第91話 高性能すぎる人形
「おっと!」
二人が私の腰あたりに抱きついた。
「この感じだと成功したみたいかな?」
「ですね、知らないで見ると人形には見えないくらいです」
さっきもそうだったけど、やはり実際に動いてみるとものリアルだ。
「二人共違和感とかない?」
「「違和感?」」
「あー、変な感じがするってこと? 身体のどこかが痛いとか、気になるとか」
私が言うと、なぜかお互いを見る。
「うーん……?」
「お腹が……?」
「気になる感じ?」
お腹?
「えっと、どんな感じとかわかる? 痛いとかはある?」
なにか失敗して変な病気とかあったら困る。
「痛くはないけど……」
「なんか気になる?」
二人してコテンと首を傾げている。
かわいい、ではなく。
「うーん、なんだろう、ほんとに病気とかじゃないといいんだけど……」
残念ながら医学的知識がないから変なことがあってもわからない。
こっちに医者とかいるのかな?
いや、仮にいたとしても、この二人を見せて大丈夫なのかな?
「あの……」
「うん? 何ベル?」
「まさかとは思うんですが……」
ベルがもったいつけるような確認をしようとした時、
『ぐー』
音がなった。
声じゃなく音。いや、お腹の声と言っていいかな?
つまるところ、
「お腹が減っているということでは?」
ベルが信じがたい予測を口にした。
………
「えっと、リアルだとは思ったけど、そんなことありえるの?」
二人の身体はさっき私が作った人形のはず。
それなのに、お腹がすくなんてことがありえるのか?
「ワタシも信じられませんが、マスターさんのやることですし」
なんか暗にお前なら何をやってもおかしくない的なことを言われた気がする。
まぁ、いいや。
「二人共、お腹の違和感って……、こう……」
なんて言えば良いんだろ?
空腹って言葉じゃ説明し辛いよね。
「なにか食べたい感じ?」
「食べたい?」
「わからない?」
そうだよね、二人共長い間幽霊やってたんだし、食べるって感覚忘れちゃってるんだろう。
まぁ、状況証拠からそうだとは思うけど、
「ひとまず、なにか食べ物を与えてみるのがいいんじゃないでしょうか?」
「そうだね。そうしようか」
ベルの提案に素直に従うことにした。
なにか食べ物……というところで思い出した。
「こっちの世界のご飯美味しくないんだよねぇ……」
はっきり言ってしまうと、まずい。
こっち出身の二人なら受け入れられるかもしれないけど、できれば美味しい物を食べさせてあげたい。
となると、一番の候補は地球から持ってくるなんだけど……
「流石に今戻っても寝てるだけだろうしなぁ……」
時刻は午後4時、地球では午前4時だから間違いなく寝てるだろう。
「うーん、どうしたもんかなぁ……」
そうなると私が作るしかないんだけど、私自身料理はそんなに……
「ってそうか、錬金術で料理できるんだった」
以前もウルフ肉作ってステーキを作った。
ウルフ肉だったら在庫があったはず。
持ち物一覧を確認すると、たしかにウルフ肉が残っていた。
しかし、それよりも、
「オーク肉? ……そっか引っ越し祝いでサティさんにもらったんだっけ」
自分が食べることないしすっかり忘れたよ。
こっちを使おうかな、こういう時でもないと使い道ないし。
思い出したが吉日ってね。
というわけで久々の錬金術料理。
以前はステーキにしたんだけど、今回もそれでいいかな?
というか、それ以外の選択肢ってあるのかな?
材料は肉と塩……、外に出れば野菜くらいは売ってるかもだけど、そもそも買えないしね。
「うん? 肉と塩ってことはアレができるか?」
思いついたのは、ミドリの好物の肉料理。
アレだったら素材は足りるはず……
さっそく、オーク肉と塩を素材として指定する。
「肉を細かくする……のはきっと魔力がどうにかしてくれるでしょう」
工程と完成形をイメージしながら魔力を注ぐ。
できるだけ美味しくなって欲しいから魔力はゆっくり目だ。
5分ほどかけてゆっくり注ぐと球体がボンッと弾ける。
魔法陣の上に浮かぶのは、薄く丸い肉の塊。
「よしよし、思った通りちゃんとうまくできたね、ハンバーグ」
「確かにそれなら素材は同じで違うものになりますね」
ハンバーグは卵とかパン粉とかを入れると柔らかくなったりするんだけど、基本的には肉と塩だけ。
オーク肉も豚肉っぽい感じでちょうど良さそう。
肉の量的にまとめていくつかできたから保存食には良さそうだけど。
「でも、これを複製……、はあんまりしたくないなぁ……」
流石に食べ物を複製したものは食べたくはないかなぁ……
飲み物でやってるから大丈夫だとは思うんだけど、なんとなくね……
「まぁ、40個くらいはありそうだからいいか……」
元のオーク肉を全部素材にしちゃったからかなりの数になってしまった。
指輪に入れておけば時間止まるからそのうち食べたり、配ったりすればいいや。
そんなわけで、
「できたよー、二人共」
「「わーい」」
二人とともに、食事の席につく。
二人はハンバーグに興味津々だ。
こっちではハンバーグとかないのかな?
「それじゃあ、いただきます」
「「いただきます??」
疑問形……、そうか、このあたりは地球、日本の文化だよね。
「これから食べますって挨拶かな」
私が説明すると、二人も倣ったように。
「「いただきます!」」
手を合わせて唱和した。そしてこれでいい? という感じで私の方を見る。
かわいい、ではなく。
頷いてあげると、二人は嬉しそうにフォークを持った。
私も同じようにフォークを持って肉を切る。
肉汁があふれる。
明らかに美味しそう。やっぱり自分で作って正解だったね。
口に運ぶと口の中でも肉汁が溢れた。
これがオーク肉……、完全に豚肉。それも、結構いい豚肉だ。
ちらっと二人の方を見ると、
口に入れたまま目を見開いて固まっていた。
「レナ? ルナ?」
もしかして、口に合わなかったとか?
レアさん達は地球の料理も美味しいって言ってくれたからそんな違う味覚じゃないと思うんだけど。
もしかして、幽霊だとまた違う? あ、幽霊じゃなくて今は人形か。
不安になっていると、
「「美味しい!!」
二人が感想を言ってくれた。
あ、良かった、と思うのもつかの間、二人は凄い勢いでハンバーグを切って口に運ぶ。
「そんなに早く食べたら、喉につまらせるよ。ちゃんと噛んで食べなさい」
注意しつつも、嬉しそうに食べてくれる姿に嬉しくなってしまった。
やっぱり、自分の作ったものを喜んでくれると嬉しいものだね。
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宣伝失礼いたします。
昨日よりカクヨムコンの作品を投稿しております。
底辺配信者でしたがもふもふのモンスターと合体してモン娘になってダンジョンに入ったら引くほど無双して超絶バズってしまった
現代ファンタジーのダンジョンものになります。是非ともよろしくお願いいたします。
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