第26話 変なフラグ建築

 アトリエに戻りすぐに持って帰ってきた素材で魔力付与ポーションを作った。


「これが魔力付与ポーション……」


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 名称

 魔力付与ポーション

 説明

 飲むと魔力を付与する

 付与する魔力は品質に依存する

 品質

 85

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 元の素材自体はあまり品質がよくなかったけど、私がじっくり時間をかけて魔力を込めたらこうなった。

 確か、こっちの素材の最高が100のはずだから結構いいはず?

 でも、やっぱり地球の素材で100超えとかしょっちゅう見ているから低く感じるね。

 これで大丈夫なのかな?


「品質的には全く問題ないかと。それを飲めば普通の魔法使いが賢者と呼ばれるくらいはなりますよ」


 例えがわからない。

 そもそも普通の魔法使いのレベルもわからないし、賢者のレベルもわからない。


「まぁ、それなりの魔法使いがドラゴンに挑めるくらいと思っていただければ……」


 よくわからないけど、凄そうなことは伝わった。

 挑めるだけで勝てるとは言っていないことがミソらしい。


「ちなみに、マスターさんの魔力ならドラゴン程度一撃かと」


 一気によくわからなくなったけど。

 まぁ、それだけベルが言うってことは品質的には十分なんだろう。

 後はこれを実験したいんだけど……

 まぁ、向うに行ってから一回ミドリに飲んでもらえばいいかな。

 これを複製して飲んでもらおう。


 あ、でも、よく考えたら、複製の魔法って確か向うだとかなりの魔力を消費するんだったっけ?

 あんまり検証はしていなかったけど、いざって時に魔力不足でこっち戻されたら困るね。


 複製って複製している時、常時魔力を消費してる状態になるんだっけ?

 それで地球に複製するのはかなりの魔力がいる。

 そんなことを神様が言ってたっけ。

 それだと、こっちで複製しても意味がないのかな?


 あれ? でも、前にあっちで複製使った時はそれだけでかなりの魔力減ったような気がする。

 うん。確かミドリのためにポーションを複製した時そうだった。


 ってことは、複製は魔力消費のタイミングが2箇所あるってことかな?

 1つは複製している時。

 これは複製しているモノがある時は、常に魔力が消費されているような感じ。

 2つ目は、複製をした時。

 複製を使ったタイミングでいくらか魔力が消費されているみたい。


 それで、問題はこの2つとも地球で複製をするとこっちでやるよりもかなりの魔力が消費されるってことかな。

 2つ目の方はこっちで魔力消費になるからまだいいかもだけど、1つ目の方の常時ってのが結構痛いね。

 自分の地球での活動時間が減ることになっちゃう。


 うーん、そうなると今日はできれば長い時間いたいから消費を減らす方向にしたいなぁ。

 でも、ミドリで一度試しておきたい。

 こんなところで複製の欠点があるなんてね。


「だったら、もう一つ作ればいいだけなのでは?」


 ベルに相談すると、さらっとそんなことを言われた。


「………」


 複製って便利だよね。

 でも、便利すぎてもう一つ作ることに頭が回らなかったのは我ながら駄目だと思う。

 人間便利なことに慣れすぎると、考え方が低下していくんだ。

 と、そんなことを思いつつ、私はもう何本かの魔力付与ポーションを作るのだった。



 さて、今日の計画だ。

 まずは、ミドリで人体実験……もとい、試薬をしてもらう。

 それでうまくいきそうならカナに魔力付与ポーションを飲ませる。

 飲ませる段取りだけど、ポーションを食事に混ぜているときみたいに混ぜてもらう手はずになっている。

 つまり、食事を作る前にミドリに渡し、食べた後にそれを確認する必要がある。

 ここでの問題は、カナが食事をいつ取るかわからないという点だ。

 つまり、ミドリが食事をカナに届け、それをカナが食べるまで私は向う居続ける必要がある。

 さっきの通り、複製は常時魔力を消費しているため、時間には限界がある。

 神様を脅迫、もとい、交渉をしたおかげで半日くらいはいれるようになっているはずだけど、時間が残っているに越したことはない。

 ちなみに、魔力付与ポーションの効果は1日程度らしい。

 最悪、失敗しても、こっちで回復をしてまた向う戻れば間に合うってわけね。


 とはいえ、現状、何か時間を伸ばす案があるわけではない。

 ちなみに、自分に魔力付与ポーションを使うという案は、大した足しにならないということで却下となった。

 普通の人間がドラゴンと戦えるようになるくらいなのに、大した足しにならないって、地球への複製ってどんだけ消費が激しんだろうね。

 と、まぁ、不安はあるけれど、現状できる最善策を積んだつもりだ。

 それを持って私は、向うの昼前を目標に地球に行くことにした。



 昼前の神社裏、私はミドリと合流をして、魔力付与ポーションを渡した。


「これがポーション……」


 ミドリは魔力付与ポーションを眺める。


「じゃあ、人体実……試飲してみて」


「なんか今、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたんだけど?」


 気の所為だよ。

 どうにも、ビンに入った謎の液体を見てると、怪しい感じがしちゃうから言葉を間違っただけだよ。


「後遺症は残らないはずだから大丈夫」


 怪しむミドリをどうにか説得をして、ミドリは魔力付与ポーションを飲み始めた。

 一口飲んだミドリは、いきなり目を見開いた。

 驚きすぎて口から零れそうになるのをなんとか抑えている感じ。


「……んんっ!? ……ゴホッ……!」


 なんとか、我慢をしたものの咳き込んでしまった。


「大丈夫?」


「ゴホッ……、ん、うん。大丈夫」


 ミドリは答えて私を見た。

 そう、私を見た。目があった。


「ハルが見えるよ」


 ミドリの目が潤んでいる。

 それだけだった。それで十分だった。



 さて、ちょっとしたことで時間を消費してしまったけれど。

 ここからが本題だ。

 ミドリは私を見ることができた。

 つまり、この魔力付与ポーションを飲むと私を見ることができるという答えが得られた。


「それじゃあ、私はこれを料理に混ぜて、カナちゃんに渡せばいいのね」


「そう。後のことは私に任せて」


「了解。ハルのことは信じてるけど、無理はしないようにね」


 一応、悪霊と戦うことになるんだよね。

 魔力付与ポーションはあくまでも私を見えるようにするだけ、悪霊退治は聖水を使う。

 聖水は振りかければいいらしいので、カナが私を認識したら振りかけるつもりだ。

 まぁ、品質も高いしあんまり心配はしていないんだけど。


「変なフラグ建てないようにね。ハルは最近Web小説みたいな感じなんだから。私が作者だったらここで一山持ってくるよ」


 その発言が既にフラグでは?

 いや、まぁ、用心はしておこうと思う。

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