★病室
レオンが目を覚ますと、白い部屋のベッド上に横たわっていた。銀色の肌と顔の半分以上を占める黒い瞳をもつ宇宙人の医者が、ライトをチカチカさせながらレオンの顔を覗き込んでいた。
レオンは起き上がろうとしたが、首回りが機械で覆われており、動くことが出来なかった。
「おっと、まだ怪我は治っていないのですから、無理をしないでください」
医者がなんとか起き上がろうとするレオンを止めた。
なぜこんなところにいるのか、レオンは思い出そうとした。スクワイト先輩と事件を追い、クモ少女に襲われ、巨大タコを見たところまでは覚えている。しかし、その後の記憶がない。
「あ、そうだ先輩は? 先生、俺と一緒にイッカー星人の警察官もいませんでしたか。先輩も腕を大けがしていたんです」
「ああ、触手の子ね。問題ないよ、君をここに連れてきたときには、腕は元通りに生えていたよ」
「そうですか」
レオンは先輩の無事を聞くとほっとした。目覚めたばかりだというのに、眠気が襲ってくる。
しかし、ここで眠るわけにはいかないとレオンは思った。早く怪我を治して、逃げたクモ少女と巨大タコを追わなくてはいけないのだ。
「先生、俺はもう大丈夫です。これ外してくれますか?」
レオンは、首回りの機械を叩いてお願いした。しかし、先生はゆっくりと首を横に振った。
「だめだめ。君、総頸動脈に穴が空いていたんだよ。わかってる? ここにくるのが遅かったら、大量出血で死んでいたかもしれない。それにまだ手術は終わっていない」
医者はレオンの周りにぶら下がっている血液パックを指さした。その血液を通したチューブは首の機械に繋がっていた。顔が動かせないのでよく見えないが、動いているのを感じた。
「なるほど。それで、先生、いつこれは取れるのでしょうか?」
その後はもちろん退院できますよねと言いたげな顔でレオンはにこやかに笑った。しかし、医者はまた首を横に振った。
「あと数分で手術は終わりますが、しばらくは入院ですよ」
「え、怪我をしただけですよ。病気でもないのに! 先輩よりましな怪我ですよ」
レオンは信じられないと目を開いた。というのも、レオンは手術が必要なほどの怪我をして病院に来ることは初めてだった。それまでは、宇宙医療と聞くと、すごい技術であっという間に治るというイメージがあったのだ。
おかしいと不満をいうレオンに医者は丁寧に説明した。
「いいですか、レオンさん。あなたは地球人です。地球人の体は他のよりデリケートです。それはあなたがよくご存じでしょう。治療も時間をかけないと、負担がかかってしまうのです。わかりましたか?」
「わ、わかりました」
医者の厳しい口調にレオンはおとなしく従うことにした。納得したレオンに医者は安心すると、「また、様子を見に来ます」と言って病室を出て行った。
一人になったレオンは、辺りの様子を確認した。首が動かないので細かいところはわからないが、個室であることだけはわかった。静かな病室は首の機械音がかすかに聞こえるだけだった。
レオンは事件のことを振り返った。体液を吸い尽くして男たちを殺した犯人は、地球人とクモの体を持つ少女で間違いない。その少女がパパと呼ぶ巨大タコ。それから巨大な触手に盗まれた異種融合器だ。
レオンは考えを巡らせ、巨大タコが異種融合器を使ってクモ少女を作り出したのではないかと推測した。しかし、何のためにという疑問が浮かんでくる。それに、巨大タコの正体がわからなかった。レオンは、いろいろ考えていくうちに、頭がぼんやりしてきた。今度は眠気に勝てそうにない。シャドウに助けを求めるかと思いながら、レオンは眠りについた。
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