第68話 魔法剣実践
「というわけで、これが試作になります」
次の日、私はレアさんに作った試作を見てもらっていた。
「……」
あれ? 反応がない?
ちらっとカリナさんの方を見たけど、カリナさんも目を丸くしている。
どうしたんだろう?
レアさんの前にあるのは、私が昨日作った魔法を付与した剣。
パターン数は15パターンになる。
「レアさん?」
いつまでも反応ないけど、どうしたんだろう?
まだ試してもないから、気に入らないとかはないと思うんだけど。
「あ、ああ、すまん。いや、わかってはいたのだがな」
どこかレアさんは遠い目をしたまま並べられた剣を見ている。
「これが全てアーティファクトだと思うと、とんでもないなぁと」
あー、ヒーリングポーションで慣れたのかと思ってたけど、改めて武器で見ちゃうとってことかな?
「それにレアの剣は特別でしたしね……、それがこんな本数あると……」
カリナさんもレアさんと同じような目をしている。
特別な剣が沢山……、うん。なんとなく、気持ちはわかったよ。
世界に一つだけしかないと思っていたものが、目の前に沢山。
そりゃ遠い目もするかな。
「改めて、ハル殿の能力は凄いな……」
「ですね……」
なんか褒められているというより、呆れられている感じになってる。
なんでだ。
「ま、まぁそういうわけで、とりあえず、試してもらえればと」
このままだと話が進まなそうなので、軌道修正を図る。
「ああ、しかし、どこで試したものか……」
「あんまり人に見られないところがいいですね」
私はこの辺りの地理には全く詳しくないのでなんとも言えない。
そういえば、自分用に地図が欲しいね。
「そうだ。遺跡の方でいいんじゃないか?」
考えていたレアさんが声を上げた。
遺跡?
「ああ、いいですね。あの場所ならあまり人は来ないでしょう」
どうしてだろう?
遺跡って言うからには、冒険者とか沢山来るイメージだけど。
「この街の近くに遺跡があるのですが、そこはもう探索しつくされているんですよ」
あー、そういうことか。
確かに、街のすぐ近くにあるのならば、探索も進んでいるのも頷ける。
「今は、もう新人冒険者すら入らない。魔物も弱いものしかいないしな」
いい場所だね。
そして、私的には遺跡ってのにも興味がある。
遺跡、日本に住んでたらなかなか縁がないよね。
古墳くらい?
「それじゃあそこに行きましょうか」
「ああ」
3人で遺跡に向かうことになった。
遺跡は本当に街の近くにあった。
街の門を東に出て、歩いて30分程度。
街を出るまでの方が時間かかったくらいかな?
「これが遺跡ですか……」
初めて見る遺跡は、ファンタジー感あふれるものだった。
崩れた柱、ボロボロの床、そして、かろうじて原型を残っている大きな建物。
大きな何本もの柱で屋根を支えているような構造。
前にテレビで見た、パルテノン神殿に近いかな? それ以外の神殿知らないけど。
でも、大きな柱の内にさらに壁があって、中は見えないようになっている。
「正式名称は、ノルディック遺跡。街の名前から来ています」
「へぇ……」
遺跡の方が古いのに、街の名前が由来ってのも面白い話だね。
「ここなら人も来ないだろう」
どうも、中に入ることはないみたいだ。
個人的にちょっと気になるけど、まぁ、危険かもだし、今は試すほうが優先かな。
外見見れただけで割と満足。
あ、当然の如く、ミドリに見せるように写真は撮っておいたよ。
「最初はスピードから確認しましょうか」
はいっと、剣の一つを手渡す。
「それは一番弱めのやつですね」
とりあえず、振ってみてください。
えっと、ターゲットは……
まぁ、周りは森ばっかりだし、その辺の木でいいか。
「じゃあ、実験開始しましょう。お願いします」
「はっ!」
レアさんが剣を振る。
すると、振った剣から三日月型の光が飛んでいく。
その光は一直線に先にあった木まで飛んでいき、木をえぐった。
直径30センチくらいあった木のほとんどをえぐった結果。
