5話 療養中ですが
★休暇の朝
回る球体や、地面から浮かぶ建物に混じり、無駄な装飾のない立方体の建物があった。それは宇宙警察署の寮だ。その中の一つの窓からレオンは顔を出して朝を迎えていた。
寝起きで頭が働かない状態で、レオンは首筋をさすった。すべすべとしたその首には何もない。まさか二日前にレオンが出血死の危機にあったとは、この首を見ても誰もわかるわけがない。レオン自身も、今こうして穏やかに過ごしていることに不思議な気持ちになっていた。
昨日は一日中、病院で寝ていただけだった。その日、レオンの上司が見舞いに来て、ガン警部補は「明日は休暇をとれ」と一言だけ言って帰っていった。
そして今、レオンは休暇の朝を迎えている。
「犯人はまだ野放しになっているんだ。ゆっくり休めないよ」
レオンは先輩と一緒にホテルの殺人事件の犯人を追っていた。その犯人は地球人の女の子とクモのような体をもつ、見たこともない種族だった。その少女は、これもまた見たことのない建物ほどの大きさの巨大タコとともに逃亡していた。レオンは、為す術もなく眺めることしかできなかった。
あの少女が、他の場所で殺人を犯す可能性もある。それなのに、家でのんびり寝ていることができなかった。
レオンは、もう一度自分の首を触った。痛みも異常も感じなかった。仕事に支障はないのに、地球人は脆いという認識のせいだとレオンはぶつくさ言った。
「……個人的な情報収集くらいならばれないよな」
レオンはそう自分にいいわけすると、私服に着替えて外に行くことにした。
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