼い女の子にしか見えないけど、羽あるしどことなくクソガミとかと同じような気配もする。
『うーん、君この私を疑ってるでしょ。安心しなよ。君の予想通りここは最下層最後の部屋だよ。まさか素手であの子達を殺しちゃうとか人間も捨てたもんじゃ無いね。まぁ、君の場合出自が特殊とは言えあの狂気は元来のものでしょ。それに反する気質も持ち合わせた矛盾した魂。狂気の発芽はいつ頃かな?』
理解が追いつかない。これは現実なのか?異世界とは言え悪魔や天使などが実在し、こんなロマン空間を作り出していたのか?などの様々な疑問が頭の中をぐるぐると回る。
『そんな考え込まなくていいよ?気楽に行こうよ。私は世界の橋渡し役、様々な方々の代理。君が元居た世界では魔王とか堕天使とか悪魔とか天使とか色々な呼ばれ方をしてたんだよ。私の正体なんて気にしなくて…。』
「あー!!サタンとかルシファーとか呼ばれてた奴か。絵とはだいぶ違うから分かるわけ無いわー。」
『流石に固有名まで覚えてはいないかな。』
「悪魔って事は何かを代償にしないと出られないとか理不尽な事やるんでしょ。」
『突然の偏見が酷いね。君達が私達に望むからそれ相応の対価、労働の賃金を要求しているだけであって理不尽な請求は突きつけてないよ。それに、私が反乱を起こしたとか酷い事も書いてたし、本当君達って偏見酷いよね。私はあくまでもボイコットしただけだよ。待遇改善しろー!!って仲間とともにね。』
「あー、なんか神話が一気に普通の話に…。ロマンねー!!夢もねぇー!!つまんな。」
『酷くない!?君達が勝手に脚色して事実捻じ曲げただけなのに逆ギレは酷く無い!?』
「てか、ここ作ったの?」
『急に話変わるね…。まぁ、ただの実験場だよ。君が元居た世界でも実験とか沢山やってたでしょ。それと同じような事。この世界の生物達に様々な環境を与えどう適応するのかそれを見るためだけの実験場。この世界の上の奴はこういうのを好むらしいからね代理で管理してるの。耐性細菌役として様々な種族を呼び込みそのための餌も用意してある。君は宝なんかに目もくれず全滅させちゃったから一から作り直しなんだけどね。流石に抗生物質効かないから根本的対処とか言って体自体を塵一つ残さず壊したら意味ないからね。』
「うーん?」
『よく分かってないみたいだね。まぁ、流石に13も生きられなかった子にこんな雑な説明で分かれってのは無理だろうしあんま気にしたくて良いよ。』
「難しいことは分からないけど、ロマンがロマンじゃなくなる気がするからそのままでいいや。余計なこと説明されてロマンが減るなんて自体は避けたい。」
『そうそう、折角滅茶苦茶時間かけて降りてきたんだし君、私と契約してみない?君の狂気性には正直心惹かれるモノを感じるんだよねー。それに君の魂は特別性さ。上の方々の痕跡がある。ぜひ欲しい。』
「わー、悪魔っぽい提案!!ロマンあるわー。何を請求してくるのか先に言って。モノによっては容赦なく明け渡すよ。私はロマンを追い求められればなんだっていいの。ロマンを追えなくなる代償ならば支払うつもりは無い。」
『いいねー。芯がぶれない奴は希少だよ。私が求めるのは貴方の魂の一部とその狂気を孕む目が欲しい。』
「両目失明なんてロマン追えなくなるじゃん。」
『ふふ、大丈夫片目の視力だけでいい、私がいつでも君と君が見ている世界が見れるように…。魂の方も削る時は激痛だろうけど大した問題は無い。君の自制が効かない魔法が少し弱まるって言うデメリットはあるが…。』
「うーん、やっぱ悪魔が悪魔っぽくなくて違和感!!こう、契約者を騙そうとする気概を感じない!!」
『私達は聞かれればなんでも答えるよ?あくまでも聞かれればね?だってそうでしょ。契約書をロクに確認もせずに勝手に自滅していく子たちのなんて可愛らしい事…。じゃなくて、契約書の内容確認なんてどんな世界でも常識でしょ?ロクに確認せずに騙された。悪魔だって愚かで滑稽過ぎるわ。』
ふふふっと不敵な笑みを浮かべるソレは凶悪な悪魔の顔に見えた。
「あははは、確かにそうだね。で、それで私
へのメリットは?」
『生きているだけで環境を変えてしまう体質の制御を可能に。更に貴方がロマンを感じるであろうこの世界の情報全て。及び、貴方のバトルスタイルに合った装備の付与。こんな感じかしら。』
「乗った。」
『即答ね。少しは後先考えた方が身のためよ?』
「あははは、面白いこと言うね。我が身可愛さでロマンを捨てるならば死と同義。そんな事も分からないの?」
『あははははは、マジで狂ってるよ。親の愛情を受けられなかったらこんなんになるのか。元来の素質と相乗効果してるのか。そんなに妹が憎かったですか?両親共に働きもせず幼児の娘に金を稼がせるロクでなし。貴方は早熟で頭も良かったからそんな無茶振りにも対応出来た。そんなんでも貴方は良かった!!愛されていたから…。しかし、妹が出来てから貴方の生活は一変!!貴方はただ親と妹のために金を稼ぐ機械となった。生きる理由や希望までもを失った貴方は逃げるように新しい理由を探した。でも、未だに見つかっていないんでしょ?だから、未だに自らの命の重さが分かっていない。親から解放された今でも生きる理由、ロマンを探している。貴方はやはり面白い!上の方々も爆笑してましたよ。愚かでなんと純粋な願いなんだと。』
「あはは、残念。私は最初から家族なんかに執着して無いよ。彼らと私は血が繋がった他人。お互い干渉し合わない。確かに家計を支えてたのは私一人でも、ロマンを探しに文句が言えなくなるのだからWin-Winの関係だったよ。」
『うふふ、もう狂ってしまった自覚すら出来ない領域に来ましたか…。』
「さー、前世の話なんてどうでも良いから契約成立したんだし執行しなよ。私は過去や未来に興味などない。私の心を惹くのはロマンのみそれ以外は頗るどうでもいい。」
『あは、あはははははは。もう、最高ですよ貴方。貴方の破滅への道がどんな世界なのか尚更興味出てきましたよ。これだから異常個体は観察しがいがある。』
そう言ってソレが手を翳した時私の意識は一瞬で途切れた。
作者簡易追記
ソレ、表記だと私が分かりにくいので次話からソレの表記は堕天使で統一します。ご了承下さい。
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