第59話 まとめて錬金術

 拠点に戻ってきて、早速ヒーリングポーションの錬金を開始した。

 大体10個作るのに、どのくらいの時間がかかるのかを確かめる。

 1個じゃないのは、素材を出したり設置したりの時間がかかるためだ。


 1つ作ってわかったのは、魔力を込めれば錬金自体は一瞬で終わるということ。

 逆に込めないと終わる気がしない。

 そういえば、初めて錬金術やったにベルに1時間くらい待てとか言われたっけ?

 流石に1個1時間はかけてられない。

 なので、魔力を使って錬金術をするわけなんだけど……


「これ、取り出したり置いたり方が時間かかってるじゃん……」


 素材を指輪から取り出して魔法陣に置く。

 出来上がったヒーリングポーションを再度指輪に収納して、また素材を取り出す。

 言ってしまえばこれだけの手間なんだけど、数回もやってると手間だ。


 結果的に10分もかからずに10個のヒーリングポーションを錬金できたけど、なんだかなぁという気分になってしまう。

 こう、もっと効率のいい錬金術の方法とかないの?

 まとめて数個素材をまとめて指定して数個出来上がるとか。

 まぁ、そんな都合のいいことできるわけが……


「できますよ?」


 私が愚痴っていると、ベルがさらっと言った。

 あれ? 説明してませんでしたっけ? みたいな口調で言うのやめようか。


「聞いてないんと思うんだけど?」


「あれ? 始めに言ったときに説明したはずなんですが……」


 聞いた記憶……ないんだけど、思い返すと確か話聞いてなくて怒られたような記憶が……

 ひょっとしてその時に説明されたのかな?


「とりあえず、もう一回お願い」


「はい。とは言っても素材候補のところに、指輪の方から素材に指定するだけですけどね」


 うん?


「指輪の方から素材指定なんてできるの?」


 それも初耳な気がする。

 ベルは、「それも説明したはずなんですが……」と言いつつ説明してくれる。


「素材を指定する画面と指輪の方の画面を同時に出すと一つになります。そこから素材にしたいものを選ぶだけです」


 そんな機能があったんだ……

 試しにやってみることに。


 えっと、素材を指定する画面を出す。つまり、杖を立ててから錬金術を始めるっと。

 指輪の方の画面を出す……、こっちは考えれば出てくる。


「おおっ! UIが一つになった!」


 ちょうど素材候補の左に、指輪の中に収納されているものリストが表示されている感じ。

 ふむ、素材指定ってことはこんな感じかな?

 パソコンを使うときみたいに、ドラッグアンドドロップ……

 おっ? いけた。


 まとめて素材に指定できた。


「それができましたら、後はその素材から何個作るかを魔力と共に考えるだけです」


「なるほど……、てことは何も考えてないと1つのものになるってこと?」


「はい。その場合は、一つの大きなものになります。ちなみに品質を重ねる形にもできます」


 量か質を選ぶ感じね。

 どういうふうに作りたいかは魔力を注がないといけないから、基本やっぱり魔力は必須かな。


「前にも言いましたが、作る際の理念の応用になります」


 ああ、なんか言ってたっけ。

 理念とか云々は確か、チートナイフ作るときに範囲指定に紙に書いて入れたりしたっけ。

 なるほど、理念によって出来上がるもの変わるなら応用でできるのかも?


「ちなみに、1個の素材から複数作ることもできますよ。その場合は出来上がる量なり、質が下がりますが」


 ふむ、あくまでそこは等価なわけか。


「ああ、それと、複数個作るときに消費する魔力は複数分になりますから気をつけてくださいね」


 今までは一個を一瞬で作っていたけれど、個数増やしたら同じ魔力で一瞬じゃなくなるってことかな?

 私は魔力かなり多いし、注ぐ魔力量増やせば結局変わらない気がするね。

 まぁ、どのくらいで消費するのか徐々に数増やしていってみればいいかな。

 幸いにも素材は沢山あるし。



 というわけで、今日もらった133個の素材を使ってひたすら錬金術に打ち込んだ。


「ふむぅ、あれ? もう素材ないの?」


 そして、日暮れ前には素材が尽きてしまった。

 あれだけあったのに……

 まさか1日で使い切るとは思わなかったな。

 今回は記録したり、条件変えながらだったから、ちゃんとやればすぐに終わったんじゃないだろうか?


 でも、色々と分かったことがある。


 とりあえず、今の私の魔力量からすれば10個を同時に一瞬で複製しようとも、1%の消費にもならないということ。

 50個にしても1%も減っていないのは流石にびっくりしたね。

 つまり、ヒーリングポーションどれだけ作ろうが私の魔力には対して影響がないということ。


 また、何も考えずにやると、出来上がったヒーリングポーションが魔法陣にまとめて出現してしまった。

 まとめてやりすぎると、魔法陣の上にズラッとポーションが並ぶ感じになる。

 ちなみに、ベルに聞くと、意識してやれば錬成結果のものを直接指輪の中にいれることができるとのこと。

 試してみたら、確かに指輪の中のヒーリングポーションの数が増えることは確認できた。

 いちいち収納する手間もいらなくなるから、まとめての時は基本この方法のがいいね。


 魔力を込めないとヒーリングポーションはベルの言ったみたいに1時間近くかかってしまった。

 1本やるのでも1時間かかるとか、ほんと時間の無駄だよね……

 魔力消費もないから、今後魔力を込めないでやることはないと思う。



 それと、複数からまとめて1つに錬金っていうのもやってみた。

 素材を複製してから試したからもらった素材の消費量は変わらない。

 その辺り、あの商業ギルドの人厳しそうだったからね。

 数とかちゃんと記録してそうだし。


 10個をまとめて錬金するのに2通りのやり方をやってみた。

 量を足す方式。10個分の量の1つのヒーリングポーションにするような感じ。

 これはそのまま10個分の量のヒーリングポーションが出来上がったよ。

 1つの大きなガラス瓶にヒーリングポーションが入ってできたのはちょっとびっくりしたよ。


 もう一つは品質を足す方式。

 出来上がる量は1つのままで品質だけ足していけないかと試してみた。

 同じく10個の素材をまとめて錬金して1個にしてみたんだけど、素材の品質は全部を足した数字にはならなかった。

 鑑定した品質も60にしかならなかった。

 1個で30くらいあるから全部足したら計算上は30になるはずなんだけど。

 なんか謎の法則みたいのがあるのかな?

 この辺りはもうちょっと研究してみたいね。



 まぁ、そんなわけでギルドからもらった大量の素材を消費して色々と実験をしてしまった。

 ほんと、まさか1日使わず終わるとは思わなかったよね。

 でも、流石に明日これ全部渡すのはやめよう。


 向こうの予想をちょっとだけ超える結果でっていうのが基本。

 全部まとめて渡しちゃうと、この数はいけるんだなって思われて、次は更に注文が大変になる。

 最終的にかかえ切れない量になってしまう。

 って、死んだ父さんが泣きそうな顔で言ってた。

 あのときの父さんの顔は今でも忘れないよ……

 なんか苦労することでもあったんだろうね。


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