第71話 幽霊ハウス

 結局レアさんとイティアさんと3人で件の家に向かうことにした。

 カリナさんは、今回は辞退するとのこと。

 まぁ、あの顔見たら連れて行こうとは思わないよね。


 件の家は、街の東側にある住宅エリアの中でも中心にかなり近い部分にあるらしい。

 いわゆる高級住宅街とのことだ。

 そんな家なのに、長く飽いていてイティアさんとしては困っていたらしい。

 そんな折に現れたのが私というわけか。

 まぁ、買うって決めてるわけじゃないけどね。


「こちらになります」


 イティアさんがそう言って止まったのは、大きな2階建ての家の前だった。


「庭がある……」


 大型犬が走り回れそうなくらいの大きな庭だった。

 そして、家自体も想像以上に大きい。

 地球にある、私の家4つ分くらいはありそうだ……


「えっと、この家が本当にあの値段なんですか?」


 流石に心配になってきた。騙されていないよね?


「ええ、訳ありですから」


 間違っていない様子。

 それだけ困っていたってことだろう。


「ちなみに、商業ギルドの方で家を管理していますので中も綺麗ですよ」


 多少の掃除は必要としても大掃除がないのはありがたい。


「それじゃあ、入ってみましょうか」


「はい」


 イティアさんが鍵を取り出して、門を開く。

 そして、3人で一緒に門をくぐる。


 ゾクッ……


 なんか寒気がする気がした。

 何かに見られているような感じ。

 チラッとレアさんを見れば同じようにこちらを見たレアさんと目があった。

 レアさんも感じたのかな?


 コクン


 互いに無言で意思疎通を図った。

 悪さはしないって話ではあるけど、ちょっと気をつけた方が良さそうかも?


 3人で庭を突っ切り、玄関へ。

 再び、鍵を使ってドアを開く。

 さて、幽霊ハウスに潜入だ。



 扉を開けて中に入った瞬間ヒヤッとした。

 さっき門をくぐった時以上の気配。

 というか……


「なんかいる……」


 扉を開けた先に得体の知れない何かがいた。

 人形の子供くらいの輪郭で透明。

 しかし、顔もなく本当にただの輪郭だけだ。

 しかも、なぜかソレが2ついる。


 これって幽霊?

 双子の幽霊って話だよね。これがそうなのかな?


 レアさん、あれって……」


「何か冷える気がするな……」


「誰もいない家というのはこういうものですよ」


 確かに冷えるけど、あれ?

 イティアさんとレアさんは何事もないように、玄関から奥に向かって入っていく。

 あ、二人をすり抜けた。


 ひょっとしてこの双子の幽霊見えてない?

 顔がないからわからないけど、双子の幽霊(仮)は私の方を見ている気がする。

 えっ? なにこれ怖い。


 どうしよう。

 これ私が見えてるって気がついているのかな?


「ハルさん? どうしたんですか?」


 いつまでも固まったままの私をイティアさんが不審に思ったらしい。

 戻ってきてくれた。


「えっと……」


「もしかして何か見えました?」


 笑いながら聞いてきた。

 イティアさんとしてはちょっとした冗談のつもりだったんだろうけど。


「ええ、まぁ……」


「…………えっ?」


 イティアさんの顔が笑顔のまま固まった。

 実際見えちゃってるからなぁ。

 隠すのもなんか違うし。


「えっと、冗談ではなく?」


 イティアさんが表情を変えずに聞いてくる。


「はい。今も見えてますね? むしろ、二人は見えないんですか?」


「私には見えないな」


「……見えませんけど」


 やっぱりそうか。どういうことなんだろう?

 幽霊って魔力があれば見えるんじゃなかったのかな?

 二人は私が見えてるわけだし、同じように見えるはずなんだけど。


 まぁ、いいや。

 事実は後で考えるとして、今はこの双子の幽霊をどうするかだ。


「ねぇ、あなた達……」


 とりあえず、コンタクトを取ることにした。

 コミュニケーションの第一歩は円滑な会話からだ。

 しゃがんで目線を合わせて話しかけてみる。


「「………」」


 しかし、反応はない。

 無視? いや、ひょっとして声が聞こえていないのかな?

 そうなると困っちゃうなぁ。

 私のこと見ている気がするし、認識はしているような気がするんだけど。

 事実、移動すると私の方に付いてくるし。


「ハル殿?」


 私の行動を見ていたレアさんが困った様子で私を見ている。

 イティアさんは目をそらしている。

 まぁ、見えてない二人からするとわかんないよね。


「うーん、話しかけてみたけど、反応ないんですよね……」


「なるほど? それでどうするのだ?」


「どうしましょうかね? とりあえず、悪意は感じないのでひとまず内見続けましょうか」


 このままここにいても何にもならないからね。

 とりあえず、家の中を見学しつつヒント探しでもしよう。


「イティアさんお願いできますか?」


「あ、はい。わかりましたけど……、あ、いえ。わかりました。こちらへどうぞ」


 イティアさんが戸惑ったみたいだけど、結局何事もなかったように案内に戻ってくれた。


 先に進んだイティアさんの後をレアさんと、私が続く。

 双子の幽霊はやっぱり私の後を付いてきたよ。

 ほんと、なんなんだろうね?



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