第84話 魔粘土
遺跡の探索を諦めて、数日が経った。
ちなみに、あの遺跡の入り口はまた石で塞いで置いた。
何もないところではあるけど、重要な場所っぽい感じだったしね。
不特定多数が入るのはあんまり良くないと思う。
冒険者ギルドのマスターにでも話そうと思ったんだけど、聞いたら留守にしているらしいとのこと。
サブマスターがいるらしいけど、私とは面識ないしやめておいた。
急ぐことでもないかなということで、冒険者二人が帰ってきたら相談することにでもしようと思ってる。
そう、二人はまだ帰ってこない。
まぁ、近くの村って行っても移動に一日はかかるって言ってたし、魔物の討伐も含めてもう少し時間はかかるだろう。
遺跡の調査も終わってしまったし、外にもあまり出る気になれない。
私は引きこもって錬金術で遊んでいた。
いや、遊んでいたっていうのは語弊があるかな?
割と重要な事柄について研究をしていたのだ。
「ふむ? なるほど?」
錬金術で出来上がった物体を手でも手あそびながらつぶやく。
それは、土でできた丸い球体。
だが、しかし、ただの土ではなく、クレイゴーレムを倒したときに手に入れた素材、魔粘土で作った球体だ。
魔粘土と名前から予測していた通り、魔力を持つことができる物体だ。
実は素材を入手していたときから結構期待をしていて、その実験をずっと行っていたわけである。
まぁ、大半がベルが言っていたことの応用に関してだけど。
魔粘土の性質は以下の通り、
1.魔力を持つ
2.注いだ魔力量に応じて硬さが変わる
3.魔力の質によって性質が変わる
まぁ、1はそのままだね。
2に関しては、試しに魔力を注いでみたら鉄かというくらいに固くなった。
問題はこの3についてだ。
いつもの理念と関連した部分で、魔力にこういう性質を持つようにと念じて加えてあげることでその性質を持つことができる。
これを応用すればいろいろなことができるのではないか? という期待だった。
まず考えたのは、自分の思い通りに動く人形だった。
私の姿は見えない、現状、姿を見せられそうな魔法もまだ見当たらない。
じゃあ、私の姿をした操り人形を作ればよいのでは? という考えだった。
この目論見は、半分成功、半分失敗だった。
実験として魔粘土で棒人形を作り、腕の部分を思い通りに動かせるように理念を注いでみた。
つまり、腕の部分が骨のように動くようにとしてみたわけだ。
出来上がった棒人間に、腕が曲がるようにと、魔力を注いだ、その瞬間。
棒人形は爆発してしまった。
ベル曰く、
「魔力の注ぎ込み過ぎですね。マスターさんの魔力量に耐えきれる人形は作れないでしょう」
とのことだった。
神様にもらった魔力量が仇になるとは……
ちなみに、錬金術で魔力を注いで品質を上げても駄目らしい。
錬金術ではいくらでも魔力を注げるのになんで? と思ったのだけど、
「錬金術に注ぎ込んだ魔力すべてを素材が吸収しているわけではありません。吸収できる量には限界があるのです」
素材そのものに限界というのがあって、私の魔力でブーストできるのはその限界までということらしい。
そして、私の魔力量は多すぎて個人的に少量を注いでいるつもりでもすぐに限界に達してしまうらしい。
魔石を使って少量を注ぐというのは慣れたつもりだったんだけど、まだまだらしい。
ちなみに、魔石が私の魔力でも爆発しないのは、スライムの魔石の魔力吸収効率が低かららしい。
魔粘土は吸収効率が高く、私の魔力をダイレクト受けてしまうらしいとのこと。
ということで、少なくとも私の操り人形作りは速攻で失敗に終わったのだった。
というのが、半分失敗の部分。
そして、成功という部分は……
「これ面白い!」
「面白い!」
私の目の前で棒人形2号機を意のままに操る双子の姿がある。
そう。私の魔力では駄目であって双子の魔力だったら動かすことができたのだ。
「……」
なんだろう、なんというか、複雑な気分だよね。
自分は思いっきり失敗したのに、二人が楽しそうに遊んでいるは。
楽しそうなお人形遊びをしている。
ふむ、しかし……
これはこれでありなのでは?
私は自身は無理だけど、二人だったらそれを操れる。
ということは、二人が自由に動かせる人形を作ればそれは二人の身体ってことになるのでは?
思い至ったら実験だ。
今までは棒人間だったけど、今度は少し変えて、二人の身体に合わせた手を作ってみる。
いきなり全身を作らないのは魔粘土の量が少ないためだ。
複製で増やせるけど、全身作るとなるとそれなりに手間だからね。
なので、まずは片手だけを作ってみた。
「二人共、これ自由に動かせる?」
ちなみに、喧嘩とかしないように二人分用意した。
まぁ、出来上がったものを複製しただけだけどね。
二人は私から手を受け取ると、それぞれ指を動かしそうとする。
一応動いてはいる、が、先程の棒人間型に比べるとかなりぎこちない。
「「むずかしいー」」
なんとも難しい顔をしながらそのままのことを言っている。
見た感じ、さっきのよりも細かいコントロールが必要だから動かすイメージが難しいって感じかな?
だけど、それは想定どおりだ。
「二人共、それを自分の手に重ねてみて、それで重ねるように動かすの」
二人の身体は何も考えなければ通り抜ける。
そこで、自分の手の位置人形の手を置いてみるという作戦だ。
こう、遠隔で操作するよりも直接自分で動かすほうが動かしやすいような感じするし。
「あっ! できた!」
「できたできた!」
案の定やり方を変え他二人は楽しそうに手をグーパーしている。
よし、成功だ。
やっぱり魔粘土は思ったとおりかなり有用に使えそうだね。
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