第34話 女騎士の事情
ひとまず、倒れているレアさんの仲間にポーションを飲ませることに。
レアさんが倒れている仲間の口にポーションを流し込む。
しかし、お仲間さんは起き上がることはなかった。
でも、傷は消えてるはずだし、さっき生きていてるって言ってたよね。
「大丈夫なの?」
一応、レアさんに聞いてみることにした。
「ああ、どうやら気絶しているみたいだ。疲労が溜まっていたのだろう」
あ、そういうこと。
「息も乱れていないし大丈夫だろう」
「それならよかったね」
「ああ、ハル殿のおかげだ」
お礼はさっき言われたからいいよ。
それより、これからどうしようか。
レアさんに聞きたいことは色々あるんだけど、そういう流れじゃないよねこれ。
「レアさんはこれからどうするの?」
「私か? 私は仲間が起きたら、このシャドウウルフを討伐したことを近くの村に報告に行くつもりでいる」
おっ? 近くに村があるの? それはいい情報を聞いたね。
「できればそこまでついていきたいんだけどいい?」
「ああ、問題ないぞ。というか、いてくれた方がいい。流石に紹介はできないが……」
うん。そりゃね。私としても、不特定多数の人に知られたいとは思ってないし。
というか、普通に信じてもらえないでしょ。
「紹介は必要ないよ。私は村の場所を知れればいいだけだから」
「村に戻ったら個人的になにかお礼はさせてもらうつもりだ」
大したことはできないが……と付け足す。
お礼ねぇ……
「まぁ、それはおいおいでいいよ。あ、できればその狼の魔石が欲しいかな」
あれだけ強力な魔物の魔石だ。
何かの錬金術に使えるかも知れない。
「魔石か……、魔石は討伐の証として必要なのだが……」
レアさんが悩んでしまう。
あら? ダメそう?
「いや、報告した後なら問題ないか。うん。大丈夫だぞ。少し後になってしまうが……」
無事もらえるみたいだ。よかった。
「うん。じゃあ、お礼はそれでいいよ」
「いや、しかし……、この魔物はハル殿が倒したのも同然。魔石も元々ハル殿に権利があったと言ってもおかしくない」
私の言葉にレアさんは首を振った。
「他に何かできることはないか?」
真面目な人だなぁ。
うーん、だったら、当初の予定通り色々と聞かせてもらう。
「それじゃあ、しばらく私のこと助けてもらおうかな」
うん。どうせだったら、この世界でのサポートをしてもらおうかなぁ。
「見ての通り、私は幽霊だし。正直、色々とよく分かってないところが多いから、その辺りのサポートをしてもらう感じで」
「……記憶がないということか?」
ないわけじゃないんだけど、でもこの世界の記憶はないし。
そういうことにしておいた方がいいかもね。
「まぁ、そういう感じで。ここがどこかもわかっていない状況なのよ」
「なるほど、そういうことだったら力になれると思う」
よし、サポーターゲット。これでこの世界でも生きやすくなるかな。
「あ、でも、落ち着いたらでいいからね。そっちも今は疲れているだろうし」
「ああ、助かる」
そんな感じの話をしながらお仲間さん、カリナさんというらしい、が起きるのを待つ。
だが、しばらく経っても起きる気配がない。
うーん、待っててもいいんだけど。
「ねぇ、どうせ寝ているなら、村に帰って寝かせた方がいいんじゃない?」
もしも、一晩起きなかったら困るし。
正直に言うと、私も早く村の場所知りたいってのもある。
「だがな……、このシャドウウルフを放置してはおけない。何かに死体を持っていかれても困るしな」
あー、近くの別の魔物が荒らすとかかな。
「だったら、村までそれ持っていくのは?」
「このシャドウウルフの死体をか? いや、流石に私もカリナとこのシャドウウルフ両方持っていくのはできない」
まぁ、そりゃそうよね。
というか、二人がかりでもこのシャドウウルフの死体持って引きずっていくのとか無理でしょ。
「カリナが起きたら、見張りをしてもらって、私が村に手助けを頼むつもりだ」
要するに運ぶ人員ってことね。
「だったら、私がそのシャドウウルフを村の近くまで運ぶよ」
「ハル殿がか?」
レアさんが困惑の表情を浮かべる。
「姿が見えず申し訳ないのだが、ハル殿は実は巨人だったりするのか?」
私ができると言うから疑うわけではなく、そういう方向になっちゃうのね。
つくづく真面目な人だね。
「いやいや、私は普通の女の子ですよ」
幽霊が普通……の定義は置いておいて、少なくとも、巨人じゃない。
「ならどうやって……」
「それは、こうやって」
私は、指輪にシャドウウルフを収納する。
「なっ!? シャドウウルフの死体が!? 消えた!?」
おっ? 結構でかいはずだけど、普通に入ったね。
「ハル殿! 今何をしたのだ!?」
レアさんがうろたえてシャドウウルフの死体のあったあたりの地面を叩いている。
埋まってるわけじゃないんだからさ、と笑ってはいけないよね。
「私の能力の一つに物を別空間にしまい込むってのがあるんです。それでシャドウウルフをしまっただけです」
「そんな能力が!?」
あ、やっぱりこの能力も珍しいんだね。
ベルはそんなこと言ってなかった気がするけど。
「でも、これで村の近くまで運べますよ。レアさんはお仲間さんを背負ってくれれば大丈夫です」
「うむぅ。またハル殿に助けられてしまったが……、すまない。よろしく頼む」
ええ、おまかせ。
別に私はついていくだけなんだけどね。
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