第55話 宿屋
値段を決めると、商業ギルドのマスターは書類を作ると言って帰っていった。
サンプルということで、ヒーリングポーションを一本持っていったけれど。
結局のところ、私について話すことはなかった。
話してもいいかなという気もしたけれど、今回は私のことを話さなくてもどうにかなったからね。
それに商人だったら、もうちょっとポーションの効果が出てからのほうが印象良さそうだし。
商業ギルドのマスターが去った後、冒険者ギルドのマスターと今後の話をする。
「ヒーリングポーションの納品自体は冒険者ギルドにしてもらって構わん」
そこから冒険者ギルドで必要数確保した後に商業ギルドに回すということらしい。
私としては、片方で済むので楽でいい。
「どのくらい持ってくればいいですか?」
「あればあるだけ助かるが……、その辺りは自由で構わないぞ。あんまり少ないも困るが」
ふむ、自由でいいってのは助かるね。
まぁ、あんまり作らなすぎるのも信用に関わるし、できるだけ数を作ればいいかな。
あ、どうせだったら。
「材料はもらえるんですよね?」
手持ちの薬草は残りもう少ない。
複製で増やして使えばいいけれど、薬草もらった分で作ればいいかなと。
「ああ、希少なものでなければ……、ないよな?」
不安そうな顔をするギルドマスター。
あれ? 素材については話してなかったっけ?
「素材は薬草だけで大丈夫ですよ。あ、水と入れ物も欲しいかな」
「そんな簡単なものでいいのか?」
「ええ、あとは私でどうにかできるので」
言っても、全部魔法陣に置いてポチッとするだけだけど。
「わかった。それならすぐに用意できると思う」
「では、私の方はその材料分だけ作るということで」
「わかった。明日には渡せるだろう」
ギルドマスターはすぐに受付嬢に指示を出していた。
それじゃあ、明日からつくる作業開始だね。
どのくらい素材来るかわからないけれど、日にどのくらい作るかは来てから考えればいいや。
「さて……」
今日のところはこのくらいでいいかな。
なんだかんだと結構な時間話してしまったし。
帰るのにはいい時間だ。
「私はこれで失礼しようと思いますが」
「そうか、しかし、今日はどうするんだ?」
私の言葉を聞いてギルドマスターが聞いてくる。
「拠点に帰るつもりですが」
「そうか、そんな能力もあると話していたな」
私の能力はざっと話してある。
複製とそれを使った移動についてもその中に入っていた。
「明日はまたここに来ればいいですか?」
「そうだな。サティに言えばここに案内するようにしておこう」
サティさんは、さっきの受付嬢さんだっけ?
でも、明日だと私のこと見えないんだよね。
ひと目のある受付で魔力付与ポーション渡すのはちょっとなぁ。
「では、私達と一緒に来ようか」
私が悩んでいると、レアさんが提案してくれた。
「ありがたいですけど、いいんですか?」
「ああ、どのみち、明日はハル殿にこの街を案内しようと思っていたからな」
そんなこと考えていてくれたのか、凄いありがたい。
「でも、お二人の予定とかは……」
「少し休もうかと思っています。あの素材でお金も入りそうですし」
カリナさんが答えてくれた。
曰く、帰ってきた疲れもあるとのこと。
「休息がてら、しばらくハル殿に付き合うつもりだぞ」
そういうことなら、
「お二人共、またしばらくよろしくお願いします」
「ああ(はい)」
案内役をゲットした。
明日の話がまとまったところで、冒険者ギルドを後にすることにした。
そのまま、レアさん達について宿屋までいくことにした。
本当はそのまま帰るつもりだったんだけど、明日の待ち合わせ場所が必要になったためだ。
「とは言っても、歩いてすぐそこだがな」
ギルドを出て、レアさんたちに続いて歩く。
歩いていると、チラチラと見られている気がするけど、私が見えるわけないから、レアさん達かな?
二人共美人だから目立つよね。
だけど、二人は何事もないようにゆっくり歩く。
宿屋は本当に歩いてすぐのところにあった。
体感的には10分も歩かなかったんじゃないかな?
宿屋に入ると、カウンターがありその中に女の子が一人立っていた。
私と同じ歳くらいかな?
カウンターの中にいるってことは、従業員だろうけど。
家族経営で手伝いだったりとかするんだろうか?
その女の子とレアさんたちは何やら挨拶をしている様子。
顔見知りみたいな雰囲気だ。
いつもここを使ってるような感じだったから、知り合いでもおかしくないか。
和やかに会話をした後に、レアさんたちは鍵を受け取る。
「さて、行こうか。向こうの階段だ」
私に一声かけて、奥にある階段へと向かっていく。
2階に登って部屋に入る。
鍵は一つしか受け取っていないから、レアさんとカリナさんは同室だろう。
鍵を開けて中に入る。
そこは広めの部屋だった。
ベッドが2つある。
前に、村で部屋を見たけど、それよりも広く、高級感があるような感じだ。
流石に天蓋とかはないけれど、ベッドはきちんと整えられている。
二人は慣れた様子でそれぞれベッドに座る。
「やっと座れる」
「ふぅ、流石に疲れたな」
二人は寝っ転がらないまでも伸びたりしている。
そういえば、今日帰ってきたばっかりなんだよね。
私は、常に家に帰ってたからベッドで寝てたけど、二人は野宿してたんだっけ。
「それじゃあ、私は明日ここにくればいいわけですね?」
確認したいのはこれだけだ。
「ああ、明日はハル殿が来るまではここにいることにする」
「わかりました。いつもと同じくらいに来るようにしますね」
約束だけして早々に二人と離れることにした。
早く帰って休ませて上げたかったしね。
かくいう私も久々に知らない人とと話したりして疲れたしね。
早いところ休みたいよ。
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