第5話 代償
「オェェー。胃液が逆流と脳を捻り潰されるような激痛、この範囲は無理あり過ぎたかなー。」
私は巨大な邪龍を丸々覆える程の亜空間への入り口を一瞬開き即時閉じる事で反応される前に亜空間にしまった。あの空間に長時間いたら多分廃人になるからまともな攻撃通じない相手へ初見殺し行けるのでは?って思ったけど、多分これ、相手の大きさによっては私が耐えられない。てか、多分回復系のスキルなかったらこれも自爆技だよなぁ。引き継ぎ先の神様にはマジ感謝。
「うん、ついでにこの臭い酷いのとかもしまっとこ。」
凍りついた邪竜の体も同じように亜空間に仕舞い込む。中の物がぐっちゃになっても大した影響はない物ばかりだし、最初だけ使える手かな。
〜亜空間内部にて〜
「ナンだこれは。ジガがショウメツしていく。ダメだ、ノウをチョクセツかきマぜるようなカンカク。コわれる、おかしくなる…。ハヤくデなければ…。」
腐食液を全身から垂れ流しながら邪龍は際限なく広がる空間の内部を自我と精神が崩壊し廃人となりその命が尽きるまで彷徨う事となった。邪龍が亜空間へ閉じ込められたのと同時に魔王城へ一つの伝達が行われた。
〜魔王城にて〜
「魔王様、四天王の一角が何者かの攻撃により封印又は撃破されました。」
「ふむ、奴らは我々との戦争を望むと言うのか…。我々を恐れ条約を結んでから早数百年その条約を一方的に破棄し宣戦布告も無しに奇襲とは舐められたものだ。やはり、殲滅しておいた方が良かったか。あの時情けなどかけてやらなければ良かったか。はぁ、今回は情け無しで行くぞ。」
「して、如何いたしましょう?」
「先ずは他種族共に宣戦布告とその原因の提示、1ヶ月後からこの大陸を再び支配下に納める。2度と舐めた真似が出来ぬように襲う場所は確実に無惨な死体を残せ、全てを食すことは許さぬ。そして残りの四天王の指示のもと軍隊を結成、徴兵もしろ。これは我々魔族の威厳を取り戻す聖戦である。奴らに容赦など必要ない。我もたまには玩具で遊びたいと思っていた所だ。今回は我も前線に出ることを通達しろ。勇者パーティーが出てきたとて怯む必要は無い。奴らは仁義や約束すら分からぬ愚か者共、魔王の名において正義の鉄槌を下してやる。それと犯人は分かっているのか?」
「いいえ、証拠も残さず消えてしまいました。近くで異常気象が観測されていたのが何かしらの因果関係があるかもしれません。」
「ふむ、ではそこは我が直接調査に赴く、今回の被害は我の直接の部下にして数千代以上前の魔王の時代から魔王に仕えていた腹心故、我は腑が煮え繰り返っている。それに四天王が太刀打ちできなかった相手となると勇者パーティー以上の脅威である。四天王を再び赴かせさらに被害を増やす訳にはいかぬ故我しか適任はおらん。分かるな?」
「はい、彼の方をお呼びいたします。」
「ふむ、では我は数刻後出発する。その間の指揮はお前に頼む。くれぐれも早まるなよ。向こうが仁義や約束すら理解できぬ愚かな種族であつたとしても我々魔族までも堕ちる必要は無い。」
「分かっております。」
「では頼むぞ。」
「はっ。」
〜異常気象雪原にて〜
「気持ち悪いの治らないー。想像以上に代償大きい。痛い!!」
私は未だに悶え苦しんでいた。脳が痛い!!頭じゃなくて脳自体が滅茶苦茶痛い。
「鑑定…。」
自分の掌を見ながら鑑定を行う。
状態:魔力欠乏
魔力欠乏:魔力が0の状態なのー。この世界の生物である限り魔力を宿しているんだけどこれが0になると基本死ぬのー。魔法を使いこなせる生物が少ないのもそのためなのー。
「じゃあなんで生きてるの?」
追記:まさか魔力循環のスキルを持っていながら欠乏に陥る事はないと思うけど、万が一陥っても多分死なないとも思うのー。その理由も記録しておくのー。貴方の魂自体が馬鹿の雑な仕事のせいで結構特別性なのー。それプラス回復系のパッシブスキルまであるのー。死をギリギリ回避できてもおかしくはないのー。魂の修復は貴方が死んでからやる面倒な作業なのー。雑な仕事は本当迷惑なのー。
「なるほど、クソガミにも感謝しとけって事か…。」
私の体はそこで限界を迎え、そのまま猛吹雪が舞う雪原の中で眠りについた。
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