木は凄い音をたてて折れてしまった。
結構な威力だね。
ちなみに、風なんだけどその形は見えるようになっている。
これはレアさんのリクエストだ。
前の能力がそうだったらしい。
「どうですかレアさん」
「うむ、私としては2本目のやつの方が良かったな。これはちょっと強すぎだ」
「なるほど……」
私は、手元のスマホに感想をメモする。
レアさんが使っていたのは、威力を確認するためのもの。
5本の中で一番威力が高いやつだ。
私としては威力は高ければ高いほどいいと思っていたのだ違っていたらしい。
ちなみに、2本前のやつは、10センチくらいえぐっていたやつだ。
なんでも、切れすぎると制御が効かなくなるとかなんとか。
まぁ、たしかに、貫通して味方まで切っちゃったらまずいかもね。
性能良ければいいほどいいわけじゃないのはわかった。
何事も程々にってことね。
何はともあれこれで全ての実験が終わった。
レアさん、お疲れさまでした。これで終わりです」
3パターン×5の15本のチェックが終わった。
後は、この中のレアさんが気に入ったものを組み合わせるだけだ。
「ふぅ、意外と時間かかってしまったな」
15本試すだけでも結構な時間がかかってしまった。
遺跡まで移動した時間が長かったってのもあるけど。
でも、まだ体感的には昼過ぎくらいかな?
うーん、できればこのまま終わらせてしまいたい気はするね。
またここまで戻ってくるの面倒だし。
レアさん、カリナさん、この後ってまだ時間残っていますか?」
「あ、ああ。私もカリナも今日は時間あるぞ」
カリナさんも頷いてくれる。
それなら好都合だ。
「すみません、ちょっと組み合わせたもの、作ってきますのでここで待っててもらっていいですか?」
戻ってくるのが面倒なので一本作ってまた戻ってくればいい。
それだけのことだ。
「それは大丈夫だが……、そんなに早くできるものなのか?」
「ええ、そんなに時間はかからないと思います」
多分、10分くらいじゃないかな?
組み合わせだけだしね。
「わかった。では、ここで待っていることにする」
「お願いします」
すぐに私は、アトリエに転移して剣を仕上げる。
理念の紙を書き換えるだけだったのですぐに終わった。
というわけですぐに戻る。
「戻りました」
「「早いっ!?」」
行数にして3行で行って帰ってした。
二人は急に現れた私の姿を見て驚きの声を上げた。
そういえば、私の姿が見える状態で転移してきたのは初めてか。
そういう意味でも驚いているみたい。
「できましたので、確認お願いします」
組み合わせただけだけど、確認は重要だよね。
相乗的になんか変な問題発生しているかも知れないし。
「あ、ああ」
レアさんが剣を持ち、先程と同じように木に向かって振る。
一直線に三日月型の光が木に向かって飛んでいく。
光が飛んでいく速度、大きさ、そして木につける傷。
うん。全てが要望どおりのはず。
「どうですか?」
私はレアさんの反応を確かめる。
レアさんは、剣を見つめていたが、すぐに振り返って笑顔を向けてくれた。
「ああ! これで間違いない! 元通り……いや、それ以上の感覚だ!」
よかった。特に問題は発生していない様子。
「じゃあ、それで納品ということで」
ふぅ、魔法剣作るの意外と楽しかったね。
ナイフとは別の楽しみがあったよ。
ちなみに、今回の素材は全部複製で作ったから剣以外のオリジナルは私の指輪の中に残っている。
剣は流石に、大事なモノみたいだからオリジナルをもらうことはやめておいた。
確認後に最後に付与したやつがオリジナルになる。
まぁ、自分用に、魔力度外視で作った、チート風魔法剣も作ってあるのは秘密。
私に使いこなせるとは思わないから、使うことはないと思うけど。
備えあれば憂いなしっていうしね。
あって困るものじゃないでしょ。
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