第81話 遺跡の秘密
平和な毎日が続く。
それは異世界の方でも同じだった。
しかし、人間平和が続くと飽きてしまうものではある。
いや、平和は続いて欲しいから、あきるのは単調な毎日か。
言っても、私は、異世界と地球を行き来しているから、単調とは程遠い生活をしているわけではあるけど。
しかし、何日もずっと同じことをしているとやはり辛いものがあるというお話。
ということで、
「そろそろ一旦中断しようか」
「はい?」
突然の私の言葉に、ベルが固まる。
いや、ベルはもともと固まっているか。物理的に。
いやいや、そうではなく。
「大体半分くらいは本見終わったと思うんだよ」
「ですね、ざっと半分。ここまで結構時間かかりましたね」
そう、おおよそ10日間程度はかかったかな? しかし、それでもまだ半分程度である。
他にも魔石で魔力操作の練習や、思いついた錬金術の活用。
それ以外にも双子と遊んだり、料理したりしてたから、ずっと本を見ていたわけではないけど。
「やっぱりベルに読んでもらうのは効率が悪いよね……」
プログラムを書いていた人間としては、効率が悪いことを続けるというのはどうも気が乗らない。
「ということで、残り半分は私が文字を覚えたらにしようと思うんだ」
「マスターさんがいいなら、いいのですが……」
私の言葉に、ベルが何か言いたげな感じだ。
まぁ、気持ちもわかる。
やっと見つけた魔法の手がかりになりそうなものではあるしね。
「まぁ、諦めるわけじゃないからね。それに……」
私は、キープしておいた中から一冊の本を取り出す。
「ちょっと気になる記述も見つけたからね」
「それは……、あー、あの近くの遺跡に関しての本ですが」
そう、私が気になった本。
それは、私がレアさん達と一緒に行った街の近くの遺跡に関する本だった。
レアさん曰く、調べつくされていてもう殆ど行く人もいないって話だったけど。
「この本を見ると、どうやら地下があるっぽいような感じなんだよね」
この本はどうやら、結構古いものだったらしく今は柱だけになっているあの遺跡が内部まで残っていたときのものらしい。
その中には、こう書かれていた。
「地下で奥につながる入り口を発見したが巨大な動く石のような魔物に襲われた」
巨大な動く石の魔物って……
「おそらく、ゴーレムでしょうね」
「やっぱり? 定番どころだからそうじゃないかと思ってたけど」
ゴーレム。動く石の魔物。
この手の魔物? の目的は得てして……
「内部の施設を守る役割ですね」
だよね。
「加えて言うなら、そのゴーレムも魔法で動いていることが考えられます」
「つまり……、魔法や錬金術が関係している可能性がある……!」
「そのとおりです」
ベルの話が正しければ、おそらくそのゴーレムはその遺跡が遺跡になる前の時代に人の手によって作られたもの。
そして、それは奥にある何かを守っているということ。
それが、錬金術であったり、魔法であったりはわからないけど。
少なくとも、この本が書かれた時代より前の産物があるということは想像に固くない。
「しかし……」
私の気持ちが盛り上がっているのを見てベルが不思議そうな声を上げる。
「なぜ今は地下があったことなどが残っていないんですかね?」
ゴーレムがいる地下遺跡なんて、冒険者達が知っていたら探索しているだろう。
「……レアさん達は知っていたけど、教えてくれなかった?」
あの時に用があったのはあくまでも人のいないところだったし、その意味では地下の情報は必要ない。
もしくは、その地下部分も含めた探索しつくされている、ということであったのか……
「わからないけど、まぁ、錬金術師の視点で見ると何か変わるかもだしね」
「それは確かにありますね」
うん。ということでやっぱり行くのは確定で。
「ちなみに、ベルはどうする?」
「……ワタシですか?」
「うん。今回の遺跡って人がいないところではあるからベルもどうかなって思って」
ついでに、何か魔法や錬金術に関係する何かがあればベルに聞きやすいってのもある。
いちいち聞きに戻ってくるのは面倒だからね。
来てくれた楽ができる。
「……遠慮しておきます」
あら?
「ベルならてっきり行きたがると思ったんだけど」
アトリエの外に出るのを楽しみにしてたみたいだし。
こっちだと、まだこの家の中くらいしか動き回れてないし。
「行きたいところではありますがね。しかし、ゴーレムがいるとなると……」
あー……
「ひょっとしてゴーレムって危険?」
「ええ、ゴーレムの素材にもよりますが、その硬さと攻撃力は危ないです。最悪、ワタシが壊れます」
ベルが壊れる……死んじゃうのはまずい。
しかしゴーレムが危険となると、私もやめておいた方がいいかな?
「あ、いや、マスターさんなら大丈夫ですよ?」
「えっ?」
「マスターさん幽霊じゃないですか? 普通のゴーレムは魔力を持っていないので攻撃効かないですよ」
「あー、なるほどね?」
確かに、ゴーレムと言えば物理のイメージ……
そして幽霊に物理は無効……
「あれ? でもゴーレムって魔法で動いているんじゃないの? それなのに魔力ないの?」
「魔法はあくまでも、身体となる素材を動かすだけのものなので、それ自体に魔力がこもるわけじゃないのです」
「なるほど?」
通常の魔物は、それ自体が魔力を持っていることがあるからその攻撃は私に届く。
しかし、ゴーレムはあくまでも素材となる身体を魔法が動かしているだけなので、魔力を含まない。
「しかも、マスターさんからの攻撃は通る。むしろ狩場ですね」
「そっか、まさか幽霊にそんな利点があるとは……」
「あ、しかし、一応攻撃を受ける前に鑑定はしてくださいよ」
「鑑定? いや、多分するけど、なんで?」
「石程度なら問題ないですが、ミスリルやオリハルコンなどですと、魔力を持っている可能性がありますから」
「魔力を持っている? てことは?」
「普通にマスターさんに攻撃が効きます」
いや、それって……
「危なくない?」
「まぁ、ミスリルゴーレムやオリハルコンゴーレムあなんてほぼありえないですから……」
あくまでも念のためにとのこと。
うん、でも……
「鑑定だけは忘れずに毎回するようにしよう」
そう心に決めたのだった。
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