第79話 平和的な毎日
飛んで一週間後。
その間に、2人の冒険者は荷物を置いて出発し、ポーションの納品は毎日サティさんに渡したりしていた。
そして私が何をやっているかというと……
「ベル、これは?」
「はい、えっと、『ノルディス街記録』となっていますね」
街記録か……
気になるけど、ちょっと目的のものとはずれているかなぁ。
と、まぁ、そんな感じで地下にある本を読みふけっていた。
私一人では読むことができないのでベルに手伝ってもらいつつ、というか基本読んでもらうことになる。
まぁ、ベルはどうせやることもないし、暇そうにしてたからね。
あ、ちなみに双子はここにはいない。
というか、なんでかわからないけど、ここには降りれないみたい?
物理的には降りれるみたいなんだけど、なんか拒否反応が起こるような感じだった。
まぁ、無理に連れてくる必要はないので、私がここで本を読んでいる時は、自由に遊んでもらったりしている。
向こうから持ってきたトランプとかリバーシとかで遊んでいるみたいだ。
っと、本探しっと。
「ベル、こっちのは?」
「えー、『ノルディス周辺の魔物について』とされていますね」
「うーん、それもちょっと気になるけど、やっぱりちょっと違うかなぁ」
私が探しているのはズバリ、魔法に関しての本。
どうやら、ここにある本はこの街の記録だったりが多いみたいだけど、その中にはかなり古いものがあるらしい。
具体的には、魔法の記録などが残っているものがある。
今では完全に廃れてしまっている魔法というモノが残っていたときのモノというわけだ。
まぁ、それも情報として多くはないけどね。
今のところ発見できているのも、魔物が出たから魔法を使って倒した、とかそういうものだし。
しかし、貴重な資料であることは間違いない。
もしかしたら、冒険者ギルドにでも知らせた方がいいかもしれない。
しかし、貴重なものであることは間違いないので、最悪徴収される恐れもあるので、一通り確認してからにするつもりだ。
自分の目的を最優先にだね。
しかし、
「結構の本を見たつもりだけど、そのままストレートに魔法の使い方みたいなのはなさそうだね」
「ですね。察するに魔法は廃れたけど、魔道具の研究録という感じのほうが近いでしょうかね」
先程の魔法を使って魔物を倒したとの記録も、実際のところは魔道具を使って倒したみたいな感じだった。
要するに、魔法……、そのものではなく、魔道具の魔法を使ったみたいな?
今よりも魔道具が溢れいていた頃に書かれたものが多いみたい。
それでもいいんだけど、私が欲しいのは今はない魔道具ではなく、魔法の使い方なのだ。
「魔法があれば、魔道具は錬金術で作れるからね」
「しかし、この様子では見つかりそうにないですよ」
ベルが本棚を見回す。
今の所、ざっと3分1くらいは見終えた感じだ。
気になるタイトルだけを取ってるから実際に読んだ数は少ないんだけど、ベルに読んでもらってるから時間がかかる。
早く文字を覚えたいところだね。
今の所読める気がしないけど。
「まぁ、急ぎじゃないから後半分くらいゆっくり読もうよ」
「そうですね」
どうせやることもないしね。
もう一週間くらいかければどうにかなるでしょう。
と、そんな感じで異世界はで本を読んで過ごしている。
あ、ちなみに、そろそろ異世界というには馴染み過ぎてしまっているので、何か別の呼び方を考えている。
地球と異世界だとなんか規模が違うしね。
地球が星の名前だから、異世界の方も星の名前にしようかと思ったんだけど……
「そもそも、星って概念あるの?」
というミドリの言葉と共に断念した。
「地球でも天動説は最初否定されたっていうしね、そもそも異世界だから本当に平面の可能性だってあるし」
そもそも、世界が違うからその理も全然違う可能性があると。
月とか太陽っぽいのが空に浮いているように見えるけど、あれだって何かわかったもんじゃないからね。
「素直にいる場所、国の名前とかでいいんじゃないかな? それで合わせて地球の方も日本にするとか?」
「王国の名前……なんだっけ?」
街の名前は本で出てきているから覚えてきたけど、国の名前は最初にレアさん達に聞いたきり覚えてない。
「まぁ、諦めて異世界でもいいんじゃないかな?」
「それって結局現状維持では?」
「いいじゃない、現状維持。平和な毎日が最高だよ」
うーん……
「朝起きて、家の手伝いして、学校に行って、帰ってハルに合う。こんな毎日でいいじゃない」
それを言われると辛い。
まして、私死んじゃってる身だからなぁ……
平和な毎日をぶち壊してしまった身としてはその平和の大切さもわかっているつもりだ。
ミドリがその大切さを改めて実感するというのも頷ける。
なるほど、平和な毎日。重要だね。現状維持は必要……ってうん?
「なんか話がずれてない?」
「あ、気づいた?」
異世界の呼び方どうするかって話からどうして毎日が平和な話になったのか。
「まぁまぁ、結局そんなに焦って決めることでもないってことだよ」
ミドリは力を抜きなよと笑う。
確かにそうかもね。
「って別に力入れてたわけじゃないけどね」
まぁ、異世界の呼び方どうするかなんてのも結局のところただの雑談だ。
これも一種の平和の楽しみ方になるのかな?
うん。平和平和。
「二人共、そろそろお店開くわよ」
2人で笑い合っていると、ナナミさんから声をかけられた。
「わかった。それじゃあ、私はそろそろ準備するね」
「うん。じゃあ、私はカナのところに戻ろうかな。そろそろ宿題も終わっただろうし」
ミドリはお店を手伝うために、立ち上がり、私は家に戻るために立ち上がる。
「それじゃあ、ナナミさん、また来ます」
ナナミさんに挨拶をしてお店の扉に手をかけた。
瞬間、
グシャッ!!!
凄い音が耳に飛んできた。
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