第92話 スタンピード?
ハンバーグを食べていると、
コンコン
玄関の方からノックの音がした。
誰だろレアさん達が帰ってきたとかかな?
「こんにちはー」
この声はサティさんか。
ポーションの納品は朝やったはずだけど、なにか不備でもあったかな?
「二人はそのまま食べててね」
二人に言い残して玄関に向かい、玄関を開けるとサティさんが待っていた。
「サティさん、こんにちは。どうかしました?」
「ハルさん、こんにちは。今日はちょっとご相談があって来ました」
ご相談ってことはポーションの不備じゃないのかな?
まぁ、立ち話もなんだし。
「ひとまず、中にどうぞ。外からは見られたら不審ですし」
「あ、はい。すみません。お邪魔します」
サティさんを招き入れて、えっと、話す場所はリビングしかないか。
二人がまだ食べてるけど、まだ会わせたことなかったっけ。
まぁ、紹介すればいいか。
私がリビングに入ると、二人は同時にこちらを向いた。
「サティさん、先にご紹介しますね」
「えっ? はい?」
サティさんはまさか他の人がいると思っていなかったのかびっくりしている。
「えっと、一応私の娘? のようなものです。二人共ご挨拶」
二人は立ち上がると、サティさんに向かって頭を下げた。
「レナです!」
「ルナです!」
かわいい。ではなく。
サティさんはそのあまりの可愛さにびっくりしている、というわけではなく。
「娘……さんですか? えっと、ハルさんはご結婚されていた……?」
娘ってなるとそうなるのか。
「あー、いや、そういうわけではなくですね」
どう説明すればいいんだろう。
まぁ、最初から説明すればいいや。
「あ、すみません。サティです。ハルさんにはいつもお世話になっております」
説明の仕方について考えていると、サティさんが挨拶を返していた。
おっ? もう冷静になった?
というわけではないのかな、敬語だし。
「二人共ご飯途中にごめんね。私はサティさんと話してるから食べててね」
二人に言って、
「サティさんはこちらにお願いします」
「あ、はい」
サティさんとともに、ソファの方に向かった。
私が勧めると、サティさんがソファに座ったけど、どうも目が二人の方に向いている。
「えっと、二人はですね、こちらに元々住んでいまして」
あー、
「ここに出ていたっていう幽霊なんですよ」
「幽霊……? ですか?」
「はい。サティさんは聞いたことがないですか? ここに幽霊が出るって噂」
「はい。聞いたことがあります、噂では双子の幽霊が出るとの……あれ?」
サティさんは二人の方を見る。
「双子の幽霊……、あれ? あ、でもハルさんも幽霊だから……」
混乱している様子。
「まぁ、色々とありましてね。懐かれたので面倒を見ているというわけです」
「えっと、聞きたいことはいくらでもありますが……、幽霊って食べ物食べれるですね?」
おっ、そこに気がつくとは目ざといな。
「そこも色々とありまして、今は二人は身体を持っているんですよ。なのでご飯も食べれます」
「……身体を持っている?」
サティさんは二人のことを見つめる。
そのままたっぷり10秒くらい見ていただろうか。
「わかりました」
おっ?
「ひとまず、何も気にしないことにします。あのお二人はハルさんの娘さんのようなもの。これだけ覚えておきます」
……ただの現実逃避だった。
まぁ、現実って実は結構不思議だったりするよね。
「今日お尋ねしたのはですね」
双子のことを流して本題へと入った。
レアさん達が行った村の方で、オークの群れが出現したらしく……」
オークの群れ? 肉は食べたけど、実物はまだ見たことないかな。
「あ、ご安心ください、群れのボスは倒したらしいのであとは残党を倒すだけだと聞いております」
オークの群れってのはそれなりの脅威度ってことかな?
いやレアさん達ならきっと大丈夫なんだろうけど。
「しかし、その群れの討伐でそれなりの怪我人がでてしまったらしく」
ふむ、この流れは……
「ポーションが活躍したってことですかね?」
「あ、はい。そのとおりです。大変助かったと現場から感謝の言葉が届いております」
うん、あれで助かったという人がいたのはいいことだね。
「それでお願いなのですが、ポーションの納品を増やしていただくことは可能ですか?」
やっぱりそういう話題になるのか。
納品を増やすことはできる。そもそも、増やすだけだしね。
でも、
「オークの群れは討伐されたから大丈夫なのでは?」
「はい、オークの群れは確かに討伐されました。しかし、まだまだ他の魔物が残っているようなのです」
ふむ、大きな塊のうちのまだ一部を倒しただけってことかな?
群れってのはどのくらいの規模なのかわからないけど、元々かなりの数の魔物がいたってことだろうか。
「スタンピードが発生しているのではないかとの声もあります」
スタンピード? ってなんだっけ?
「魔物の大量発生とそれが波のように押し寄せることを言います」
あ、そういえばミドリから借りた本で読んだっけ。
なんか、序盤の山場によくあるやつね。
「今のところはまだ兆候を探っている段階ではありますが、それでも魔物の量はかなりの数になっています」
そのためにレアさん達が呼ばれていったってことか。
「その対処のために、多くの冒険者、そしてポーションが必要になるのです」
どうか、お願いできないですか? と言われてしまった。
別に断る気はなかったし、そういう事情があるのであれば必要なのもわかる。
「いいですよ、ひとまず納品を倍くらいにすれば良いですか?」
「倍!? そんなに可能なんですか?」
今は毎日15本くらいを納品している。
最初は133本とかいう数を納品したら引かれてしまったの、かなり数を抑えた感じだ。
向こうの予算の問題もありそうだったし……
「そんなわけで、倍くらいなら余裕で。なんだったらもっと増やせますが」
「倍となると、ちょっと上と相談が必要ですね……、予算が……」
あ、やっぱり予算の問題はあるのね。
うーん、まぁ、緊急事態っぽいし。
「増やした分は後回しとかでも大丈夫ですよ。魔物の対処でそれどころではないでしょうし」
「すみません、助かります。スタンピードの魔物を換金すれば足りるはずですので、必ずお支払いしますので」
私としては支払ってくれれば問題ない。
もう、かなりの金額もらってるし、簡単に作れるものにあれだけもらうのに罪悪感があったところ。
そもそも、拠点手に入れちゃった今、使う当てもさほどないしね。
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