第149話 モンスターPTA幹部の炎上
―相田母視点―
私は、学校を出る。こんなにコケにされるなんて思わなかった。
なんで、私がこんな屈辱を受けなくちゃいけないの。そもそも、保護者に向かって、あんな暴言許されるわけがない。
私は、学校にとってはお客様のはずでしょう。にもかかわらず、まるで私を罪人みたいに扱って……
※
「うるせぇ、ババア」
※
息子に言われたあの言葉が頭から離れない。ずっと、自慢の息子だった。中学までは、学業成績はトップクラス。小さいころからやってきたサッカーでは、結果を出していたし、今年はベンチにも入った。3年の近藤っていう先輩がすごい才能を持っているから、今年は全国大会に出られるかもしれないといつも嬉しそうに言っていた。その先輩が悪い人だとも知らずに。全部、その先輩のせい。近藤っていう市議が父親らしいけど、その人もネットで炎上している。やっぱり、育て方が悪いんだ。だから、全部、あの人たちのせいなのに。
なのに……
信頼していた部活の先輩とその彼女に騙されて、いじめの片棒を……
うちの息子は被害者なはずなのに、まるで加害者みたいに扱う。学校から処分されるの? そんなことありえない。
学校の横暴よ。小学校や中学校の時は、きちんと対応してくれたのに。
今回は抗議に行っても、相手にもされなかった。
こんなのって絶対におかしい。
「そうだ、こうなったらネットで学校の横暴を訴えてやる。さすがに、あの対応はひどすぎるし、こっちは被害者だから、きっと、きっと」
念のため、さっきの会話は隠れて録音しておいた。
「そうよね。これをSNSにアップすれば、きっとみんな同情して味方になってくれるはずよ」
ミンスタグラムへ。写真や動画を投稿するSNS。
自分のアカウントに、すぐに投稿する。
※
世間を騒がせている高校のいじめ問題で、私の息子が巻き込まれました。ただ、悪い先輩たちに騙されただけなのに。息子は被害者です。それなのに、学校側の対応は、最悪でした。これが証拠です。
どうか、皆さんのお力で息子を助けてください。
※
家に帰って、すぐにアカウントを確認する。見たこともないくらいの反応が返ってきていた。
やっぱりそうだ。私は間違っていなかった。期待に胸を膨らませて、コメントを確認する。
「えっ……」
その反応は、私の思惑とは別の方向に向かっていた。
――――
「教頭先生と高柳先生、かっこよすぎ。大正論」
「モンスターペアレント、完全に論破されてるww」
「加害者にも未来があるって、ガチでいう人初めて見た」
「息子がいじめ加害者になるのも、よくわかるモンペぶり」
「学校も言い過ぎかもしれないけど、正論だよなぁ。いじめられる側にも問題があるっていうけど、今回のいじめって完全に被害者えん罪だったらしいじゃん。いじめられる側に全く問題ないじゃん」
「盗人猛々しいってこういう人のことだよね」
「正直、無関係の自分でも、この投稿主さんの反応に虫唾が走ったわ」
「こういう学校にむしろ学校を任せたいと思った」
――――
私を否定する声がほとんどだった。怖くなって、焦って投稿を削除する。
これで大丈夫だよね。フォロワー数だってそんなに多くないアカウントだし。
そう自分を安心させるように言い聞かせて、食事の準備を始める。
――――
「あれ、慌てて投稿削除した?」
「もちろん、画像と音声データ保存してあるよ」
「これは大きな波だ」
――――
まさか、今度は自分たちがネットの悪意にさらされることになるなんて思いもせずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます