第8話 ロマン

話し相手が変わったんだけどマジで何言ってるのか分からない。例えるなら、足し算引き算を習ってもないのに数学の問題を解かされてる状態みたいな感じ。


「うん、よく分からないと言う事はよく分かった。ほら、魔法って私が使えるの氷だけだし、そんな多種多様な魔法は使えないし、魔力とか概念的な話をされても勘でやってるから何がどうしてそうなるのか理解不能。でも、凄くロマンを感じて良い!!分からないけど、ロマンがありそうな話ってのは本能で理解出来る!!」


「少し話しズレますけど、さっきから言ってるロマンって何なんです。あと、人の話ちゃんと聞いてました?義務教育をちゃんと受けてれば分かる範疇の話なんですけど。」


「あー、ロマン、ロマンはねぇ。分かりやすく言うとその時その時、生物が生を謳歌する理由さ。例えば学者が常に勉強をしているのだって、より深く学問を理解すると言う事にロマンを感じているからやってる事だし、偉い人が更なる権力を得ようと画策するのだって、権力っていうものにロマンを感じているから。人それぞれ見えてるロマンは違うけど結局は皆んなロマンが大好きなんだよ。でも、見えてるロマンが違うから他人のロマンは理解出来ない。ほら、あるだろ。あっちとこっちは最終的な目的に手段まで同じなのに思想が全く異なる事から対立みたいな話。つまり、生物の本質はロマンにあるのさ!!このロマンというロマンこそ、私を魅了して離さずロマンって物!!」


「あー、はい。じゃあ、第二の作を使いますね。」


「?」


その人は私の両手首に何かをつけた。手錠って訳では無いけど、ブレスレットにしては装飾が地味と言うか無いというか…。でも、これは正真正銘の異世界産の何かで使用しても消えない…。未知の技術が常に目の前に…。ロマンしか無い!!


「不調はありませんか?」


「特に問題無し。ロマン最高!」


物凄くテンション上がってきた。こんなにロマンを感じる物が沢山ある世界なんて最高じゃん。殺されたのは解せないけど、ここに流してくれた事は感謝しないとね。


「!!?」


「お姉さんどーしたの?」


「な、何でもないわ。」


「ふーん。」


〜少し離れた場所にて〜


「おいおいおい、吹雪が一瞬収まったかと思ったら一気に荒れ出した…。大丈夫なのか?」


「さぁ、でも見た感じ魔力を機能停止にさせる拘束具普通につけてるよ?」


「…。」


その光景を見た僧侶は顔の色を失い唖然としている。


「おい、青い顔してどうした?」


「貴方達はこの光景の異様さに気づかないの?」


「何がだよ?」


「分かってても現実は変わらないじゃ無いか。ならば、驚く必要も困惑する必要も無いと思うけどなぁ。」


シーフは分かっているようだったがリーダーである剣士は現状を全く理解出来ない様子だった。


「はぁ、説明してあげるわよ。あの拘束具はただの拘束具じゃ無いのよ。あれは特別な素材から作られる魔力の変化する性質及びエネルギーとして利用できる性質を無くすもの。あれをつけて平然としていられる生物は居ない。表向きは魔法犯罪者のみに効果がある様に見せてるけど、普通の生物にも効果あるのよ。生物の根幹は魔力だから魔力の総量が少ない者がつけたら死ぬぐらいの効果がね。しかも、効力を最低まで落とした調整品でそれなのよ。でも、あれは最大限まで効力を上げてある品、お姉ちゃんですら、直接触れたら死ぬレベルの物。もう分かるでしょ…。」


因みにこのパーティーの僧侶と魔法使いは姉妹である。と言うかこの二つは犬猿の仲すぎて僧侶と魔法使いが共存しているパーティーのほとんどは僧侶と魔法使いは身内同士である。

この二つが犬猿の仲になっている理由は聖職者は魔法を神が引き起こす奇跡で信仰を深める事で魔法が強力になると思っていて、魔道士達はそれを否定し、原理を解き明かす事で魔法が発展すると思っているからである。…当然お互い相入れない存在である。


「つまり、どう言う事だよ?」


「はぁ、簡単に言うとアレをつけられて平然としてられる生物は存在しないって事。それプラス、周りの流れから見て普通に魔力を扱えてるって言う異常事態。しかも恐らくあれが出力を最低まで落とした状態なんだよ。つまり、彼女がやる気を出せばこの災厄なんてかすり傷にもならないレベルの天災を起こす事だって出来るって事。」


「それだけじゃ無いわ。素の状態でこの出力を出してたら街に入れてあげる事は出来ない。つまり、彼女が敵になるかも知れないって言う事実付き。」


「それって結構ヤバいじゃ…。」


「まぁ、だからこそ今は見守るしか無いねー。実力的には勝てない、交渉は有効だが制御不能故不可。さて、彼女はあの子に制御を叩き込めるか時間との勝負だね。」


パーティーメンバー達は魔法使いの指導力に全てをかけることにした。


因みにこのパーティーは全員がAランク相当の実力を持っているので決して弱いわけでは無い。なんなら、全体から見ても上澄み中の上澄みである。

簡易ランク表

Sランク→規格外、人外。生物の形をした何か。

Aランク→天才中の天才。下のランクの者が何人寄せ集まろうが敵わない。勇者パーティーのメンバー候補。

Bランク→才能ある者が鍛え続けて辿り着ける。指導教官レベル。

Cランク→才能も努力もそこそこで辿り着ける。部隊長レベル。

Dランク→才能がある又は努力すれば辿り着ける。一般兵レベル。

Eランク→鍛えていない一般人。つまりは所属したての駆け出し。

Fランク→子どもが所属する場合、雑用が多いが危険は無い。

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