第3話 亜空間の内部

取説を読み終えた私は最後に残した地図を確認する。


「まずは鑑定っと。」


世界地図:この世界の地図なのー。地域の名称は戦争の勝敗の度に変わるから地形だけの地図なのー。自分の位置から半径25kmの地形を表示し続けてるのー。全画面表示も出来るのー。リアルタイム更新だから迷子も防げるのー。指定の生物が使用目的で触れるとダウンロードされるシステムなのー。つまり、無駄な演出付きなのー。この演出は作るの楽しかったのー。


私が再び地図に触れてみるとやはり溶けるように消えて行った。そして、頭で現在位置は?って考えたらさっきの地図が出て来た。


「ふーん、色々分かってきた。この家自体も多分張り紙の主、つまりは無責任な奴から私と言う面倒ごとを引き継いだ何者かが生成した物体で演出に力を入れてたから変な消え方したのか。」


因みに彼女の考察は半分正解で半分不正解である。何故ならスキルを取得できる本はこの世界に結構な数あるがそれら全てが同じような消え方をする。つまり、この世界では一部の本はなんか消えるって言うのが常識としてある。


「じゃあ次は名前の表示問題をどうにかしないと。」


あんな伏字で書かれてたら私自身もなんで名乗ればいいのか分からないし…。だって世界が違うから元の名前だと絶対浮く、目立つ。そんなのワクワクしないから嫌だ。

そう思いながら石板に再び触れてみる。


名前 グレース


「うお、伏字が外れた!!やったー!!」


暫く喜んだ後落ち着いたら一つの疑問が出て来た。


「うーん、由来はなんだ?…流石に名前は鑑定出来ないよなぁ。」


グレース:元の名前を名乗ると思ってたから解説は要らないと思ったけど、表示されてるならつけといて正解だったのー。由来は私達のような存在から力を授かったみたいな感じなのー。この世界では割とポピュラーな名前なのー。違和感少なくするために奇怪な名前は避けたのー。


「えーと、もしかして私の鑑定で出る説明文って用意されていたデータなのかな。だとすると向こうも大変だなぁ。たった1人のためにかける労力としては釣り合わないと思う。」


私を殺した存在から仕事を引き継いだ存在に感謝しながら気になっていた事を試す。


「…一通りの確認は終えたしここを出る前にあれっしょ。やっぱ、亜空間とか言う未知、未知とか言うロマン。気になるぅ!!」


私はワクワクしながら時空間魔法を使用する。ピキピキっと空間が崩れるような裂けるような挙動を見せた。


「わー、ダメだ。ロマンがビンビン過ぎて興奮が止まらない。中覗いてみよー。」


そう思いその変な空間に顔を突っ込む。中に広がっていたのは無限に続く虚空。数秒覗いただけなのに凄い勢いで気持ち悪くなって来た。


「うっぷ、確かに物入れにしか使えそうになかった。ロマン大事だけどロマンをロマンと認識出来る目の耳はもっと大事。中に入るのはやめとこ。ワンチャン、5億年ボタンの再現出来るかもーって思ったけどどっちかと言うと5秒ボタンの再現だよ…。よし、大体気になる事は試したし地図を参考に近くの街まで行ってみよう。」


そう思い石板と心許ない食料と水を亜空間の中に放り込み外に出る。


「うお、家まで消えるのかー。エグッ。ん?何あれ?」


突然辺りが暗くなり空を見上げると空を覆う程の何かが蠢いていた。

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