第57話 時間の概念

 明日にはガラケー卒業となりそうだ。

 と、この話題を引っ張るのはこのくらいにして、異世界に戻り今日の予定を考える。


 レアさん達と約束しているから、まずは素材を冒険者ギルドに取りに行く。

 でも、その後はどうするかなぁ。


 ヒーリングポーション作りをするか、それとも街を探索するか……

 うーん、どうしよ。


 うん、今日はヒーリングポーションづくりに専念することにしよう。

 多分、レアさんたちは案内してくれるつもりだろうけど、街を探索するなら、カメラがあったほうがいいよね。

 2回も見て回るのも大変だし。

 それだったらスマホ持ってからのほうがいいや。

 スマホ持つのがもっと先なら案内優先なんだけど、明日ならそんなに遠い話しでもないからね。


 さて、予定決めたところで、早速移動しようかな。

 多分だけど、感覚的にはいつもと同じくらいの時間だし。

 そういえば、ちゃんとこっちの世界の時計も手に入れないとね。

 流石に腕時計みたいのはないと思うけど、もう少し大きめなら時計とかあるよね?

 あ、でも前にベルに聞いたときは時間の概念はあるけど、時計はないって言ってたっけ?

 まぁ、ベルの知識も昔のものっぽいし、新しくなっていることを祈ろう。

 皆して太陽だけで把握してたらどうしよう……

 まぁ、今日行ったら聞いてみよう。



 移動したら、二人はベッドに座っていた。

 これまでの鎧のような感じとは違ってラフな服装だった。

 私服なのかな?

 出かける準備を終えて、明らかに私待ちという感じで何事か話している。

 待たせちゃったかな?


「すみません、お待たせしました」


「いや、大丈夫だ。私達も準備を終えたところだ」


 私の言葉にレアさんが答えてくれる。

 その言葉が本当かどうかは別として、とりあえず、いつものルーティーンをする。

 魔力付与ポーションを飲んでもらうだけだけども。

 このポーション飲んでもらうのもここ数日で当たり前みたいになってきたなぁ。

 私が置くと何も言わずに飲んでくれるし。


 二人が飲み終わったところで、今日の話をする。

 具体的には、案内は明日にして欲しいとのこと。

 二人は不思議そうにしていたけれども、受け入れてくれた。


「明日が明後日に変わるだけだ、対して変わらない。」


 とのことだった。私と同じ感覚みたいだ。


「では、冒険者ギルドに向かおうか。この時間ならもう空いているはずだ」


「あ、はい」


 うん? 今気になるワードが……

 そうか、時間。今時間って言った?

 ってことは時間の概念あるんだね?


「レアさん、今って何時だかわかるんですか?」


 というか、あるんだ。


「あ、ああ、今は10時過ぎといったところだが……」


 突然の私の質問に戸惑うように答えるレアさん。

 確かに唐突だったかな?


「ちなみに、時間ってどういう概念ですか? 一日は24時間であってますか?」


「ああ、合っているぞ。一日は24時間、前半の半分が午前、後半が午後だ」


 よかった、ベルから聞いていたのと同じだ。

 でも、地球の時間の決まり方って、確か太陽の一周から決まってるじゃなかったっけ?

 それが、こっちでも同じってこと?

 偶然……にしては出来すぎだけど、まぁ、この際便利だからいいか。


「ほら、あれを見ればわかるだろう?」


 レアさんは、窓を指差す。

 正確には窓の外かな?

 釣られるように外を見ればそこには一つの建物があった。

 他の建物に比べても頭3つ分くらい高い。

 そしてその天辺には見覚えのある円形が……


「ひょっとして時計塔ですか?」


「ああ、このノルディックが誇る大時計塔だ」


 遠くからでもはっきりと見える形の時計。

 流石に、文字とかはわからないけれど、意味するところは同じだろう。

 私の知ってる時間で言う、10時過ぎくらいを指しているし。

 さっきレアさんが言ってた時間と同じだ。


「この街の人間はあれと鐘の音で時間を把握しているな」


 そうなんだ。

 ってことは家の中に時計はない感じなのか。

 小型化って大変なんだね。

 でも、私には便利な道具がある。

 それは携帯電話だ。

 今日はまだガラケーだけど、とりあえず、向こうの世界との時間差を図るくらいはしておこうかな。

 って駄目だ。

 指輪の中に入れてるときって時間止まっちゃうんだった。

 来てすぐくらいなら大丈夫だし、向こうで見れば自動で時刻合わせしてくれるんだけど。

 ちょっと経っちゃうともうずれて役に立たないね。

 便利な指輪の数少ない不便な点だ。


 そうなると、携帯以外の時間確認の方法考えてもいいかもね。

 ぱっと思いつくのは腕時計だけど。

 実はあんまり好きじゃなかったりするんだよね。

 パソコンのキーボード打つときに、邪魔だったので。

 その意識がどうしても染み付いちゃってる。


 まぁ、いいアイデアないか考えよう。

 携帯電話を指輪しまわなきゃいいだけなんだけどね。

 でもスマホになると、今よりも大きくなっちゃうしなぁ。

 ポケットに入れるのはちょっと厳しいかと思う。


「ハル殿。そろそろ行こうか」


「あ、はい。すみません。お待たせしました」


 考え込んでいる私にレアさんが声をかけてくる。

 また周り見えなくなっていたね。

 小型時計のことは後で考えることにして、今は、冒険者ギルドにヒーリングポーションの素材をもらいに行こう。


 そして、私達は一緒に宿屋を出た。

 レアさんが鍵を昨日見た受付さんに預けているのを見て、こういうところは私の世界と同じなんだなぁと思ったりした。

 でも、理由を聞いてみると、


「冒険者になると、死んでしまう可能性があるからな」


 とのことで、一見同じだけど、この世界特有の世知辛さみたいのを見た気がして微妙な想いをしたよ。


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