第32話 【ライズアップ・トーチ】
「うわー……物凄い行列……」
講習を終えた後、僕達は早速迷宮の入口があるという広間の方へとやってきていた。モンドさんは探索隊を組むとのことでここには居ない。
広間の奥には五つの扉と受付があって、人が大勢並んでいるのは一番左の扉……第一迷宮の入口だ。というかそこから右の四つの扉の前には挑戦者っぽい人は誰も居ない。
「迷宮は数字が上がるごとに難易度も上がる。一つ前の迷宮を制覇しなければ上位の迷宮には挑めない。そして……挑戦する探索隊の
レイさんが講習の内容を確認するように呟いた。その説明の通り、第二以降に向かおうとする探索者はほぼ居ない……あっ、それっぽい人達が第二に行った。凄い注目されてる。
「全ての探索隊が制覇を目指して真面目に攻略する訳ではないから、この数字は必要以上に重く見ないでほしいとは言っていたが、それなりの難易度ではあるのだろうな」
要は記念に一回行ってみる、みたいな人達もいるってことだろう。とはいえ七割って結構だと思うんだけど。実際に第二以降に向かってる人が全然居ないんだし。
「念の為に迷宮探索セット、買いますか?値段的にも多分買えると思いますけど」
広間の脇の方、これまた人が集まってる場所を指差す。あそこは迷宮内で役に立つ道具とかが売ってるみたいで、その中でも迷宮探索セットっていうのが初心者にはオススメらしい。
「お前が必要だと思うのであれば買えば良い。どうあれ、私がお前を守り切る。迷宮内には人目が無いようだし、いざとなれば
「……買わなくても大丈夫ですかね」
変装状態、それもアイスさんにバレないよう血を使わない状態での蜘蛛との戦いですらレイさんは強かった。そんな人の本気も出せる宣言である。心配するだけ損な気がしてきた。
「じゃあ早速、僕らも列に並びましょうか」
という訳で僕らもいざ迷宮へ。事前に説明を受けているとはいえ、やっぱりドキドキはするからそわそわしながら列に並ぶ。
そんな感じで順番を待っていると、いつの間にか周りがざわざわし始めていた。
「おい、アイツらって」
「ああ、【ライズアップ・トーチ】だ」
みんなが視線を向けている方を見ると、どうやら入口の方からこちらに向かって来る人達が注目されているようだった。
「やあやあみんな!今日も精が出るね!でも一番大事にすべきは自分の命!特にここでは、自分に手が届く範囲で頑張るのが肝要だよ!」
先頭に立つ金髪の男の人が身振り手振りを交えながらそう言い放つ。高そうな剣とか盾をガッチリ装備してるのもあって、凄い目立つ人だ。
「ブライト・スタァ。探索中隊【ライズアップ・トーチ】のリーダーだ。おどけてるようにも見えるが戦闘の腕は本物で、所属する探索者をまとめ上げる確かなカリスマ性もある」
なんか横で知らないおじさんが誰かに解説し始めた。ありがたいから聞いておこう。
「今回のメンバーはセト、アネモネ、イエモンか。……ガチの探索だな」
おじさんの言う通り、ブライトさんの後ろには同じ探索隊のメンバーなんだろう人達が付いてきていた。
それぞれ、仮面を被った荷物持ちっぽい大きな男の人、杖を持った魔法使いっぽい紫髪の女の人、全身黒づくめの人の三人で、三人共ただ者じゃなさそう感が出てる。
「迷宮には同時に四人しか入れないが、探索中隊というからには所属している探索者も多い。だからこそ、各々のコンディションやスケジュールを考慮し、その時々の最良のメンバーを組むことが出来る。そしてこのメンバー選出はガチ、つまり
なるほど、人数が多いとそういう事も出来るんだなあ。と感心して聞いていると、いつの間にかブライトさんの視線が僕とレイさんに向いているのに気づいた。
「キミ達、二人組かい?」
話しかけられちゃったよ。周りの視線が痛い。
「はい、そうですけど……」
「なら迷宮に挑戦するのはまだ止めた方が良い。講習でも言われただろう?挑戦するのであれば出来る限り四人で挑むべきだと。人数を揃える。迷宮挑戦前に出来る準備は色々とあるけれど、一番大事で分かりやすい点だ」
「はあ……」
「物見気分なのかもしれないが、第一迷宮でも命を落とす可能性は十分にある。慎重な選択をオススメするよ!……おっとそこのキミ!随分と装備が痛んでるじゃないか!点検はしているのか――待て、もう少し話を……!」
僕達には言いたいことを言い終わったのか、他の人達の方へと移動しようとしていたブライトさんを、仲間であるという四人は呆れた様子で引っ張って行った。
「なんかイヤミでも言われちゃうのかなあって思ってたけど、普通に親切な人でしたね」
「そうだな」
まあ僕達は色々事情があるこのまま挑戦するんだけど、忠告してくれたのはありがたいよね。
あと知らないおじさん、説明ありがとう。
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