第69話 拠点が欲しい
レアさんの剣を作ってから数日が経った。
その間に私はレアさんとカリナさんに再度街を案内してもらったり、少しだけ言葉を教えてもらったりしながら過ごした。
おかげで、挨拶くらいはわかるようになったよ。
幸いにも文法は英語に近いものだったので、後は単語さえ覚えていけばどうにかなりそうな気がする。
まぁ、私の声は普通に聞こえないし相手の話してることさえ、なんとなくわかればいいから気が楽だ。
言葉に関しては気長にやっていこうと思う。
さて、そんな感じで異世界の街生活を堪能していたわけだけど。
「そろそろ、拠点が欲しいと思いまして」
「拠点ですか?」
私は宿屋でカリナさんとレアさんに相談をしていた。
「です。流石に、毎回ここに転移してくるのもアレかなと思いまして」
現状、私がこの街に転移してくるのはレアさん達が泊まっている部屋になる。
二人は何も言わずにいてくれているけど、転移してすぐは私の姿は見えない。
見えない状態で覗かれていてはあまりいい気はしないでしょう。
いい加減なんとかしないといけないとは思っていた。
「それに、二人もそろそろお仕事復帰するんじゃないですか?」
二人は街に帰ってから休暇を取っていた。
疲労が溜まっていたっていうのもあるけれど、大きな理由であったレアさんの剣。
その剣も修復して使える状態になっているのも確認している。
時折レアさんが剣を出して眺めているのも見ている。
そのことから、そろそろかなと思っていた。
「確かに、近いうちにギルドに何か言われそうだとは思っていたが」
レアさんもそう言う。
二人はこの街の中でも有数の冒険者だ。
二人にしかできない任務もあるだろう。
私にかまってくれているのはありがたいけれど、他の人を困らせるのは本意じゃない。
「というわけで、二人がいないときでも私もこの街の中で気軽に過ごせる場所を作りたいと思いまして」
あと、私が話をすると毎回ベルが羨ましそうにしているっていうのもある。
隠しているつもりだろうけど、見え見えなんだよね……
「この街で家を借りようと思ったら大変ですかね?」
「家を? 宿ではなく?」
「ええ、できれば家ごとの方がいいです」
宿だと、どうしても仮住まいって気になっちゃうし、そもそも掃除とかで勝手に入られるのは困る。
私が見えないのもあるから、いるかいないかもわからないだろうしね。
「家を借りるとなるとお金がかかりますが……」
「どのくらいですか?」
「立地にもよりますが……」
カリナさんが言った額は確かに高かった。
日本の相場とかわからないけど、大きくハズレていないんじゃないかな?
しかし……
「それならヒーリングポーション代で賄えますね」
この数日間の間も、ちょくちょくヒーリングポーション作っては納品をしていた。
そのおかげで、かなりの額が私の指輪の中に入っている。
今の所使う予定は一切ないし、このままだと溜まっていく一方だ。
「家を借りるにはどうしたらいいんですか?」
こっちの世界で不動産屋みたいなのはまだ見ていない。
流石に、土地の管理しているところがあるとは思うんだけど。
「空き家の管理などは商業ギルドがやっていますね」
あー、なるほど、商業ギルドね。
あの強かな女の人が頭をよぎる。
「そもそも、私が借りるとかできるんですかね? 私身分証とかないですが」
幽霊ってのもあるけれど、そもそも、この世界の戸籍とかないし。
あるかどうかすら知らない。
「お金があるなら誰でも借りられるぞ」
聞くところによると、戸籍とかはないらしい。
身分証もギルド章が代わりになっているが持ってない人も多いとのこと。
「やはり、ハルさんが見えないのが一番のネックですね……」
うーん、やっぱりそうだよね。
「私達が代わりに借りるとかもできるぞ?」
それも一つの案ではあるか。
でも、できればそういうお金のことは自分でやったほうがいい。
信用していないとかではなく、自己責任の問題だ。
それに、二人が家を借りたのにそこに住まずに宿暮らしっていうのも変な話でしょう。
「商業ギルドのマスターさんに話を通すのが一番早いかなぁ」
あの女の人、名前は忘れたけど。
私に入ってくるポーション代は商業ギルドから入ってくるらしい。
ちゃんと私が納品したポーションの管理もやっていると、受付嬢さんが言っていた。
あの時は話さなかったけど、ポーションをちゃんと納品した今なら話やすいかな?
「いいのか?」
「ええ、あの時会話を聞いていて人となりもわかっていますし、問題ないかと」
それに、色々と考えたけど、今後も商業ギルドにはお世話になることも多そうだしね。
権力者とつながっておくっていうのは重要だろう。
「ハルさんがいいなら、いいですが。では早速、商業ギルドに向かいますか?」
早速?
「言ってすぐに会えるものなんですか?」
一応お偉いさんだし、アポイントメントとか……
「私とカリナがいれば大丈夫だろう」
「ええ、それにポーションに関しての相談とでも言えば絶対会ってくれますよ」
そういえば、二人も顔見知りぽかったね。
いや、二人の言葉からするに、顔見知り以上の関係なのかな?
まぁ、詳しいことはいいや。
「それじゃあ、善は急げってことでお願いしていいですか?」
「ああ」
「わかりました。それじゃあ行きましょう」
私達は、商業ギルドに向かうことにした。
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