第96話 双子とお出かけ
数日後の昼、私は双子と一緒に人を待っていた。
「二人共楽しみ?」
「うーん?」
「よくわからない」
わからないかぁ……
まぁ、何年どころじゃない年数この家から出てないわけだからね。
そう、今日は双子と一緒にお出かけの予定なのだ。
もちろん、私だけでは案内もできない、そのため、案内役をお願いしたのが、
コンコン
「おっ? 来たかな? はーい」
すぐに、玄関へ向かい扉を開けると、そこには待ち人、サティさんがいた。
「ハルさん、おはようございます」
「おはようございます、今日はよろしくお願いします」
「はい、こちらこそ」
身体を得た二人だけど、屋敷の中に引きこもりというのも可哀想だったので、どうにかお外に出してあげたいということで、サティさんにお願いしたのだ。
サティさんは、ハンバーグのお礼もあって、快く引き受けてくれた。
もっとも、
「この程度では返したことになりません」
と、言っていたけどね。
律儀だわぁ。
そんなわけで、サティさんが非番の日にうちに来てもらったわけだ。
「準備は大丈夫ですか?」
「はい、二人も大丈夫?」
「「うん!」」
まぁ、そもそも、二人に準備も何もないんだけどね。
「それじゃあ、出発しましょうか」
「「出発!!」
元気よく外に出た。
アトリエの時のベルみたいに、家の外に出れないということはなく、普通に外に出れた。
地縛霊みたいなものだと思ってたんだけど、違ったんだね。
「まず、どこを案内しましょうか?」
「そうですねぇ……、二人はどこか行きたいところ……、ってわからないか」
そもそも、何があるかわからないまま、行きたいところとかないかな。
うーん、それじゃあ、
「最初は冒険者ギルドへお願いします」
「冒険者ギルドですか?」
なんでわざわざそんなところ? という感じのサティさん。
確かに、子供を連れて行くところではないかもね。
「理由としては、いくつかありますが、例えば私がいない時に頼りになりそうなのって冒険者ギルドくらいなので」
まぁ、そんなことはないと思うけど、はぐれた時とかね。
冒険者ギルドへ行けばサティさんがいる可能が高い。
商業ギルドもそうだけど、あっちはギルドマスターのイティアさんしか知り合いがいないからね。
まぁ、一応後で案内はしてもらうけど。
「なるほど、確かに、冒険者に面通しをしておくと何かと便利かもしれないですね」
納得した様子のサティさんに冒険者ギルドに案内してもらった。
冒険者ギルドに入ると、中にいる人の目が一斉にこちらを向いた。
正しくは、サティさんとその後ろにいる双子だけど。
双子はびっくりしたのか、私の後ろに隠れた。
いや、私見えないから隠れられてないんだけど。
「~~~」
そんな様子を見て、サティさんが何事か言う。
うまく聞き取れなかったけど、私の連れです的な感じかな?
「見ている暇があるなら早く依頼に行きなさい」
そんなことを言うと、冒険者達は少し慌てたように依頼掲示板に向かっていった。
サティさん強しだなぁ。
「一応、ここのサブマスターですからね、さ、行きましょう」
ふーん……、えっ? サティさんってサブマスだったの?
「サティさん、サブマスなのになんで受付嬢なんてやっているんですか?」
ギルドの奥に入り、人の目がなくなったところで聞いてみる。
「冒険者を見るのも仕事のうちですからね、それに、いつもというわけではありませんよ」
重要な人が来た時はサティさんが受付することが多いんだそうな。
うん? いや、待て?
「私、レアさんからサティさんが受付嬢って聞いたんですが?」
うん、記憶によるとたしかに、そう紹介されている。
私がそう言うと、苦笑いを浮かべた。
「レアさんはまだ勘違いしているんですね、レアさんの相手をする時は、私が受付にいることが多いからきっとそう認識しているんじゃないかと」
あー、レアさんもこのギルドではBランクって高いから重要な人たちなんだろうね。
それで、いつの間にか認識が変わっちゃってるのがレアさんらしいけど。
「カリナさんは、きっとわかっていつ気がつくのか楽しんでいるのではないかと思います」
ふむ、それじゃあ私から言うことは特にないかな。私もレアさんがいつ気がつくのかを楽しみにしておこうかな。
「失礼します」
サティさんがノックをして部屋に入る。
ここは冒険者ギルドの長の部屋、つまりギルマスの部屋だ。
「おう、サティ、今日は休みじゃなかったか?」
相変わらずの強面のギルマス。そういえば、この人の名前聞いた気がするけどなんだったっけ?
忘れちゃった。まぁ、ギルマスとだけ覚えておけば大丈夫でしょ。
「今日はハルさんとお連れを案内しに来ました」
おっと、そうか、私見えないのか。
ギルマスの机に魔力付与ポーションを置くとすぐに察したギルマスはそれを飲んだ。
「おう、ハルもいたのか。久しぶりだな」
「久しぶり、そうですね。ポーションの納品に来て以来だから、ちょっと前ですね」
家を買ったりする前だから体感的には結構な時間だね。
まだ一ヶ月はたってないけど、あれから色々とあったし。
「そんでそっちの二人が噂の双子か?」
ギルマスはちらっと目線を双子に向け、双子はびっくりしたように私の後ろに隠れ……ない。
いつもの強面の顔がどこへやら、二カっと笑うギルマス。
「こんにちは二人共、お名前は何ていうんだ?」
わざわざ、しゃがんでまで目線を合わせた。
「レナだよ!」
「ルナだよ!」
二人は全く怖がる様子もなく、挨拶をする。
それを受けて、ギルマスは双子の頭を撫でている。
その様子に私はびっくりしてしまった。
さっきはすぐに隠れたのに、更に強面なギルマスでも逃げないなんて。
それに、このギルマスもなんだ、この子供の相手に手慣れている感は。
「まぁ、ギルマスは強面ですけど、何故か子供には好かれるですよね」
私の反応を見て、サティさんが苦笑いをしながら私に言う。
「まぁ、子供の相手は、自分のところので慣れてるからな」
自分のところの?
「ギルマス……、子供いるんですか?」
「ああ、この娘達よりちょっと歳上な娘が一人な」
そのうち、紹介してやるとのこと。
……なんだろう、ギルマスはきっと独身貴族だと思いこんでた。
優しく双子を撫でる姿を見ていると、嘘じゃないのはわかるけど、なんか……
「イメージと違いすぎるなぁ……」
思わず漏れた私の言葉に、サティさんが吹き出したのだった。
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