第14話 魔王による現地調査
〜数刻前魔王視点〜
我は部下の反応が消えた場所へと急行していた。奴は四天王の、否、魔族自体の長老的存在で途方もない年月魔王という存在を支え続けてくれた忠臣。そんな忠臣が殺さた可能性がある状況で黙っているほど我も優しくは無い。
「負け犬共が調子に乗りおって!!惨敗し、何もかもかなぐり捨てて命乞いした貴様らの先祖を哀れみ自治を認めてやったのに恩を仇で返すとはいい度胸だな。貴様らの切り札である勇者ですら我どころか四天王に傷一つつけられなかったというのに、その事を忘れたのか愚か者共!!」
記録されていた反応の消え方から見て一瞬で消し飛ばされたか封印されたと見て妥当。だが、切り札でも傷一つつけられなかった連中だ。一瞬で消し飛ばしたとは考えにくい。つまり、最も高い可能性として残っているのは封印。
「待っていろ!!今助け出してやる!!」
〜数刻後〜
我は記録されていた地点に到着した。周りに影響が出ない程度の速度ではこれほどまで時間が掛かってしまうものか。既に通達を終え宣戦布告までやってるとはいえ、この速さで報復を行うと自作自演を疑われかねない。そんな言いがかりは出来ぬように戦火はまだ交えん。
「異常気象、ここは氷が張る程寒い地域では無い筈。残留した痕跡を探し出し犯人を見つけ出す。封印という線で合っているだろうが気配も反応もない事から封印後連れ去られている。…どこまでも舐め腐りおって。」
怒りで我を忘れそうになるが無理矢理落ち着かせる。
「まだそれ程時間は経っていないのもあるが痕跡がくっきりと残り過ぎだ。つまり、痕跡を隠そうともしていない。否、もはや強調している域だ。…誘っているのか?」
そうなると想定される相手は戦闘狂。種族、国その他諸々気にしない。我々によって世界が占拠されようと問題ないと思っている相手…、どこまで我々をコケにすれば気が済むんだ?
沸々と湧き出す怒りを理性で抑えて濃い痕跡に触れる。
「…ふむ、奴の子らは瞬殺と見て間違いない。何かをする前に息の根を止められている。どんな手を使う?」
痕跡から過去の出来事を辿る。
「瞬間凍結、選別作業と言った所か。この先は乱れすぎていて見えん。しかし、相手の手札の一つと魔力は割れた。ならば、速攻でこの魔力の主の元へ行き奪還する!!」
しかし、不自然なことにこの周囲以外に魔力の痕跡が残っていない。生物である限り魔力の痕跡は確実に残すはずなのにそれがない。
「不自然、魔力自体を壊す道具でも身につけているとでも言うのか?何のために?そもそも、そんな事をすれば自死するのは目に見えているだろうに…。」
いくら思考を巡らせても全く分からない。確かにこの世にそのような道具は生み出されているがこのレベルとなると生物が触れていいものじゃ無い。我や我の直属の部下ならば問題なく触れるだろうが大抵の生物は即死する代物だ。
「痕跡を残したいのか残したく無いのか、はっきりしないな…。む、探知範囲に同じ魔力がある。罠の可能性もあるが罠など踏み潰せばいい。しかし、あそこはゴミ溜め場だった筈。いろいろ隠した方がいいな。まだ、戦火を交えるつもりはないしな。戦争などと言う雑務は犯人を血祭りにあげてやってからで良い!!」
我は気配を消し急いで痕跡があるゴミ溜め場に向かった。
〜同刻とある国の中心部にて〜
「報告!!魔王の反応が消失!推定ですが現場を調査しにきただけでまだ戦争を始めるつもりはない模様!!」
「ふむ、一ヶ月後と言うのは嘘では無いと言う事か。ならば、交渉の余地はあるだろう。魔王が血眼になって探している犯人を先に見つけ出し交渉のカードとして使う。期限は分かっているな?」
「はい。」
「では行け、この世界の命運を担う異界の勇者達よ。警告だが今代の魔王は勇者でも勝てん。故に争いになった時点で我々の負けは決定事項である。それを心してかかれ!」
「はい。」
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