第3話裏切り者のN

今回は悲惨な話だ。

Nとは、7年前に入院先で知り合いになり、たまに店で飲む仲になった。

左手の小指はない。そういう世界に所属していた人間だ。

自らは、幹部だったと散々聞かされた。

酔うと必ず、昔の武勇伝を話す。人をあまり疑わない僕は、この人は相当ケンカが強いのだろうと思った。

また、IQも130あると言っていたがそれも信じた。中卒と言えども頭の良い人間はいるからだ。

途中、Nは他県に移り住み、暫く電話だけの関係だったが、4年前こっちに帰ってきた。

暫く、僕のマンションにいて直ぐに仕事を見付けて、マンションを借りた。

行動力に感動していた。

が、そこまでは良かった。Nはちょくちょく、金を僕から借りる様になった。しかも、僕だけではない、他人からも借りていた。

ある日、僕に、

「今月苦しいから、2万円貸してくれないかな?」

と、懇願する。

僕は、しぶしぶNに2万円貸した。

すると、彼は2万円受け取るとタクシーを捕まえ、名古屋の歓楽街へ向かった。

これで、Nに不信感を持つ。


そして、地下鉄の構内で酔っ払いとケンカして殴られメガネが壊れ、ほほに青アザを作っていた。

犯人は逃げたらしい。

アンタ!ケンカ強いんじゃないの?

それから、客引きの外人の案内で店に入ったら全く内容が違ったらしく、その外人に蹴りを入れたら、肋骨を骨折してくる。

もう、コイツ、ケンカ弱いなと感じた。

そして、2年前の冬、彼は酔っ払って本音を漏らした。

「お前は、中卒のオレより頭が悪い。法学部?じゃ、オレと法律の問題で勝負でもするか?」

「お母さん、僕はえぇ、人を殺した事のある男なんですが、息子さんはだらしない」

「オレはケンカが強い。警官10人いないとオレを取り押さえられないんだ」

僕は、コイツを見限った。

トットと、部屋から追い出して玄関のカギを閉めた。

そして、3日後電話がくる。お金を貸して欲しいと。

僕はコイツと縁を切りたくて、数千円渡して電話番号もLineも拒否設定にした。

まんまと騙されていた。それから、僕は他人を゙あまり信用しないようになった。

それは、良い経験だと思った。

だが、また、人に騙されるとは思って無かった。

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