異世界探索
第31話 森の外へ向かって
一週間は光の矢の如く過ぎ去った。
明日からはカナの学校が始まることになる。
その間、私はなるべく地球でカナとミドリで過ごしつつ、限界になると異世界に戻るみたいな生活を続けていた。
活動時間の限界から、結局半日地球、半日異世界みたいな過ごし方になっていた。
そして、異世界にいる間は森の外に出るための準備を進めていた。
まず、目的の設定。
これがぶれてては元も子もなくなってしまうので、きちっと定めた。
これは2つ。
1.カナの耳をなんとかすること
2.私という存在を普通の人にも見えるようにすること
1に関してはは前にも話したとおり、結局どういうものかわからないので、そのままにしておくわけにはいかないため。
2に関しては、1が解決した後もカナに認識してもらうためだ。
毎日魔力付与ポーション飲んでもらう生活は不便だしね。
その件について、ベルに相談をしたところ、
「錬金術もですが、魔法の知識が必要ですね」
とのことだった。
前にも聞いたけれど、幻影の魔法みたいな感じで姿を見せることができるらしい。
幻影でいいのかとちょっと疑問はあるけれど、どちらにせよ知識不足というのは納得できた。
結局のところ、森の外に出て魔法の知識を探すのが一番だという結論になった。
余談ではあるが、ミドリが漫画で仕入れた錬金術の知識に『賢者の石』というものがあった。
要するに何でもすることができる物体? みたいなもので、錬金術師の最終目標の一つらしい。
それについてベルに聞いてみた。
「賢者の石というものは私のデータにもあります」
おおっ、ほんとにあるんだ、と思いそれを作ればいいのかな? とか思っていたのだが。
「ですが、なぜか名前しかわかりません」
効果はもちろんのこと、素材もわからないとのこと。
「……駄目じゃん」
ということで、賢者の石についてはとりあえず、保留となった。
まぁ、目標さえ定まっていれば大丈夫。
過程も大事だけど、やっぱり結果の方が重要だからね。
「ということで、明日から森の外を目指して探索することにするよ」
地球時間で夜、カナとミドリに向かって私はそう言った。
「そっか、じゃあ明日からは、少し来る時間減るの?」
「いや、考えたんだけど、なるべく今のままを維持するつもり」
時間については一週間色々と実験をしてみた。
向うでの活動時間、こっちのでの活動時間を考慮し、最適だと思う時間を考えていた。
「こっちには16時から21時までいるつもり。夕方から夜にかけてだね」
ちなみに、向う時間だと半日ずれているので朝4時から9時の間だ。
寝る時間は向うで夜早く寝ることで対応した。
「まぁ、もしも向うで何かあったら減ったり増えたりはするかもだけど……」
それでいい? と二人に聞いてみる。
「うん。まぁ、いいんじゃない。やっぱり一緒にご飯食べるのって重要だと思うし」
「カナも。大丈夫だよっ」
二人も納得してくれたみたいでよかった。
その後も、カナが眠るまで地球にいてその後異世界に戻った。
「さて、というわけで活動していこうか」
異世界に戻った私は早速活動をすることにした。
明日って言ったけど、私的にはもう今日だったりする。
なんか、時差があるからややこしいね。
「マスターさんもついに旅立ちですか……少し寂しいですね……」
ベルがつぶやくようにそう言った。
しかし、
「いや? 基本的にはここを拠点にするつもりだよ?」
ここにいることもすっかり慣れてしまった。
今では第2の家みたいにさえ思える。
「それに、錬金術ってここでしかできないでしょ?」
正確には魔法陣とベルがいるところ。
魔法陣とか書けないし、そもそもベルはこの家から出れない。
「しかし、ではどうするので?」
「ふふふ、それはこうするのよ」
ベルの質問に、私は座って目を閉じ複製魔法を使う。
意識が一瞬途切れ、戻ったときには、目の前に私の顔があった。
一瞬鏡を見たような錯覚に落ちるが、鏡ではない。
にやりと私は笑うけれど、目の前の私は座って目を閉じたままだ。
「マスターさんが……二人?」
そう、複製の魔法を私にかけたのだ。
そして、私の意識は今は複製体の方にいる。
「これだったら、簡単に帰ってこれるでしょ?」
帰ってくるときには複製魔法を解けばいいのだ。
そして、また行くときは、複製魔法を使えばいい。
意図した場所に複製体を出せるので、ちょっとした転移魔法のように使えるのだ。
「なるほど、さすがマスターさん。考えましたね」
まぁ、元々地球に転移するために使っていたのだし、それが同じ世界になっただけではある。
しかし、こうして自分自身を見るってなんとも言えない気分だね。
これが私かぁって気分になる。
ちょっとした自分の人形を見ているみたいだね。
なんか透けてるけど。
「本体の方で出かけて、複製でこっち戻ってくる案もあったけれど、こっちのが安全でしょ?」
「ですね。少なくとも、このアトリエにはよほどがなければ入ってこれません」
複製している時は本体は無防備というのは神様にも言われたことだった。
それも考慮し、そもそも、外がどうなっているかわからない場所に自ら行くというのは危険ということで、複製体を使うことにした。
「もしも、外で危なくなっても複製体消すのは一瞬だからね」
安全対策はぬかりない。
よし、
「それじゃあ、行ってくるよ!」
「はい、マスターさん、行ってらっしゃいませ」
声をかけてアトリエを出た。
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