第137話 追い詰められていく文芸部
―とある文芸部員視点―
全校集会で、校長から、今回の騒動についての説明があった。
すでに、知り合いのサッカー部員たちは、処分が出るまで謹慎を言い渡されていて、学校に来ることができなくなっている。
今回の事件の主犯である近藤先輩も天田美雪もそうだ。
まさか、近藤先輩がここまで簡単に切られるなんて思わなかった。だって、親は市議会議員の有力者で、本人もサッカー部のエース。有名人だったはず。学校の宣伝にもなるはずなのに。
そんな有力者だろうが、関係なく学校側は徹底的に鉄槌を下している。普通、学校側のメンツとか保身とかもあるはずなのに。どうして、こんなにスピーディーに処理されていくの?
近藤先輩は、学校のカーストでも最上位で、彼には誰も逆らえないような迫力があった。私は、そこに憧れて、彼女にはしてくれなかったけど、遊びでもいいと思っていた。だって、近藤先輩と仲が良ければ、みんながちやほやしてくれるから。自分の立場も上がるから。
でも、しょせんスクールカーストなんて子供のお遊びだったと実感させられる。そのお遊びの頂点にいたはずのサッカー部員たちは、大人たちの力によって簡単にその地位を追われてしまった。
そして、壇上の校長は続ける。
今回のいじめ問題にかかわった生徒は、刑事と民事、そして、学校側からも処罰が下されると。青野英治の親は、怒っていて、彼を貶めようとした生徒たちと徹底的に戦うと。
怖い、怖い、怖い。サッカー部も末期は裏切りが続出したと聞いている。自分だけが助かろうと、仲間たちを売ったらしい。それが文芸部でも起きるのが怖い。もしかしたら、すでに誰かが裏切っているかもしれない。
そうなったら。
私が、近藤先輩と天田美雪を結び付けたことも、サッカー部の誹謗中傷に加担したことも、青野英治の原稿や私物を処分したことも。
全部、学校側は知っていて、ただ泳がせているだけだったら、私の運命はもう決まっている。
学校は留年か退学になっちゃう。そうなれば、親は私のことをなんて思うんだろう。慰謝料を請求されたらどうしよう。もしかして、自分も近藤先輩のように逮捕されてしまうのかもしれない。
そんなことになってしまえば、私の人生は終わり?
なんで、青野英治をいじめようと思ったんだろう。こんなことになるって知っていたら、絶対に加担しなかったのに。怖い、怖い、怖い。いじめは、犯罪なの?
なんで、そんな大事なことを誰も教えてくれなかったのよ。
私はどうして知ろうとしなかったんだろう。
少しずつ破滅の足音が聞こえてくるように感じる。大丈夫。みんなで口裏を合わせれば、絶対にばれないはずだから。そう言っていた立花部長本人が、学校を休んで姿を見せない。
無責任すぎる。私たちの人生、めちゃくちゃになりそうなのに、どうして。
すでに、裏切られた気持ちがいっぱいになっている。
自分の足元がぐらぐら揺れて、崩れ落ちそうな気分。
だめだ、弱気になっちゃだめだ。自分の身は自分でも守らなくちゃ。
そう覚悟を固めて、なんとか全校集会を乗り切った。
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