第19話 長い長い階段
「やっちゃった…。」
うん、昔からキレると自制が効かなくなる自覚はあったけど、これはやりすぎだよ!!
「ロマンは!?ロマン!!こんな氷漬けだとロマンあっても見つからないじゃん!!誰だよこんな面倒な力与えた奴!!クソ神じゃねぇか!!ふざけんな!!」
逆ギレしても仕方ないんだけど、楽しみが目の前で奪われた感じだから逆ギレせずにはいられなかった。
「ふぅー、一通り叫んだらスッキリした。落ち着いて最後まで探索してみよう。そしたら氷漬けになってないロマンあるモノが見つかるかもだし…。」
私はそう思い、奥へ奥へと進んでいった。暫く一直線に進むと再び階段を見つけた。
「うーん、やっぱ階段だけ不自然に綺麗…。もしや、この場所作った人は階段マニアなのでは?」
マニアックな癖だなぁーと思いながら長い長い階段を降りる。
「ちょ、長すぎでは?」
前の階段の倍は確実に降りているがまだ底が見えない。体感だが半日程降りてもまだまだ先が見えない。
「はぁ!?階段なんかにロマン感じないんですけど!!帰るにしてもこの階段上がりたくないし底まで行ってやる!!絶対ロマンがあると信じて!!」
そう意気込み数日降り続けたが底にたどり着く事はなかった。
「むー、明らかにおかしい。幻覚では無いし、無限ループしてるのかな?」
そう思い、指先を軽く噛み千切り血を壁につける。こういう時にすぐに治るのは面倒…。
暫く進むが血の跡が出てこない事から無限ループでは無い事は分かった。
「無限ループでは無いとなると果てしなく長い階段?…どこ需要よそれ…。あ、ここ作った人は階段マニアだから本人需要なのか。」
因みに果てしなく長い階段ができている理由は階層が完成していないことに起因する。まだ、このダンジョンは出来たてホヤホヤで最下層まで階層が出来ていない。しかし、ダンジョンのルール的に階段と最下層は繋がっていないといけないため二層以降は未完成の最下層へと繋がった階段が出来上がっている。階段が異様に長いのはその分階層ができる予定であるためである。
しかし、そんな事誰も知る由が無いし、ましてやこの世界の知識がほぼ無い奴が知ってる訳がなかった。
「嫌ー!!長い!!長すぎ!!足取れちゃう!!!わーん!!!」
更に数日飲まず食わず寝ずで数えきれない程の段数降りたのに底が見えず流石に疲れた。
「無限ループじゃ無いただただ長いだけの階段ってどこ需要だよ!!階段マニアなのはいいけどマニアすぎでしょ!!限度があるよ!!」
疲れたしとりあえず寝よ…。ここ、動物の気配しないし。モンスターともエンカしないし、体限界だし。
〜その頃おっさん〜
「うーん、収まったみたいだけどいつまでも冷凍死体がここにあると迷惑だし削り出して一応バラして中に捨てるか。モンスターの餌にはなるだろ。」
おっさんは氷漬けになった勇者達を砕くとダンジョン内へとポイ捨てした。ダンジョン内で起きる事案は全て自己責任となるためダンジョン外から死体を放り込んで仕舞えばそこで事故って死んだ事になり責任は無くなる。
「全く、おじさん殺しは好きじゃ無いのに異世界人はなんで頑なにルール守れないかな。この世界のルールなんてほとんどがこの世界の最低限の秩序を守るためだけに設定されてるのにそれを破るとか無法者しか呼び出せないのか。与えられた力に溺れたのかおじさんわからないよ。あの魔女は元来のものだってのはこの事案と目を見れば分かるけど勇者達はなぁー。正義感を妙に拗らせていたりと本当によくわからない…。」
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