第6話ヒロコさん

ヒロコさんとは6年前に肺炎で入院した時に出合った。僕は肺炎だったが、症状が軽くなると、病院の駐車場でタバコを吸っていた。

めちゃくちゃ、看護師に怒られたが。

その、タバコを吸う為に駐車場に出ると、ちょっとした坂を乗り越えられない車椅子の患者さんがいた。

僕は声を掛けてから、車椅子を押してあげた。

年は僕より10歳くらい年上で、点滴を24時間している女性患者で、それがヒロコさんだった。

ヒロコさんは、膠原病で1年の内8ヶ月はこの大学病院に入院しているらしい。


僕は退院しても、ヒロコさんが餃子が食べたい時は、スーパーの焼餃子を買ったり、たまにヒロコさんが、病院食堂のラーメンを食べさせてくれた。

1度、ヒロコさんが外出の届け出を出して、近所だがタクシーで丸八寿司に向かった。

僕らは普通に食べて、僕はビール、ヒロコさんはお茶を飲んだ。しかし、お茶が気管に入り、カウンターで嘔吐した。

直ぐに病院に連れ戻った。

ある日、ヒロコさんは退院した。それでも、たまにLineでやり取りしていた。

それから、3年後の3月。

ヒロコさんから、Lineが届く。

読むと、

「母の娘です。母が生前、大変お世話になりました。母は昨日の日曜日に亡くなりました。ありがとうございました」 

と、ある。

僕は、悲しくて部屋で1人でウイスキーを飲んだ。

最後に別れたのが、大学病院の食堂であった。

悲しかったが、また、新たな出会いもある。

こうやって、人は出会いと別れを繰り返し成長するのだと、思ったもんだった。

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