第53話 ポーションの価値
「それでお前はこれからどうするつもりなんだ?」
私の能力に関する話が終わったところでやっと私自身の話になった。
とは言っても、これからどうするか……ねぇ。
街に来た一番の目的は情報収集なんだけど、知りたいことが多すぎてね。
でも、その前に。
「しばらくはこの街で過ごすつもりでいます」
できれば拠点なんかを手に入れてこの街と世界に慣れること。
情報収集はそれからだ。
焦って変なことしても困るからね。
「何か宛はあるのか? というか、これを飲まねば見えないのだろう?」
どうするつもりだ? と訪ねてくる。
「その辺りは、我々が手助けする。助けられた恩もあるのでな」
私が答える前に、レアさんが応じてくれる。
カリンさんも頷いてくれている。
まぁ、現状それしか手段がないよね。
「そうか、二人なら問題ないだろう」
ギルドマスターも安心した感じだ。
まぁ、多分、二人には不安要素の私の監視的な役割もあるんだろうね。
「しかし、拠点か……、お金の宛はあるのか?」
「正直、無一文ですので。あ、その魔石は私がもらうことになっているので、それを売るとか?」
私は、狼の魔石を指差す。
貴重なものみたいだから、できれば何かに使えるまで保存しておきたかったけれど。
お金には変えられないね。
「……提案がある」
「はい?」
私の言葉に、ギルドマスターは難しい顔をする。
「魔石を買取してもが、それよりも、こっちを売らないか?」
こっちと言って指差したのは先程渡したヒーリングポーションだ。
「お前の能力を聞いていると、素材さえあればこれはいくらでも作れるだろ?」
確かに、素材さえあれば、ヒーリングポーションくらいなら短時間で作れる。
「どうだ? 素材はこちらから提供するから、これを作ってギルドに売らないか?」
「いいですけど、そんなに必要なんですか?」
「ここは冒険者ギルドだ。魔物とも戦う。それで傷つくことも多いからな」
なるほど、回復手段はあって越したことはないということね。
私のヒーリングポーションならば、すぐに回復するし。
「最近は、魔物の凶暴化や未知の魔物の話も聞くようになり、こういうアーティファクトがあると助かるのだ」
聞けば、あの狼は顕著な例としても、普通の魔物が強くなっていたりとかするらしい。
それに、見たことのない魔物の発見が相次いるとかで、怪我をする冒険者が増えているとのこと。
「どうだろう? もちろん、あの魔石の買取でもいいが、その場合は少し時間がかかるぞ」
ギルドの予算的に、あの魔石を買取するためのお金はすぐに動かせないらしい。
予算とか世知辛いね。
「ちょっと待って下さい。考えます」
さて、少し状況を考えよう。
と、思ったけど、考えるまでもなく私にデメリットなくない?
素材はくれる、買取もしてくれる。
消費するのは私の時間と魔力だけ。
魔力はすぐに回復するから、実質時間だけだ。
他のデメリットは……
強いて言うなら、出どころ探されたら困るってところかな?
そこのところどうするつもりだろう?
「遺跡から大量に発見されたことにする」
聞いてみると、そんな答えが帰ってきた。
なるほど、それなら確かに私に言及されることはないだろう。
他のデメリットは今の所思いつかない。
なら、最後に大事なことだ。
「ちなみに、価格はどのくらいになります?」
あんまり安すぎたら私が作るだけ手間だし。
前に聞いた価格だと、10万だっけ?
流石にそこまでじゃなくていいけれども。
「こちらとしては、なるべく安く買い取りたいところではあるが……」
ギルドマスターは上を向いて悩む。
「あまり高すぎても冒険者に回らない。しかし、安すぎると他の薬の価格崩壊にもつながるな」
なるほど、確かに、現状のこの世界の薬が売れなくなるのはまずい。
それによって仕事失う人とかも出てくるだろうし。
「うむぅ、悩みどころではあるな。正直、俺では答えが出せん」
悩んだ挙げ句にそんな答えが帰ってきた。
いやいや、それだと困りますって。
「安心しろ。こういうのは専門家の意見を聞くべきだろう」
「専門家?」
「商業ギルドのマスターだ」
あー、確かに、価格決定とかなら冒険者ギルドよりも商業ギルドの方が適正かも?
「できればなるべく早くに決めたいところではあるが……」
ギルドマスターはチラッと私の事を見る。
私の扱いをどうするかで悩んでいるのだろう。
考えよう。
さっき言ったように遺跡から大量に発見されたってことにするのであれば、私のことを話す必要はない。
価格だけを決めてもらって納品でいいだろう。
でも、商業ギルドのマスターか……
「その商業ギルドのマスターはどんな人ですか?」
権力者とのつながりはあったほうが楽だと思う。
商業ギルドのマスターになれば、私の作ったものとかの相談もできるだろうし。
ただ、信用できるかだけが気になる。
「ああ、あれなら大丈夫だろう。優秀だし約束事はきっちり守る女だ」
女性なのか。
「私も信用できる人だとは思うぞ。少しお金にうるさいところはあるが」
レアさんも付け足す。
なるほど、正しく商人みたいな感じの人ってことかな?
商売人ってのは、信用商売だからね。
聞く限りは大丈夫そうだけど、ちゃんと確認しないと不安だね。
「まぁ、ヒリーングポーションの話を振って反応見てからでも悪くないだろう」
その様子を影から見てから決めるとういうことで話が決まった。
ということで、早速ギルドマスターが指示を出して、受付嬢が商業ギルドに向かっていった。
商業ギルドのマスターの女の人か。どんな人だろうね?
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