第47話 二人の関係

 さて、お昼も食べ終わって出発の準備だ。

 休憩終わったら即出発って感じだね。

 ミドリからリバーシ受け取ったけど、やるタイミングが全くないね。


 馬車内は揺れて無理、夜は一緒にいないから、必然昼しかタイミングがない。

 これは道中は無理そうかもね。


 午後はカリナさんと一緒に、馬車内でグダッとする。

 それにしても、暇だね。


「今って順調に来ている感じですか?」


 確か、街まで5日間って言ってたはず、順調に来ていればあと3日くらい?


「ええ、凄い順調ですよ。この調子ならば1日くらいは早く付きそうですね」


 おお、そうなんだ。

 それは良かった。

 ってことは、今2日目だから、明後日中には着く感じかな?


「どうやら、いい馬を貸してくれたみたいです。こんなに気合の入った馬はなかなかいませんよ」


 へぇ、私に怯えてた馬だけど、馬としては優秀みたいだね。

 ……怯えて早く仕事終わらせたいだけだったりして。

 そんなわけないよね?


「その分、少し馬車は揺れていますけどね。これがあるから助かります」


 そう言って、カリナさんはポンポンと布団を叩く。


「あれ? レアさんはそれほど揺れていないって言ってた気がしますけど」


「レアはその……、色々と雑なので……」


 カリナさんが苦い顔をしている。

 レアさん、そうなんだ。

 お箸の時も結構苦労していたし、細かいこと苦手なんだね。

 なんか、イメージ通りだけど。


「なんか、カリナさんってレアさんのお姉さんみたいですね」


「たまに言われますね。でも、姉妹とかではないですよ。付き合いが長いだけです」


「子供の頃からの知り合いとかですか?」


「ええ、まぁ、そんな感じです」


 へぇ、私とミドリみたいな感じかな?

 どっちがどっちとは言わないけど。


「子供の頃の知り合いで二人共冒険者になったんですね」


「ええ、レアがどうしても冒険者になりたいというので、私も引っ張られた感じですね」


 幼いレアさんが、冒険者ごっことかやってた微笑ましい姿。

 そして、その後ろをついていくカリナさん。

 ふふっ、なんか想像つくなぁ。

 そして、その関係が今も続いてるって感じかな。


 こんな感じでカリナさんとの会話は昨日とは違ったけど、楽しめた。

 二人の関係みたいのが知れた気がするね。

 私とミドリも同じような関係でいれるかな?

 ちょっと私の環境変わっちゃったけど。

 なんだか、ミドリに会いたくなってきた。

 まぁ、すぐに会えるんだけどね。




 一日の移動が終わり、私はまたアトリエに帰った。

 そして、地球へと飛ぶ。

 2日連続で疲れていたからか、起きるのが少し遅くなってしまった。

 家に着くと、二人はもう夕食を始めていた。


「ごめん。遅くなった」


「お姉ちゃん!」


 すぐにカナが立ち上がってきて抱きついてくる。


「こら、カナ食事中に立ち上がらない! 行儀が悪いよ!」


 ミドリが座ったままでカナを叱る。


「はーい」


 カナはそそくさと元の位置に座る。

 なんかミドリが私より姉っぽくて若干嫉妬。


「ハルもいらっしゃい。遅かったね」


「寝坊した。疲れていたのかもね」


「あー、今移動してるんだっけ? 何かあったの?」


 昨日、馬車が大変だという話はしたから、それ以上にという意味では。


「特にないけど、やっぱり気が張り詰めていたのかもね」


 あ、そうだ。


「お弁当ありがとうね。二人共喜んで食べてくれたよ」


「そう、よかった! やっぱり日本の食べ物は異世界でも通じるんだね!」


 私の言葉に、ミドリは嬉しそうにしている。


「何か言ってた?」


「ともかく食べたことのないくらい美味しかったって言ってたよ。あ、ミドリの事を”世を忍ぶ天才料理人”みたいだってさ」


「”世を忍ぶ天才料理人”って……なんでそんなになってるの?」


 不思議そうにするミドリに説明する。

 料理人の事を言えない話をすると納得してくれた。

 ミドリは照れていたけれど、嬉しそうだった。

 純粋に料理おいしいって言われるのは嬉しいんだろう。



「ふーん、料理はやっぱり良かった感じね。あ、リバーシはどうだった?」


 あ、そうそう。それだよ。


「まだできていないんだよ。馬車が揺れたりしててやる時間がなくてさ」


「そっか。うーん、リバーシの感想も聞きたかったんだけどなぁ」


 ミドリは少し残念そうにしている。


「どうしようかなぁ。うーん、でもなぁ……」


 ミドリは何か悩んでいる様子で、なにやらブツブツ言っている。


「うん。決めた。チョット待ってて」


 ミドリは立ち上がると、一人部屋に向かう。

 ちなみに、ミドリは自分の分の夕食を食べ終えている。


 そして帰ってきたミドリはこの間と同じように何か持っていた。

 なんだろう? 前よりも大分小さいけれど。


「これ、トランプ!」


 トランプ? カードのやつ? だよね。

 なんで今?


「リバーシできないんでしょ? だったら変わりになるやつ」


「それでトランプ?」


「本当はリバーシが定番だから、トランプ先ってのは邪道な気がするけどね」


 確かに、ゲームにもよるけれど、トランプだったら、揺れる中でもできるかも?

 ババ抜きとかだったら、捨札を置くところさえあればいいしね。

 酔うことを考えなければだけど。

 私は大丈夫だけど、他の人はどうなんだろう?

 揺れには強そうだったし、大丈夫かな?

 ここはありがたく受け取っておくことにしよう。


「ありがとう。できるならやってみるよ」


「うん。感想楽しみにしてるから」


 ありがたいタイミングでいいものもらえたね。

 二人と話し続けるのも楽しいけれど、話題に困ってきたところではあるし、トランプ遊びもいいかもね。


「でも、机のいらない遊びって何があるかな?」


 今はババ抜きくらいしか思いつかない。


「それじゃあ調べてみようか」


 ミドリが自分のスマホを使って調べ始める。


 結果としていくつかゲームが見つかった。

 有名所だと、ババ抜きとポーカーとかもいけそうかな?

 対して、無理なのは7ならべや神経衰弱みたいに机に並べるやつ。

 ひょっとしたら、真ん中にちょっと置くだけくらいなら大富豪みたいなやつもいけるかも?

 そうすると、数は途端に増えるね。


 中には聞いたこともない遊びも沢山あった。

 調べながら、カナとミドリとやりながら地球での時間を過ごしよ。


 それにしても、トランプって凄いよね。

 数字とマークの組み合わせだけで、無数の遊び方ができるんだからね。

 これはレアさんたちにもぜひ楽しんでもらいたい。

 私の時間つぶしにもなるし。


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