第58話 大きな木箱と小さな木箱
冒険者ギルドに入ると、昨日と同じようにごついお兄さん達が飲み食いしていた。
流石に昨日みたいに皆立ってたりはしないけど。
それに、人も昨日よりは少ない気がする。
そんな中を3人で受付に向かっていく。
昨日も見かけた受付嬢さんだ。
名前は……サティさんだっけ?
「~~~~~~~~~」
「~~~~~~~~~」
レアさん達が何事か話している。
まぁ、私が来たことを話しているだけだろう。
サティさんが、時折レアさんの後ろを覗き見る感じでいるけど、残念ながら私はそっちにいないよ。
ちょっと話すと、サティさんが立ち上がり、案内をしてくれる。
たどり着いたのは昨日と同じギルドマスターの部屋だ。
昨日と同じように座っているギルドマスター。
昨日との違いは部屋の隅に、見覚えのない木箱が2つある。
大きい箱と小さい箱の2つだ。
椅子に座ったままのギルドマスターとレアさんが挨拶を交わす。
私も挨拶したいけど……
「ハル殿……、魔力付与ポーションを」
「これでどうぞ」
挨拶している間に準備をしていた魔力付与ポーションと念話の魔石を渡す。
レアさんが渡すと、すぐにギルドマスターはそれを飲み干した。
私と目が合う。
「おはよう。よく来てくれたな」
「おはようございます」
これでやっと話ができるよ。
慣れてきたとはいえ、やっぱりめんどくさいよね。
どうにか、もうちょっと効果長くするとかできないもんかね?
「それで早速なのだが、材料を渡すぞ」
そう言ってギルドマスターは立ち上がり、部屋の隅に置いてある木箱に向かい私を手招きする。
近寄ってみるとギルドマスターは小さい箱の蓋を開けた。
その中には、ぎっしり薬草が詰まっていた。
「素材は薬草でよかったよな? この箱一杯にある」
「……」
箱一杯? それってどのくらい?
箱の大きさからして、100じゃすまない気がするよ?
「一体どのくらいあるんですか?」
わからないので素直に聞いてみた。
「ああ、えっと、133本と書いてあるな」
ギルドマスターが箱に書かれた文字を見ながら答えてくれた。
ちなみに、もう1つの大きな箱はガラス瓶らしい。同じ数があるとのこと。
って133本?
「そんなにあるんですか? そんなにもらっていいんですか?」
昨日の今日でこれだけの数があるとは流石に予定していなかった。
「ああ、朝早くにイティアが来てな。これを置いていったんだ」
イティアさん、商業ギルドのマスターの名前だったっけ。
さすが商業ギルドと言うべきかな、とりあえず、決断が早い。
やる気だけはものすごい伝わってくるよ。
若干、私は引き気味だよ。
「ま、まぁ、向こうも今日明日にというわけじゃないだろう」
私の反応を見て、ギルドマスターもフォローするような事を言っている。
当たり前だ。
今日明日で作れと言われても困る。
いくらヒーリングポーションがすぐに作れると言っても限度がある。
それに一日中作り続けるのは流石に苦痛だ。
「昨日も言ったが、できるペースで作ってくれれば良いぞ」
そう言ってもらえると助かる。
とりあえず、今日どのくらいのペースで作れるかちゃんと図ろう。
ちゃんと疲れない範囲でね。
「それじゃあ、受け取りますね」
「ああ、しかし、この量持って帰れるのか?」
「収納するので大丈夫ですよ」
言って私は指輪に木箱2つを収納する。
一応確認をすると、なぜだか、薬草133本とガラス瓶133本、木箱2個と分割されていた。
表示上は別々扱いなんだね。
「こんな大きなものまで収納できるのか。一体どのくらいできるんだ?」
どのくらいなんだろう?
あんまりでっかいのは試してないけど。
「今までで一番大きかったのはあの大きい狼ですね」
あれに比べたら今回の木箱は小さいだろう。
「あんなサイズのものまで入るのか」
ギルドマスターが驚いている。
私としても気になるから、そのうち限界試したいね。
でも、大きいものってあんまりない気がするなぁ。
それとも容量で考えたほうがいいのかな?
まぁ、暇なときでいいや。
それじゃあ、受け取るものも受け取ったし帰ろうかな。
「ああ、無理はしないでくれ」
そう言ってギルドマスターは私達を送り出してくれた。
見た目いかついんだけど、アーティファクト趣味だったり、言葉尻優しかったり見た目と印象合わない人だね。
受付嬢さんに案内されて、1階に戻ってくる。
「~~~~~~~~~」
「~~~~~~~~~」
受付嬢さんとレアさんが話をしているけどなんの話かな?
レアさんはすぐに私に目を向けた。
「ハル殿、私達は少し食事をしていくがどうする?」
食事かぁ。確かにちょっと早いけどお昼時ではあるかもだね。
でも、こっちの食事にいい思い出はない。
ちらっと、食事スペースに目を向けると、何やらスープとパンを食べている。
うん。この間も見たね。
「私は大丈夫です」
「そうか、ではここでお別れかな? 明日もまた来るのだろう?」
「はい。明日は案内お願いしますね」
「任された」
レアさんたちとはそこで別れた。
私は、一人冒険者ギルドを出ると、すぐにアトリエに戻った。
別に冒険者ギルドから出る必要ないなと気がついたのは戻ってからだった。
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