第11話 お局
泡を吹いて倒れた男が起きるのを待っていると当然のように野次馬が騒ぎ始めた。
「えげっねぇ火力だ…。」
「もしかしたら魔女なんじゃねぇーか?」
「無い無い。魔女に至れる魔法使いはごく僅か。数百年に一人現れたら良い方だぞ?」
「確か前回は91年前だったか?」
「いちいち覚えてねぇーよ。」
「それもそうか。」
「他の火力も気になる!」
「研究してぇー!!学会で発表してぇー!!」
「新たな観察対象発見ー。」
「ふぁー!!夢を見ていたみたいだぜ…。マジあり得ねぇ。」
「落ち着いて、彼らには一旦奥で話を聞きます。」
騒ぎを聞きつけて男が出てきた扉から今度はお局感を漂わせるおばさんが出てきた。
そのまま流されるようにグレース達はその扉の先へと向かう事になった。
「えー、ここはあの馬鹿の部屋です。基本的にはあの馬鹿が使ってますが特別な冒険者の対応などにも使ってます。」
「相変わらずの口の悪さだな。女はみんな口が悪くなるのな?」
そう口走ったピーターにおばさんの凍りつくような視線が向けられる。
「ヒッ…。怖っ。やっぱあんたは強さとかそー言うのに起因しない怖さがあんな。」
「それはどうも。で、本題に入って良いですか?」
「どーぞー。」
「報告しないといけないので詳しい説明をして下さい。それと貴方は測定板に…。」
「測定板?なにそれー!」
グレースは目をキラキラ輝かせながらおばさんが取り出した板を見る。
「おー?」
見覚えがあるような無いような。そんなデザインで少しテンションが下がったが指示に従い触れてみる。
するとディスプレイのように文字が浮かび上がる。
名前:グレース
種族:???
スキル:凍???
固?スキル:???
「へ?何故?」
「確かそれって鑑定の上位互換で触れるだけでスキルとか丸わかりな装置だったよな?妨害って効くのか?」
「そのような前例はありません。これに触れれば誤魔化す事など出来ない筈…。すみません、もう一度触れ直してみて下さい。」
「えー、はーい。終わったら風呂貸してー。」
もう一度触れるとさらに状況は酷くなった。
名?:グレース
??:???
??:???
??:???
「仕方ありません。グレースさん自己申告でスキルなど教えてください。」
「んー?(ある程度誤魔化すか。)」
「では、メモを取るのでどうぞ。」
「私が使えるスキルは一つ!凍結魔法!何もかも凍りつかせることが出来る魔法だよー。種族は見て分かる通り人間ー。」
「…色々隠してませんか?」
「まさかー。私、嘘つかないよ?」
出来るだけあざと可愛く表情と声を作る。
「うわー、あざとさで誤魔化そうとしてる…。」
「無理だろこのババア相手によー。ヒッ、すみません!!」
「まぁ、いいでしょう。無理に聞き出してここが壊滅したら元もこもありませんから。たしか風呂でしたね?ご案内致しますよ。」
「わーい!!」
グレースはご機嫌でお局っぽいおばさんの後についていき、部屋を後にした。
部屋にはAランクパーティーのメンバー達が残って雑談している。
「あれ、ここって風呂なんてついてたのか?」
「あんたは数日に一回しか入らないから知らないでしょうけどギルドは返り血などの汚れを落とすためシャワー室の設置は義務よ。」
「そーだぞー。これだから常識が無いのは困るよ。今後こそ常識の勉強やる?」
「男のお前なんかに…。」
「え?だったら何されるか分からない双子かお前が苦手意識あるあの人か、そもそも喋らない盾か、俺かだったら誰が良いんだよ?」
「それは…。」
「馬鹿も少しは考えた方がいいぞ。」
「考えた方がいいのはお前の方かもしれないぞ…。後ろ見てみ?」
振り返るとそこには青筋を立てた双子が立っていた。
「お姉ちゃんと同類にされるのは流石に心外なんですけど。」
「何が何されるか分からないですって?」
「わーお、これは逃げた方がいいね。逃げ足ならば誰にも負けんよー。」
次の瞬間スッと音も立てず痕跡も残さず消えた。
「お姉ちゃん探知、範囲拡大バフかけるね。」
「絶対逃がさないわよ。」
〜シャワー室にて〜
グレースは普通に風呂を堪能していた。一応、ここのギルドにはシャワーの他に湯船もあり風呂に浸かることが出来た。
「パキパキ凍ったそばから溶け出して温度は暖かいままなんて凄い技術。科学も魔法と同じぐらいの発展してんのかな?」
彼女は知る由もないが科学などと言う分野は魔法に乗っ取られ概念すら無い。今使ってる湯船は底に魔法陣が仕込まれていて魔力を流すと湯が張り湯の温度を保つようになっているだけである。
因みにこれが壊れないのは込められた魔力を変換するってのが主な機能なのでグレースから漏れ出る魔力でモノが壊れる前に魔力を消費しているためである。
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