第24話 殺虫爆弾
アトリエに戻り、ベルに目的の花を見つけたこと、それに大量の蜂が群がっていたことを話す。
「オオスズメバチ……ですか。やっかいなやつですね」
「だよね。あの数はちょっと……」
大きさもそうだけど、何よりあの数は驚異的だ。
10や20じゃ済まないかもしれない。
「オオスズメバチは火の魔法を使って退治するのが一般的です」
「まぁ、虫だしね。火に弱そうなのはなんとなくわかる」
有名なゲームでも、虫タイプの弱点に火があったかな?
「でも、火はちょっと厳しいかなぁ」
周りの木はもちろんだけど、花が燃えちゃうと意味がないし。
火を使うなら考えて使わないと。
「この辺りの木は燃えづらい木ではありますけどね。仮に葉っぱに引火しても燃える前に消えるでしょうし」
そうなんだ。覚えておこう。
「でも、まぁ、火は最終手段かな」
そもそも、目的の花が燃えちゃったら元も子もないわけだし。
「それよりもなんか……こう、蜂だけ一網打尽にするようななんかがあればいいんだけど」
「そんなのがあったら苦労しません」
だよねぇ……
日本だったら、蜂駆除業者みたいのを呼んでやってもらうとかだし。
そういえば、私の家に巣ができたことはないけど、近所は巣ができたとき呼んでたのは見たことがあったっけ。
防護服を来てなんかスプレーみたいのを噴射してた気がする。
……その真似をすればいいのかな?
「世界によってレベルの差があるってことは、地球で効果的な道具はこっちだともっと効果的なのでは?」
「聖石の話ですか?」
「いや、武器の話。地球だと殺虫スプレーってのがあるのよ」
種類は色々とあるけれど、蜂用のやつもあった気がする。
なくても、飛んでる虫全般に吹きかけるような殺虫スプレーとかでも、こっちだとかなり効果なんじゃない?
「なるほど、その殺虫スプレーでオオスズメバチを退治するわけですね。それなら魔物だけ倒せるかもしれません」
「多少花にかかっても、すぐさま枯れるわけでもないでしょうしね」
うん。なんかいけそうな気がする。
あとの問題は……殺虫スプレーの距離とかかな?
スプレーって言っても、せいぜい1メートルくらいなものじゃないかな?
あの蜂の大群に近寄って1メートル。他から襲われたら大変だ。
できれば遠くからなげて、爆発するような形がいいんだけど。
「でしたら、スライムの皮を使って爆弾をつくるのはどうですか?」
悩む私にベルが簡単そうに提案してきた。
「スライムの皮を使った爆弾? どういうこと?」
「そのままですよ。スライムの皮の中に爆発物、ここだとその殺虫スプレーの気体を入れて投げるようなものです」
風船みたいな感じかな?
「スライムの皮は内部からの圧力は結構耐えられますので、ナイフかなにかを投げて爆発させると結構な範囲に中のものが広がりますよ」
やっぱり風船だね。風船に針を投げる感じのやつを思い浮かべた。
確かにそれだったらいけるかも?
「あ、でもそれって、私にまでその殺虫スプレーかからない? 虫用だけど、人体にもあんまりいいものじゃないんだけど」
口から吸ってもやばそうだし、目に入るのも危険な気がする。
「それなら大丈夫ですよ」
事も無げにベルが言う。
「えっ? なんで?」
「だって、マスターさん、幽霊じゃないですか」
あ、そうね……
すっかり忘れてたよ。
どうしても、自分が幽霊ってこと忘れて身体の心配とかしちゃうね。
ともかく方針は決まった。
地球で殺虫スプレーを入手、それとスライムの皮を使って殺虫スプレー爆弾を作る。
それでまた明日あの花のところまで行って投げる。
やることは単純だね。
花さえ手に入れてしまえばあとは魔力付与ポーションを作ってカナに飲ませるだけ。
早ければ明日には決着つくかもしれない。
穴がないようにちゃんと考えないとだね。
夜になり、今日も地球に帰り、ミドリに連絡を取る。
だけど、今日は神社の裏までは行かずに、私の家の前まで来てもらうことにした。
『今日も来たよ。買い物に行くから私の家の前に集合ね』
メールを送ってミドリの到着を待つ。
5分と経たずにミドリがやってきた。
「ミドリ!」
声をかける。
ミドリは一瞬ビクッとした、周りを見回し、スマホをいじる。
メール?
『お待たせ。ひと目もあるからちょっと声は出せないけれど』
あー、そう言われればそうね。
ここでミドリが私に話しかけてきたら、傍から見れば危ない人だ。
しかも、話しかけてるのが死んだはずの私相手。病院連れて行かれてもおかしくないね。
「了解。私の方は念話の魔石使うことにするよ」
『それでいいよ。それで、買い物ってどういうこと?』
私は、思いついた案とオオスズメバチのこと。
それと、それを退治することについて話す。
『なるほどね。カナに魔力を付与するってのはよく考えたね。落ち着いたら私にもやってほしいくらい。私も魔法使えるかもだし』
「まぁ、落ち着いたらね。今は蜂駆除用スプレーを買いに行こう」
『うん。その手のやつなら。駅前にあるペンギンのお店でいいかな』
ペンギンのお店、驚愕の安さが売りのお店だ。
まぁ、たしかに、あそこに行けばありそうな気がする。
「あ、それとこれ渡しておくね。ちょっと足元失礼」
私は先程ミドリを待つ間に探しておいた私の財布をミドリの足元に置く。
一応、周りに誰もいないことを確認しておいた。
『ハルの財布? お金くらいなら出すのに』
「いいのいいの。どうせしばらく使う予定ないしね。それに私じゃこっちで買い物できないし持っててもらった方がありがたいよ」
幽霊がお金を払って買い物。
うん。無理。
ミドリは少し迷った様子だったが、素直に私の財布を鞄に入れた。
「了解。とりあえず、預かっておくから」
……この様子だとちゃんと私のから使ってくれるかわからないね。
落ち着いたら何かしらでお金を稼ぐ手段とか考えたほうがいいかもだね。
気が早すぎるかもだけど。
そんなこんなで、二人でペンギンのお店でお買い物。
無事に蜂用の殺虫スプレーを入手した。
お徳用の6本セットのやつにした。
それと、ついでということで、ライターも買っておく。
ちなみに、私はタバコを吸う人たちが使ってるあの回転させる式のやつがうまく使えない。
指が痛くなっちゃうし、なんか怖い。
なので、ライターはトリガーを引くだけで火が出る簡単なやつ。
拳銃の握る部分がないようなやつね。
これは使うかどうかわからないけれど、今後のことを考えたら簡単に火がつけれるようなものは持っておいて損はない。
買い物をした後は、二人で神社裏で明日の最終確認に勤しむ。
何か忘れていることがないかどうか入念に確認をしておく。
決行予定は明日。
まずはあの蜂の大群をどうにかしなくちゃ。
考えてみたらカナの状況を知ってからまだ4日しか経ってないんだよね。
もっと長く感じる気がするなぁ。ようやくここまで来たって気分だ。
安心はまだできないけれど、自分なりに満足の行く計画は立てられたと思う。
また明日と約束をして私は異世界に戻った。
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