第43話 帰りは簡単に
休憩を摂った後は、予定通りにカリナさんと話をして過ごし今日の行程は終了となった。
カリナさんからはレアさんと同じような話を聞いたりした。
おかげで、この世界が私の想像するファンタジー世界とそう大差ないことがわかったよ。
まぁ、魔法はなかったけど。
「それじゃあ夜営の準備をしましょうか」
そう言って、カリナさんは袋を持って外に降りる。
私も同じように降りると、そこにはレアさんは待っていた。
「ハル殿大丈夫か?」
休憩前に体調悪そうにしていたのを心配させたらしい。
「ええ、カリナさんとお話をしていたので大丈夫です」
「それならよかった。今日はここで休むぞ」
そう言ってレアさんは焚き火の準備をしているらしいカリナさんを見る。
夜営って何をするんだろう?
聞いてみたほうが早いか。
「夜営って何をするんですか?」
「うん? 単に交代で火の番をするだけだぞ?」
聞けば魔物が寄ってこないか念の為見張るらしい。
なるほど、確かに夜のうちに魔物に襲われたら大変だもんね。
なんとなく、魔物は夜に活発のイメージだし。
「ハル殿は休んでおいて構わないぞ。私とカリナで見張りをやるからな」
私は寝ていていいとのこと。
うん? あ、そういえば、ちゃんと言ってなかった気がする。
「前にも軽く言った気がしますが、私は夜中は拠点に帰りますのでご心配なく」
「あー、そういう魔法があると言っていた気がするが……」
あの時は魔法ということに驚かれて、話がちゃんと出ていたなかった気がする。
「ええ、複製の魔法を使えばすぐに移動することができますので」
「複製というのは物を増やしたりするのではないのか?」
「ええ、その認識で合っていますよ」
「それを使って移動とはどういうことなのだ?」
確かに、複製と移動というのは全然違う概念かもね。
私も神様に言われた時に、はぁ? ってなったもん。
「私自身に複製をかけることで移動するんです。今も複製の方ですよ」
私は編成での移動について説明をする。
説明を聞いたレアさんは唖然とした表情をしている。
「まさかハル殿が魔法でできた存在だったとは……」
ああ、そういう驚き?
そういえば、本体の方で会ったことはないね。
複製と本体違いほとんどないけれども。
「まぁ、というわけで、複製を使って移動すればいいので、今日は帰ってまた明日ここに来ますよ」
「り、了解した」
それではまた。と、出ようとする……前に、カリナさんにも声をかけておく。
結果としてカリナさんにも同じ話をして驚かれたのは言うまでもないだろう。
周りの景色をしっかりと覚えてから複製を解く。
これ、ちゃんと覚えられないとここに飛んでこれないからね。
もうちょっと簡単に覚えられる方法考えたほうが安全かもね。
思いつくのは写真を撮るとかかな?
私の携帯電話のカメラだとそんなに性能良くないんだよねぇ。
そもそもガラケーだし。
スマホが欲しくなってしまうね。
そんなお金ないけれど。
せっかくだから錬金術を使って地球側でお金稼ぐ方法とか考えたいなぁ。
帰って寝て、地球へと戻った。
昨日の移動で用意しないといけないものがいくつかあったからそれの準備だ。
まず、馬車の振動対策にクッション。
……クッションなんてものは私の持ち物にない。
うーん、どうしよう。代用でいいかなぁ。
「お姉ちゃん、何をしてるの?」
おもむろに押し入れを漁っている私をカナが見て首を傾げていた。
「布団でも持っていこうかと思ってね」
結構広めの馬車だし、入るでしょ。
持っていくのも指輪に入れるだけだしね。
「カナも手伝う!」
カナが押入れから布団を出すのを手伝ってくれた。
自分一人でできるけど、こういう気持ちが嬉しいよね。
さて、布団は入手した。
後はなんだったかな?
あー、そうだ。ご飯だ。
「ご飯が美味しくなかったんだ」
忘れたくなるくらいの味だったのを思い出してしまった。
自分は食べなくてもいいけど、美味しい料理を知っている私からするとアレは許せない。
「そんなこともあろうかと!」
「ミドリ?」
ミドリが階段を上がってやってきた。
なんかそのセリフ昨日も聞いた気がするね。
「異世界では日本食で無双するのも定番! そんなわけで。はい!」
ミドリが何かを差し出してきた。
何やら大きめの布の袋だ。これはなんだろう?
「開けてみて!」
ミドリが言うので布の袋を開けて中を取り出してみる。
出てきたのは四角い箱だった。
ミドリの家でお正月とかにみたことがあるこれは……
「お重だよ!」
お重。お正月におせちとかを入れるあれだ。
小学校とのか運動会でお弁当入れて食べるような印象もあるね……って、まさか?
「お弁当を作ったよ!」
まさかのまさかだった。
「いつの間に……」
「ハルが異世界の人と一緒に一日行動するって言ってたからね。きっと向こうの食事を食べると思って」
さすが幼馴染。私の行動が読まれていたらしい。
「でも、そこまでする必要あるの?」
わざわざお重まで用意してまでお弁当を用意する意味がわからない。
めんどくさいだろうに……
「やっぱり日本人としては、美味しい食事を広めたいからね」
きっとハルも同じこと思うと思った、とのこと。
うん。まさにそんな感じのこと考えたけども……
「それに、これでも料理屋の娘だからね。下手なもの食べさせられないから」
だから自分で作ったのか。
アリものを買わなかったのは料理屋のプライドってやつかね。
いや、たしかにミドリの料理は美味しいけどね。
私が呆れていると、手を引かれる感覚。
見れば、カナが私の手を持っていた。
「お姉ちゃん。私も食べたい」
カナがお腹が減ったと訴えてきた。
うーん、妹の願いは叶えてあげたいけど、これは異世界に持っていくようだしなぁ。
ちょっとくらいかな大丈夫かな?
あげてもいい? とミドリに聞こうと思ったが、先にミドリが答えた。
「大丈夫。今日の夕飯も同じメニューをにしたから!」
準備がいいことで……
「ちょっとお夕飯には合わないかもだけどね」
持ってくると言って、ミドリは階段を降りていく。
多分、隣の家から持ってくるつもりだろう。
「それじゃあ、こっちの準備はしておこうか」
「うん」
ミドリの事を見送って私とカナで夕飯の準備をすることにした。
うん? ひょっとして同じ中身ってことは、私はニ食続けて同じメニューになるのかな?
美味しいからいいけどね。美味しいから。
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