第10話 ギルドへ
「わー、ロマンパナイ。タイムスリップしたみたい。馬車に荷台に露店に色々。えげつな…。」
目の前の光景に心躍らせているとララから忠告が入った。
「ちょ、落ち着いてください。魔力は感情の大きさによって放出量が増えるんです!!」
「あ、火事場の馬鹿力的な感じか。」
「いや、マジで君おかしいよね。一応、Aと拘束具つけられて些細な高揚ですらこれだもん。もう、呪いの域だよ。」
「じゃ、うち来ます?」
「やめとけやめとけ、聖職者協会は魔法使いは受け付けない性質なんだぞ。壊滅させられたらどうするんだよ。」
「あら、貴方にしてはまともな判断ですね。」
「は?」
「いえいえ、なんでもありません。」
「まぁ、何はともあれギルドに報告が先だと思うよ。」
「あー、それもそうね。あ、一応言っておくけど結構柄悪い連中が多いから殺さないでね?」
「私の事なんだと思ってるんですかー。生まれてこのかた人殺しなんてした事ないし。ロマンの邪魔をされない限り何もしませんよー。邪魔してくるなら生死なんて気にせず排除しますが…。」
因みに彼女は前世でも同じような性格をしている。ロマンの探究の邪魔をした者を文字通り無力化したり、2度と同じ過ちを繰り返さないようにトラウマを刻んだりと警察にお世話になる事もしばしば…。あだ名で狂犬とつけられる程度のやらかしを頻繁にやっている。彼女の狂っている所は生物を躊躇なく傷つけたり殺したり出来る頭である。
「はぁ…。」
「そんなに心配しなくてもよくなーい?私普通の旅人だよ?本業の人に勝てるわけないじゃん。」
「無自覚で無慈悲な暴力って怖いわね。」
「「「分かる。」」」
「って、なんでみんな私の方を見てるのよ。こっちじゃないでしょ!?話の流れ的に!!」
「いやー、だってお姉ちゃん魔法の研究分野って黒じゃん。どのような魔法なら効率的かつ効果的に相手を壊すことができるかの研究なんてねぇ…。それの実験で私ら使うじゃん。耐性ないと死ぬレベルよ?」
「うん、俺の魔法袋も容赦なく壊したし。他人に迷惑かける事を躊躇しない辺り同類だぞ?」
「これに関してはこの馬鹿が正しい。魔法使いに共通して言えるけど、目的のためなら手段犠牲その他全部鑑みないじゃん。このパーティーの評判下げてるのってこの馬鹿じゃなくて君だからね。自覚ないみたいだけど。」
大楯も無言で頷いている。
「意外とSっ気強いんだ…。私の事とやかく言えないじゃん。」
「あー、もう!!いい!!」
「拗ねちゃった…。」
そうこうしているうちにギルドの前につき扉をあける。
「酒臭っ!!」
まだ昼間だというのにアルコールの臭いが充満した室内を見渡すと、明らかに柄が悪い連中がうじゃうじゃいた。
「報告来たぞー!」
ピーターがそう叫ぶと奥の扉から一際大柄な男が出てきた。
「叫ばんでも聞こえてるわ。二日酔いで頭ガンガンなのに…。で、天変地異の原因は討伐できたか?」
「それなんですが、討伐ではなく確保しました。」
「は?」
「目の前に居る彼女が原因でした。この街に来たのもただの旅らしく…。」
「はぁー!!?なんの冗談だ!?」
「百聞は一見にしかずね。抑えるのやめて良いわよ。」
次の瞬間グレースの身体から猛烈な冷気が吹き出し室内を一気に氷漬けにした。
「へ?」
何が起こったか分からない男は情けない声を漏らした。
「因みにこれ、一応最上位の拘束具つけての出力です。この通り…。」
「…。」
男は泡を吹いて倒れた。
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