1章-2 めじろ亭でのひととき
商人組合でおすすめされた「めじろ亭」に行ってみると、そこには3階建てのおしゃれな建物があった。入り口には、いかにも宿屋という感じのベッドをモチーフにした看板が設置されている。
中に入ってみると、1階には受付と食堂が設置されておりお客さんもちらほらといるようだ。
宿に着いたのが夕方ちょっと前ということもあり、さっそく部屋を確保するために受付に行く。
「いらっしゃいませ。本日は宿泊でしょうか?」
「はい、とりあえず一泊したいのですが…空いていますか?」
「大丈夫ですよ。お一人様用のお部屋ですと食堂での夕食朝食、
シャワールーム10分間の使用料金込みで1泊銀貨15枚になります。」
どうもこの宿には、他の宿にはあまりないシャワールームが設置されているらしい。さすが商人組合おすすめの宿屋である。
「では、とりあえず1泊お願いします。」
そういって、受付のお姉さんに銀貨15枚を支払った。
「確かにお預かりしました。本日のお部屋は2階の205号室になります。
夕食は、18時から20時の間に食堂でお取りください。また、朝食は
7時から9時の間に食堂でお願いします。なお、チェックアウトは
11時になりますので連泊される場合はチェックアウトまでにお伝えください。」
「分かりました。短い時間ですがお世話になります。」
受付で部屋の鍵を受け取った俺は、受付のそばにあった階段をのぼって自分の部屋に向かう。2階には201号室から210号室までが存在していた。さっそく205号室に入ってみると、そこにはベッドが1つと一人がけのソファーと机が1セット、簡易的な棚が1つ置いてあった。
無事に部屋で一息つくことができた俺は、さっそく「発注管理」のスキルで何が発注できるのか確認することにした。
タブレットの「発注管理」の画面を開くと、そこにはたくさんの種類の商品が並んでいた。発注できる商品のカテゴリー一覧を見てみると、「コンビニエンスストア」というカテゴリーが解放されていて、他にも9つのカテゴリーが未解放になっていることが分かった。「在庫管理」にもレベルがあったように、どうも「発注管理」にもレベルがあり使えば使うほど機能が拡張されていくようだ。
とりあえず、コンビニで購入することができる物を発注できるようなので、姫神様からいただいたお金のうち金貨5枚を運営資金に移動させ、さっそくなにか発注してみることにした。
何を発注するか考え、日本にいた頃に通勤中に呼んでいたインターネット小説を参考にすることにした。ほとんどの場合、食塩や砂糖、香辛料が高値で売れていたのでこれらの商品を候補にあげた。しかし、重たい商品を鞄で運んでいくのは大変だと考え、少量でも高値で買い取ってもらえそうな香辛料を中心に発注した。発注した商品は以下の通りである。
・黒こしょう 5kg 銀貨 5枚
・白こしょう 3kg 銀貨 30枚
・山椒 1kg 銀貨 10枚
・唐辛子 1kg 銀貨 3枚 計 銀貨48枚
発注確認画面を見てみると、納期は翌日16時となっているので商人組合に持ってくのは
明後日の午前中とした。そして、納品する際に入れておく容器や鞄を買いに行くために明日
街を観光することにした。
ベッドでごろごろと時間をつぶしていると、夕食の時間になったので、食堂にいくと「本日のメニューは二角ウサギのステーキ」と入り口に書いてあった。運ばれてきたのは、バケット5切と卵スープ、そしてメインのステーキであった。食べてみると味付けは塩のみであり、それ以外の香辛料は使われていないようだ。店員に聞いてみると、この街では岩塩が近くで産出するらしく塩は比較的安価に手に入るそうだ。しかし、香辛料のたぐいはすべて輸入品に頼っており、宿の食堂で出そうと思うと宿泊費をそうとう値上げしないとやっていけないくらい高級品らしい。
ためになる話も聞けたところで、食堂でおなかいっぱいになった俺は部屋に戻った後、シャワールームに向かうことにした。
シャワールームでは10分間のうちの1分間お湯が使えるらしい。シャワールームに行くと、従業員から1回分の石けんとタオルを1枚受け取り個室に案内された。さっとシャワーを浴びて、個室から出ると部屋に寝間着が1セットおいてあると案内された。すこし気になったので、シャワーのお湯はどのように準備されているのか聞いてみると、魔道具を使って用意していることが分かった。この魔道具が非常に高価らしく、商人組合と提携している宿屋だからこそ準備することができたそうだ。
部屋に戻って寝間着に着替えた俺は、手元の残金を確認することにした。
<残金>
運営資金: 金貨4枚 銀貨52枚
資本金: 金貨3枚 銀貨83枚
極端な話、 何もしなくても2週間くらいなら宿屋に滞在できるようなので、とりあえずこの宿屋に1週間ほど滞在して行商人として稼いでいくことにした。
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