第56話 不倶戴天と、不退転――①
「申し訳ありません。ターゲットの奪取、失敗しました」
『
マスクの下で、『
「いやいや『
「しかし……貴重な戦力を……『シーズンズ』の四人も、失ってしまいました」
「ああ、それはいいんだ。どの道、彼らはここで捨てる気だった」
「えっ!?」
「成功したら、誘拐犯はあの四人だという噂を流す予定だったんだよ。それなら、探索の目は『シーズンズ』に集中し、私たちは邪魔されずにすんだだろう? まあ、今となっては言うだけムダだがね……第一、『
「……」
『
「そんなことよりっ」
『
「ダッダリアの勇者が私たちの敵に回ってしまったか……うーん、上手くすれば、彼、仲間にできると思っていたのだがなあ。そう言えば、何か最近、人が変わったって噂も聞くな……とにかく、
「や、奴はこの俺が必ず倒します!」
『
「きゃははははは」
この教会の雰囲気にはそぐわない、高い笑い声が、まるで『
その笑い声の主は――
まだ薄明の状態なので、相変わらず顔はよく見えないが――例の、妖しく輝く不思議な蝶を連れていた、ケープの女だ。
「荷が重いんじゃな~い? ボ・ウ・ヤには」
女、『
『
「『
手振りを交えながら女が言うと、その後ろの、離れた席に座っていた人影から声が飛ぶ。
「女狐は引っ込んどれ」
声の主――大柄な男性。特に、肩幅の広さが目立つ。
薄暗い中でも、鋭い牙を持った何かの動物の頭骨を、マスク代わりに被っているのが分かる。
がっちりした体格は、マントのようなもので覆われているが、それも、動物の毛皮でできているのが明らかだ。
「我は戦いたい……今夜だって、スケルトンごときではなく、我が戦っていたら、あんな騎士どもなど五分もかけずに皆殺しにしてやったものを」
「まあまあ、そこまでやったら事が大きくなりすぎるでしょ?」
答えた『
「『
「はん、猪突猛進で勝てるほど甘い相手じゃないわよ」
蝶の女が言い返す。頭骨を被った男が、更にそれに何か言おうとした刹那に、
「うーん、ボクはパス~」
水を差すような、なんとも気が抜けた若い男の声が、彼ら二人とは、『
この男の外見も、薄明の中なのでぼんやりとしか見えないが、衣服は『
もうお分かりと思うが、『独立幻魔団』の幹部らしきこの三人のモチーフは「猪鹿蝶」である。
ともあれ、椅子に座っている姿勢もだらけている、若い、鹿の角の男は続けて言った。
「そんなメンドくさそうな奴、ボク、相手したくな~い。君たち三人で好きにやってよ……あ、でも、『
(クズが)
(クズ男が)
聞いた瞬間に、『
恐るべき反政府組織『独立幻魔団』の幹部にすらクズと断じられるこの男、一体どれだけの悪辣な所業を重ねているのだろうか――
「はいはい」
『
「みんなの考えは分かった……とにかく、相手は勇者だ。それに、その両翼を支えているのもSランクの
『
「私たちは必ず目的を完遂する」
『
そして、いかなる魔法なのか、木像と言わず石像と言わず、周囲の女性像、ピシピシとひびが入ったかと思うと、一つ、また一つと小さな破片と化して壊れていく。
「破壊神スカーニアよ、見せてやるぞ! 汝の唾棄するこの世界を……私と、『独立幻魔団』が、何もかも……一つ残さず、たたき壊すその
『
像が破壊されたあとの木片や石片は、地に落ちない。まるで目に見えない渦に飲み込まれたかのように、教会の建物内をゆっくり、ぐるぐると旋回している。
『
「フフフ……ハハハ……アーハハハハッ!」
『
その破壊の渦と、狂気の高笑いの中にあっても、『独立幻魔団』の者たちは、全く動じず、その場に立ち、あるいは座り続けている。
蝶の女や鹿の角の男など、口元がのぞく者については――軽い笑みさえ、浮かべているのが見て取れる。
「フハハハハハッ!」
『
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