第30話 今後について
このままでは話がしづらいので、ミドリに魔力付与ポーションを複製して渡す。
声は聞こえないけど、やっぱり見えてると違うからね。
「それで、ハルは今後どうするつもりなの?」
魔力付与で私が見えるようになったミドリが聞いてきた。
「どうするって?」
「だって、ハルずっとこっちにいれるわけじゃないんでしょ?」
そのとおりだ。
当初の目的であったカナの救出は成し遂げたけど、私が死んだのは事実として残っている。
「最大で半日くらいはいれるはず? 寝る時だけ向うに帰るとかならできるかも」
でも、他の人に見えるわけじゃないしこっちで何も活動できないんだよね……
「カナはお姉ちゃんがいてくれるだけでも嬉しいよ?」
「カナっ」
カナが嬉しいことを言ってくれて嬉しくなってしまう。
けれど、私的には何かしら生産的な活動がしたいところ。
それに、
「カナの狐耳をどうにかしないとってのもあるしね」
今が大丈夫だからと言って、ずっと大丈夫とは限らない。
できれば元の状態にもどしてあげたい。
「でも、それがなくなったらハルのこと見えなくなっちゃんじゃないの?」
私みたいにと、ミドリが言う。
「お姉ちゃんが見えなくなるの嫌っ!」
それを聞いたカナは私に抱きついてくる。
うーん、難しい問題だなぁ。
「耳はなくさないといけないけれど、私が見えるようにってのは継続しなきゃだなぁ」
でも、方法はわからない。
「だから、向うの世界探索するしかない……んだけど」
少なくともこっちの世界で方法探すよりは答えが見つかりやすそう。
「でも、そうなると、こっちにいれる時間減っちゃうよね」
それが心配だ。
カナだって回復するのに時間はかかるだろうし、あんまり一人にするのは気が引ける。
「お姉ちゃん。カナのことなら大丈夫だよ」
カナが真面目な顔をして言う。
「確かにお姉ちゃんがいなくなって落ち込んじゃったけれど、こうして助けてくれたでしょ?」
「でも……」
「それに、会えなくなっちゃうわけじゃないんでしょ」
それなら大丈夫、と胸を張って言う。
あー、なんだかカナが急に大人になってしまった気がする。
頼もしいやら寂しいやらだなぁ。
でも、せっかくそう言ってくれてるんだ、ここは私も妹離れをしないといけない。
……やっぱり寂しけれど。
「それじゃあ、せめて学校が始まるまではいればいいんじゃない?」
そんな私とカナの様子を見て、ミドリが思いついたように提案してくる。
「ほら、どうせ学校始まったらその時間は一緒にいれないわけじゃない?」
なるほど、どのみち学校が始まったらカナといる時間は減ることになる。
カナが学校に行っている間に向うで活動するというのは悪くない考えだと思う。
「ちなみに、学校っていつから?」
「来週からだよ!」
ミドリがカレンダーを持ってきて見せてくれる。
ちょうど一週間後からか。
それならちょうどいい感じかな。
「私はそれでいいかな。カナの学校が始まるまでは、なるべくこっちにいる感じで」
始まったら本格的に向うで活動開始する。
あんまり変わらない気がするけれど、気持ちの問題は大きく変わる。
「お姉ちゃんがいてくれるの嬉しい!」
カナもそう言ってくれる。
とりあえずの方針は決まったかな?
「あ、そうだ!」
方針が決まったところで、カナ、ミドリと久々の家族の雑談に興じているところで、ミドリが急に声を上げた。
「私の両親にハルのことは話していいの?」
あー、その問題か……
「……どうしようかね」
どうも煮え切らない返事をしてしまう。
私が死んだことで悲しませてしまったのは事実だし、話してしまった方がいい気がするなぁ。
魔力付与ポーションも手に入れたことだし、それを使って姿を見せれば、最終的にはきっと信じてくれる気がする。
でもなぁ……
「それに、やっぱりちょっと怖いかも。信じてもらえるかどうか」
なんだかんだとそれに尽きる。
もしも信じてもらえなかったときが怖い。
二人は子供の私達と違ってちゃんとした常識を持った大人だ。
この事態はその二人の常識範疇から逸脱しすぎている気がする。
「きっと大丈夫だよ。だって、私の両親だよ。それに、ハルにとっても両親みたいなものでしょ?」
そう言われると、なんだかちゃんと言わないことにも気が引けて来てしまう。
「ハルの気持ちもわかるけれど、やっぱり娘が帰ってきて喜ばない親じゃないって」
そうかなぁ?
確かに、あの二人なら喜んでくれそうだとは思う。
怖がってばかりはいられないよね。
「わかった。じゃあ、話すことにしようか」
「よし! それじゃあ、早速呼んでくるから!」
えっ?
「ちょ、ちょっとま……」
ミドリは言うが早しと、階段を駆け下りていってしまった。
「ミドリ姉ちゃん忙しいね」
カナがくすっと笑う。
はぁ……
もうちょっと覚悟決める時間ほしかったけど、しょうがないか。
それじゃあ、私は魔力付与ポーションでも複製して待っているとしようか。
すぐに戻ってきたミドリと連れらてきたその両親。
二人は、まずカナのことを心配し、抱きしめた。
その後、カナとミドリから今までのことについて話され、混乱しながらも魔力付与ポーションを飲んだ。
そして、私を見ると、泣いて喜んで抱きしめてくれたのであった。
うん。心配してたのが馬鹿みたいにすぐ信じてくれたね。
まったく口挟む暇すらなかったよ。
そうして、私は幽霊になってから初めて存命家族との時間を過ごすことができたのであった。
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