第97話 ギルマスのアーティファクトコレクション

「わー」


「きゃー」


 わーきゃーしているレナとルナ。

 二人は、ギルマスの両肩に乗ってはしゃいでいる。

 ほんとすぐに懐いたなぁ……

 レアさん達にはほとんど見向きもしなかったから人見知りみたいなものだと思ってたんだけど違うのかな?

 なんとなく、身体ができてから反応が子供らしくなってる気がするけど、身体に引っ張られてたりするのかな。

 ちょっと気になるけど、まぁ、楽しそうだから今はいいか。

 そんな楽しそうな二人をサティさんと見守っていると、


「そうだ、どうせだから楽しい場所を案内しよう」


 ギルマスが二人を降ろして何か言い出した。


「楽しい場所?」


「またあの部屋ですか……」


 私は疑問に思っているが、サティさんは、少し呆れた感じだ。

 部屋? そんな呆れるような部屋があるの?


「ハルにとっても楽しいと思うぞ」


 ギルマスは何故か楽しそうだ。

 いや、楽しいのはいいけど、どんな場所なのよ。


「俺のアーティファクトのコレクション部屋だ」


 アーティファクトのコレクション!? そんなものがあるの?

 私が驚いていると、サティさんが首を振った。


「正確に言えば、役に立たないアーティファクトの押入れという感じですね」


 あー、そういうこと。

 要するに、何に使うかわからない、アーティファクトをギルマスが集めていて、それを押し込んだ部屋があると。

 そういえば、最初に会った時、ギルマスはポーションにも食いついてたっけ。

 強面のくせに、魔道具マニアだったわけか。

 私だったら、魔道具はいくらでも作れるけど、普通だったら魔道具はアーティファクトなんて呼ばれる貴重品なんだね。

 でも、そういうコレクション見れるの私的には楽しめそう。


「それじゃあ、行くか」


 一人ワクワクとした感じで部屋を出るギルマス。


 一緒に続こうとして、疑問が浮かんだ。


「あ、そういえば危ないものとかはないんですかね?」


 流石に、危険なものがあるところに双子を案内するのはどうかと思うんだけど。


「それなら大丈夫です。戦闘の役に立たないとされた、本当に何に使うかわからないようなものですから」


 それなら安心なのかな? いや、何に使うかわからないってちょっと怖くない?

 念のため、二人には触らないように言っておこう。


「二人共、私が良いって言ったもの以外は触ったりしたら駄目だからね」


「「うん!!」」


 良い返事。一応手も繋いでおこう。


「おーい、こっちだぞ」


 ギルマスの呼ぶ声、ほんと楽しそうだなぁ。


「ハルさん、話が長くなったら途中でやめてもいいですからね」


 サティさんが、私は聞き飽きましたので……

 と、忠告をしてくれた。

 きっと、何度も何度も同じことを聞いたんだろうなぁ……

 まぁ、ちょっと楽しみにしつつ話半分に聞くことにしておこうかな。



 コレクション部屋はすぐ隣の部屋だった。

 部屋の中は、横長の机が2列で並んでいて、その上に、なにやらいっぱい乗っていた。

 うん、たしかにコレクション部屋って感じ。

 しかし、結構な数があるなぁ。

 机一個に3つから4つ載っている、


「出ているのは20個程度だな、しかし閉まってあるのも10個くらいあるぞ」


 数えようとしていると、ギルマスが教えてくれた。

 ほほう、結構な数があるね。


「例えばこれなんか!」


 ギルマスが真っ先に、一つの魔道具に駆け寄って説明を始ようとする。


「ギルマス、全部を説明するとかやめてくださいよ」


 サティさんが、それを制した。


「5つくらいにしてください」


「5つ!? それは少なくないか!?」


 確かに少ない気もする。

 しかし、サティさんが首を振った。


「ギルマスは、一個に付き説明する時間が長すぎるんです。1個に付き10分かけてたらそれでもうかなりの時間ですよ」


 あ、なるほど、そういう感じなのね。

 たしかに、それだと聞く方も大変だ。

 基本は5つだけ聞いて、その他に気になったら聞けばいいかな。

 まぁ、この感じだと今日限定ってわけでもなさそうだしいいや。


「ぐぬぬ、わかった。ではとっておきを絞って紹介しよう!」


 ギルマスは少し残念そうにしたが、気を取り直したように一つの魔道具に向かう。


「例えばこれだが!」



 ………

 ギルマスの説明は聞いてた通り長かった。

 いや、楽しくはあったよ?

