第22話 幽霊特性に関して

 そして、今日もいい時間になったので地球に戻ることにする。

 今日も自宅に移動した私は、すぐにミドリを呼び出して秘密基地で合流をした。

 ちなみに、昨日あれだけ言われたので、後ろからついていくようなことはしなかったよ。

 さすがに黒歴史バラされたりするのは嫌だしね。


「それじゃあ、聖水はどうにかなったんだね」


「そう、あとは私の姿を見せる方法を考えるだけ」


 今日の議題は如何にして私の姿を見せるかというところ。

 昨日と同じく、念話の魔法と声での会話をしている。


「でも、今の所やっぱり解決策が思いつかないんだよね」


 ここのところ、毎日同じことを言ってる気がする。


「そういう魔法が必要なんだっけ?」


「そう、ベル曰く、魔法を使えればその魔法を魔石に込めるだけでいいらしんだけど……」


 私にはわからないし、ベルも知らないとすると、今の私にはお手上げだったりする。


「素材とかなら、こっちの世界で探せばってなるんだけど、流石に魔法はね……」


 ミドリは「さすがに検索しても出てこないだろうなぁ」と残念そうにしている。


「やっぱり森の外に出て探すしかないかなぁ」


 一応、武器も手に入れたことだし……

 って、あ、そうだ。


「そうそう、ミドリ。これお土産」


「うん? 何?」


 私は指輪からウルフの肉のステーキを取り出して地面に置く。

 お皿も持ってきたから、その上に置く。


「これ? 何? お皿に載ったお肉?」


「ステーキを錬金術で作ったの。ウルフって魔物を倒してその肉を使ったやつ」


 そのおすそ分けだよと手で持つように促す。

 地面に料理置くのはあんまりよろしくないしね。


「えっ? ちょっと待って、聞きたいところが多すぎて追いつかないんだけど」


 そう言いつつもミドリはお皿を持つ。


「錬金術で料理? 確かに、錬金術が台所から生まれたってなんかの漫画で読んだ気がするけど」


 そうなんだ。

 てっきり、どっかの研究者が地下でやってるようなイメージだったけど、違うのかな?


「できるみたいだよ。でも、今は具材がそんなにないから、ウルフ肉と塩だけのシンプルなやつだけど」


 結構美味しかったし。

 きっと品質上げたおかげだろうね。


「それに、ウルフって魔物……、狼? それをハルが倒したの?」


「そう、いい感じのナイフを作ったからそれでね」


「大丈夫だったの? 魔物なんでしょ?」


 どうやら心配されていた様子だ。

 まぁ、逆の立場ならそりゃ心配するかな。


「うん。まぁ、ナイフを投げるだけだっし。簡単だったよ」


「そんなに簡単に魔物って倒せるものなんだ……」


「うん。まぁ、近くに寄っても気が付かれていなかったみたいだし、弱いのかも?」


 正確にはナイフの性能がいいだけなんだけど。

 まぁ、簡単に倒せるってことは間違えてないからいいよね。

 ちゃんと話すと長くなりそうだし、説明しなくてもいいよね。


「えっ? でも、ウルフって狼なんでしょ? 匂いとか気配には敏感な気がするんだけど」


 犬の嗅覚は人の何千倍だっけ? 近くに寄ったら気が付かれそうなもんだけどね。


「私が幽霊だから匂いとか気配とかないのかも?」


「そういうものなの?」


「状況証拠的に、そうとしか思えないね」


 ウルフに気が付かれないととすると、あそこまで簡単に近づけたのも納得だ。

 チートナイフの性能もあるけど、私自身の性能のおかげでもあったんだね。

 しかし、何かが引っかる。何か忘れているような気がする。


「幽霊としての特性ね? 姿が見えなかったり、匂いがなかったりするのかな? 他はどうなんだろうね」


「持った物が消えたり? 今のところは私の想像する幽霊だけども」


 ミドリとちょっと検証はしたけど、まだまだ検証不足って感じかな。


「ベルにももう少し詳しく聞いてみようかな」


「うん。それでいいんじゃないかな。私も気になるし」


 明日も帰ったらベルに相談だ。

 なんか、これも日課になりつつあるね。

 こう、こっちの世界からベルに連絡取れたらいいのにね。

 世界間相互通信、電波なんて繋げないよね……


 その後は、特に話の進展はなく昨日ミドリに頼んでおいたモバイルバッテリーを受け取り、異世界へと帰った。




「ベル、私以外の幽霊に会ったことがある?」


 翌日、ベルに幽霊特性について聞いてみることにした。


「なんですか? 唐突に」


「いや、そういえば、私って幽霊だけど、どういう存在なのかイマイチわからないから、知りたいと思って」


「あー、そういえば、マスターさんの世界だと、幽霊って一般的なものではないなんでしたっけ?」


 うん? 一般的……ではないね。そもそも、いるかいないかわからない?

 私自身、こうなるまで信じてなかったし。


「ってことは、こっちだと当たり前にいるものとされているわけ?」


「そんな感じですね。前にお話した悪霊のお話とか」


 そういえば、そうね。

 カナに憑いてるという憎き悪霊。


「ああいうのってこっちでもいるわけ?」


「そのとおりです。こっちの世界だと、魔物として扱われますね。『レイス』って言います」


「『レイス』ね。名前が付いちゃうくらい当たり前ってことね」


 曖昧なものに名前はつかない。

 逆に言えば、確定しているものには名前があるのだ。


「もっとも、マスターさんくらいちゃんとした幽霊はいませんけどね。普通はもっと揺らいでいるものですよ」


 魔力がないから他の人を取り込もうとするんだっけ?

 私自身は神様にもらった大量の魔力があるおかげでそういうことがないのかも?

 魔力沢山もらっておいてよかったね。


「あ、そうそう、それでそれでその幽霊についてもうちょっと詳しく聞きたいんだよ。私自身、そういう存在になってよくわかってないし。どういう特性なのかが気になる」


「いいですよ。悪霊についてはお話しましたので、一般的にレイス、幽霊と呼ばれるもののがどういうものかについて」


 ベルが説明した幽霊の特性は以下の通り、


 1.魔力の弱い生き物には見えない

 2.聖属性の魔法に弱い

 3.魔法に長けている


 他にもあるけれど、この3つが一般的なのだそうだ。


「なるほど? じゃあ、ウルフは私に気がついていないみたいだったのは魔力が弱いせいなのね」


「そうですね。通常のウルフですと、幽霊を感知するのは難しいでしょう」


 納得した。

 そして、昨日から引っかかっていた疑問にも思い当たった。


「そっか、あのでっかい狼は明らかに私を追ってきてたし、それは魔力が強かったってことなのね」


 そう、こっちの世界に初めて来た時に追いかけられた狼。

 あれは、ウルフと違って明らかにこっちを認識していた。

 その差は魔力量にあったわけか。


「魔物が大量に魔力を持って変異種になったということでしょうね。逆かもしれませんが」


 どちらにせよ。あの変異種のウルフは大量の魔力をもっていたと。

 納得した。


「逆に言えば、魔力が多い人ならレイスが見えるってことね……」


「ですね。基本的にレイスの討伐は魔法使いがやっていましたし」


 ふむ、なるほど、なるほど。

 ここまでの話を聞いて、私の頭に一つの案が浮かんでいた。

 今まで私は、どうにかして私の姿を実体化させるような魔法を探すつもりでいた。

 つまり、私自身をどうにかしようとしていた。

 でも、逆転の発想だ。


「カナに私の姿を見せる能力を与えちゃえばいいんだ」


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