第72話 双子の幽霊
そんなわけで、家の中を見学している。
「外から見て思いましたけど、かなり広い家ですね……」
私の家4つ分って言ったけど、もっとあるかも?
「それに、家具まで揃っているし」
リビングに机に椅子。
キッチンには料理道具も揃っている。
寝室らしき部屋にはベッドまであった。
なんなら、明日にでも住めそうな感じだ。
「そうですね、管理はしているという話でしたが、ここまでとは……」
イティアさんも不思議がっている。
私はチラッと後ろを見る。
「「………」」
ひょっとしてこの子達が掃除とかしているとか?
まさかね?
「いかがでしたか?」
家の中をめぐること1時間。
「うーん……」
2階建ての家は私一人で住むのには広すぎるなぁ。
管理もできないし。
でもそれよりも、
「この子達はなんなんでしょうね?」
結局家の中には、幽霊達のヒントになりそうなものは何もなかった。
相当前のことだって話だし、そんなに期待はしていなかったけども。
「ハルさんを疑うわけじゃないんですが、本当にいるんですか?」
聞いている時点で疑っているじゃんと思わなくもないけど。
まぁ、信じがたいのはわかる。
「ええ、今もずっと私の後ろにいますよ」
入ったときからずっと私のことを見ている双子の幽霊。
なんで私のことをずっと見ているのか、なんで私の後ろを付いてくるのかさっぱりわからない。
コミュニケーションを取ろうにも、話しかけても何の反応もないんだよね。
どうしたらいいんだろう?
そもそも、なんで私にしか見えないんだろう?
レアさん達は私のことは魔力付与ポーションで見えるようになった。
この子達のことはなぜ見えないのか。
推測としては、魔力の量とか?
私の魔力量って相当なはずだからそれのおかげで、魔力付与ポーションでも見えやすいとか?
でも、この子達は、魔力量が低いから付与した程度では見えない。
私は魔力量が多いから見える……?
思いつきだったけど、なんかありえる気がしてきた。
でも、それを確認するためにはこの子たちの魔力量を確認する必要があるんだけど……
魔力量を確認する方法……
「あ、方法あるじゃん」
鑑定を使えば魔力量わかったはずだよね。
そもそも、鑑定使えばこの子達がなんなのかもわかる。
一石二鳥じゃない。
それでは早速……
「鑑定」
幽霊の一人をターゲットに鑑定をしてみる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名称
レナ
説明
幽霊
残魔力 5%
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
情報が少ない……
名称のレナってのは、これは名前かな?
説明の幽霊ってのは見ればわかるね。
で、肝心の魔力なんだけど。
そっか、%表記なんだっけ。
絶対値表示の方がありがたいんだけど、まぁ、これでもわかるからいいか。
とりあえず、残り魔力が5%ってのはまずくないかな?
幽霊にとって魔力量ていうのは命みたいなもの、つまりこの子達の命は尽きかけていると。
さっきの推測の通りだとレアさんたちに見えないのもこれが原因かな。
さて、わかったもののどうしたもんかな。
「うーん……」
「ハル殿? 何をしているのだ?」
唸っている私にレアさんが声をかけてくる。
おっと、二人も一緒だったんだった。
「いえ、この子達のことを調べていたんですが……」
私は、幽霊を鑑定したこととその結果について話した。
そういえばレアさんの前で鑑定やるの初めてだっけ?
驚かれたけど、今更という反応をされた。
「なるほど……、それで何を迷っていたのだ?」
「多分、この子達に魔力を与えればもうちょっと意思疎通できると思うんですが……」
「ですが?」
「悪霊だったらどうしようかと」
幽霊っていうのは、普通はすぐに消えてなくなるもの。
幽霊として在り続けるためには、他から魔力を吸収する必要がある。
そして、吸収を続けていると色々と混じって悪霊になっていく。
それがベルから聞いた幽霊のルールだ。
この子達がそうじゃないとは限らない。
前にも、魔力付与ポーションを悪霊が吸収してしまって面倒なことになったしね。
「悪霊ですが……、しかし、ここの幽霊は有名ですが、悪い噂は聞かないんですよね」
商業ギルドを出るときにも言っていたことをイティアさんが繰り返す。
うーん、たしかに、悪意を感じないってのはあるんだよねぇ。
「試しにやってみるのはどうだ? 悪意があるのなら討伐すればいい」
レアさんは剣を手で示す。
風の魔法があれば確かに、倒せるのかな?
まぁ、一応ナイフも渡しておこう。念の為だけどね。
あ、イティアさんは一応避難しておいてもらったほうがいいよね。
こっちも念の為だけど。
「じゃあ、やってみますね」
私は指輪から魔力付与ポーションを取り出す。
魔力を与える方法、一番簡単なのはこれを飲ませることだけど。
流石に、意思疎通もできない幽霊に飲ませるのはできない。
だから、
「それっ!」
魔力付与ポーションを幽霊たちに向かって振りかける。
なんか傍から見たらいじめみたいな光景だけど、これしか手段がないから仕方ないよね。
杖を通して魔力を与えるのも考えたけど、そっちはそっちで刺す必要があるからね。
こっちのがまだ見た目マシだと思うよ。
魔力付与ポーションを全て振りかけると、幽霊たちは白く光始めた。
魔力回復した合図かな?
「おおっ!?」
後ろで待機しているレアさんが声を上げた。
「何か光っているのが私にも見えるぞ!!」
どうやら成功したみたいだ。
やっぱり魔力量が低すぎたのが原因だったみたいだね。
光る幽霊たちは、輪郭だけだったそれからだんだん形がはっきりしていく。
そして、最後には、
「双子の女の子?」
人形みたいに可愛いそっくりの女の子二人になった。
見た目はカナと同じかそれより下くらいかな?
頭に付けてるリボンの色だけが違う。
一人は赤、一人は青だった。
「「………?」」
二人は目を閉じていたがやがて我を取り戻したようにキョロキョロしだした。
そして、二人の目が私を捉えた。
「……ママ?」
一人が私を見てそう言った。
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