 しかし、一個一個、どこから手に入れたとか、どんな思い出がとか語るから、時間以上に長く感じてしまう。

 物自体は割りと面白かったのに、疲労が溜まったように感じるのはそのせいだろう。

 そんなギルマスの説明は3つ目が終わったところだ。

 長すぎたので簡単に説明すると、


 1つ目は、一定の速度で回る円盤。

 ターンテーブルかな? レコードでも置いて針させば音がなりそうな感じ。

 まぁ、たしかに、使い道がわからないってのは納得。


 2つ目は、微風が出る箱。

 それだけ聞くと、暑い時とかに役立ちそうな感じなんだけど、残念ながら本当に微風なのだ。

 なんだろう、たしかに手を近づければ風が出ているのはわかるけど、ちょっと離れるとわからない。

 もうちょっと出力どうにかして欲しい。


 3つ目は、振動する小さな物体。

 ……モーターじゃん! 普通に何か応用効きそうなんだけど?

 触ってみると、結構な強さで震えてたし、マッサージ機器とかには普通に使えそう。

 何か応用先思いついたら借りるなりできたらいいな。


 と、そんな魔道具の紹介が続いて、4つ目だ。


「こいつは凄いぞ!」


 とお決まりになった言葉をギルマスが発する。

 手に持っていたのは、ペットボトルのキャップみたいなものだった。


「こいつはだな、例えばこれを……ハル、試しにこの箱持ってみてくれるか?」


 ギルマスが指さしたのは、30センチ四方くらいの木箱だった。

 言われた通りに持ってみる。


「おぅ!? なんで持てるんだ!?」


 うん? 持てと言われたから持っただけなんけど、驚かれた。


「それ、中に瓶が詰まっているからかなり重いはずなんだが」


 あ、そういうこと。


「私幽霊なので重さとかあんまり関係ないんですよ」


「そうだったな……、すっかり忘れていた」


 まぁ、要するに重いことを確認させたかったってことでしょ。

 箱を置いて中を見てみると、たしかに瓶が詰まっていた。

 しかも、瓶は液体が入っているから確かに重そうだ。

 私がそれを確認したのを見て、ギルマスは気を取り直したように説明を続ける。


「まぁ、簡単に言うとだ。これを貼り付けたものは重さが軽くなるのだ」


 先程の木箱にギルマスは魔道具を貼り付けた。

 魔道具はマグネットみたいに張り付く。

 そして、ギルマスは箱を持ち上げる。


「ほら、こんなに軽くなった」


 ……と言われましても。


「いや、ギルマスはそんなの貼り付けなくても普通に持てるじゃないですか」


 サティさんが呆れたように私の言葉を代弁してくれた。

 そして、


「私が持ちますよ」


 と、名乗り出てくれた。


「まず、魔道具を外した場合ですが……」


 サティさんはしゃがんで箱を持ち上げようとする。

 が、


「うっ、流石に重いですね……」


 箱はちょっとだけ持ち上がったけど、すぐにサティさんは力尽きてしまった。


「そして魔道具を貼り付けた場合ですが」


 キャップを貼り付けて、もう一度サティさんはしゃがむ。

 そして、


「よいしょ」


「おおっ!」


 今度は普通に持ち上がった。


「このように、貼り付けたものを軽くする効果があるのです」


 サティさんは、右手のひらの上に、箱を載せる。

 箱の大きさに対して、片手……、さっき瓶が詰まっているのは確認したのを考えると異様な光景だ。


「これはなかなか凄いですね……」


「ええ、ギルマスの役に立たないコレクションの中でも、これは役立つ方ですね」


 サティさんが箱を降ろしながら言う。


「ですが、欠点がありまして、効果が短時間しか保たないのです」


 サティさんは降ろした箱を再び持ち上げようとするが、今度は持ち上がらない。

 もちろん、魔道具は貼り付けたままだ。


「このようの短時間しか保たない上、再度使えるようになるのに1日程度かかるので、荷物を運ぶにも微妙に役に立たないというわけです」


 なるほど……、そういう理由でこの部屋のコレクション入しているわけか。

 うん? でも、これ結構使えない?

 短時間で尽きるっていう欠点はあるけど、一日で回復する。

 要するに、魔力がすぐになくなるってわけだと思うんだけど、補充の速度を上げてあげればいくらでも使えるってことでは?

 ふむ、仮に推測が当たっているとしたら、割りととんでもない魔道具だと思う。

 私が持っているアレと組み合わせたら……


「ハルさん? どうかしましたか?」


「次の説明に入りたいのだが……」


 私が考えていると、二人に声をかけられてしまった。

 次の説明? あ、一応聞いおくか。


「最後は、これだ。これは、触ると音が鳴る魔道具で……」


「あ、やっぱり良いです。それよりも、さっきの魔道具のことなんですが」


 ギルマスが触って、ポーンという高い音が響いたのを確認して、私は話を戻す。

 うん、単に音が出るのならいいや。

 それよりも、さっきの魔道具。


「あれ? 貸してもらうことって可能ですかね?」


 私のあの魔道具の応用で頭がいっぱいだった。


 私に5つ目の説明を遮られてたギルマスは少し不満そうだったが、私の話を聞くと目の色が変わった。

 そして、交渉の末、必ず返すとの約束の元、魔道具を借りることができた。

 ふふっ、これを使えば夢のアーティファクトが作れるかもしれないぞ。


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