第19話 錬金術で料理?
体感時間にして3時間ほど練習に打ち込んだかな。
たまに、失敗はするけれども、ミスをしない限り光で溢れて目がやれることもなくなってきた。
「ふー、そろそろ、休憩でもしようかな」
途中、疲れてリビングから持ち込んだ椅子から立ち上がって軽く伸びをする。
特に疲労感とかはないんだけど、なんかじっと立ってると疲れた気がするよね。
「そうですね。かれこれ5時間近くひたすらやっていましたので」
体感時間って当てにならないよね。
「あー、もうそんな時間経ってたんだ。全然気が付かなかったよ」
「マスターさん、話しかけても全く反応しないので、無視をされているのかと思っていましたよ」
「ごめんて、ただ、集中してただけだよ」
もともと、一つのことに結構集中してしまう質なのでこういうことはよくあったりする。
「いいですけど、本当にマスターさんて疲れないんですね……」
「私もそこのところびっくりだけどね。身体疲れるってのはそもそも、身体ないからね」
身体ないのが、楽なのか、それとも悲しいやらはわからないけど。
まぁ、今は便利に思っておこう。
「それでも、同じことやってると、やっぱり精神的には疲れるよ」
変化があるならいいんだけど、慣れてきてしまって同じ結果になるともう駄目だ。
結果がどうなるか、みたいなワクワクがなくなってしまう。
少なくとも、今日はもうやる気になれない。
「それじゃあ、またお話でもして過ごします?」
「うーん、それもいいんだけどね。ベルと話すのは楽しいから」
素材のことや錬金術について話すのは楽しい。
知識の形態が全然違うものだったりするからね。
「でも、なんか、もうちょっといい暇つぶしみたいな方法ないかな?」
地球だったら、本を読んでたりするんだけど、
「そうだ、錬金術の本とかないの? 勉強もしたいんだけど」
「ないです。私がいますから」
あ、そうですか。
「何か聞いてくれれば答えますよ?」
「うーん、それだと、私の方には知識が溜まっていかないんだよね」
例えば、地球でミドリと話す時わからないことがあってもベルには聞けないし。
「私も一緒に行ければいいんですけれどね」
行けるんだろうか?
行ける……かもね。
ただ、それをすると、あっちに行っている時間が減る気がする。
今の状況だとそれはまずい。
「いつか、ちゃんと連れて行くよ」
「はい。楽しみにしています」
と、話が終わってしまった。
これでは当初の目的の暇つぶし方法がない。
「あっ、そうだ。暇つぶしで思い出したんだけど」
「はい?」
「さっき5時間って言ってたけど、この世界の時間の概念ってどうなっているの?」
例えば、1時間が70分とかだったりすると、私の感覚とずれが出る。
そもそも、普通に分とか秒とかもあるのか気になるところだ。
「基本はマスターさんの世界と同じですよ。60秒で1分。60分で1時間。24時間で1日です」
その辺同じなんだね。
「でも、時計とかはないみたいだけど」
「時計は少なくともこの家にはないですね。私は、そういう機能が組み込まれているのでおおよその時間がわかりますが」
あー、時計ないんだ。
外もそうなのかな? それで生活とか想像しづらいけど。
地球の時計のなかった頃の生活っていうと……
「明るくなったら活動開始、暗くなったら活動終了ってこと?」
「はい。そうではないでしょうか。確かめてみないとわからないですが」
そうか、ベルってそういう外の知識もないんだっけ。
でも、時間って概念あるのはよかった。
「そっか、じゃあ、ちなみに、今って何時くらいなの?」
「えっと、今は……15時過ぎたところですね。午後3時です。」
午後3時か。
昼寝するには中途半端な時間だね。
3時……3時と言えば、午後のおやつかな……
お腹は減らないけれど、甘いお菓子とか食べたくなってきた。
「ねぇ、ベル。食料もあるって話だけど、甘いものとかあるの?」
「甘いもの……ですか? 砂糖とかですか?」
砂糖、いや、たしかに甘いけどさ。
「そういうのじゃなくて、クッキーとかチョコレートとか」
「クッキーは聞いたことありますが、高級品ですね。チョコレート? とか言うのは聞いたことがないです」
そもそも、存在自体がないのか……
「砂糖はあるのよね?」
「存在自体はありますが、この家にはないですよ。高級品ですし」
「おうふ……」
どうやら、甘いものは高級品らしい。まぁ、嗜好品だしね。
しかし、そうなると、こっちで甘いものもは食べれないのか……
あっちに行ったら、ミドリにでも頼むとしよう。
「そういえば、こっちの食事事情ってどうなってるの?」
「どう……とは?」
「うーん、まぁ、甘いものが高級品ってのはわかったけど、その他は何か地球と違いあるのかなと」
ベルだったら、私の記憶を読み取ってるので、違いがわかるはず。
「そうですね。おおよそ違いはないですが……、地球のほうが食事レベルは進んでいるかと」
「こっちはおいしくないってこと?」
「こちらでは料理はお腹を膨らますものとされています」
あ、その言い方でわかったわ。
少なくとも地球の日本レベルを期待したら駄目だ。
そもそも、日本人は食に凄いこだわってるしね。
「料理のレベルもですが、野菜などの質もかなり違うと思いますよ」
「野菜の質?」
「はい、こちらでは素のままの野菜ですので。味に拘った野菜というものではありません。また、そうであったとしても高級品になります」
あー、地球の野菜とかだと、美味しくなるように研究と積み重ねがあるもんね。
そういうのがないと、質は落ちるでしょう。
「ただ、こちらの世界には魔物がいます。魔物によりますが、その肉は非常に美味しいです」
「えっ? 魔物食べるの?」
「はい。代表としては、ウルフの肉でしょうか。リーズナブルですし、それなりに安くて一般的です」
ウルフって……狼の魔物?
えっ? あの時の大きい狼みたいなやつ食べるの?
「魔物は強いほど、生命エネルギーがあり、美味しいです。ドラゴンの肉とか伝説ですよ」
ドラゴンの肉……なんだろう、見た目的には爬虫類なんじゃないかな?
トカゲの肉?
考えたこともないや。
「まぁ、ドラゴンは伝説として、一般的にはウルフとか少し高くてオークとかですね」
ウルフにオーク……
魔物の肉か……
「というか、あのウルフが一般的とかこっちの世界の人は強いのね……」
私だったら即逃げ出す。
というか、逃げ出した。
「いえ? ウルフは弱いですよ? 魔法使いなら簡単に倒せるかと」
「えっ? だって、あんなでかいんだよ?」
「そんなに大きくはないはずですが……」
うーん? なんか話が噛み合わない気がする。
「ウルフって狼のでっかいのじゃないの? 黒くて私の身長の倍くらいあるやつ」
「あー、マスターさんがこっちに来た時に見たやつですか? あれはウルフじゃないですよ?」
あ、やっぱりそうなのね。
「いえ、一応ウルフ類には属する魔物でしょうけど、その変異種かと。実際はちゃんと鑑定しないとわかりませんが」
「変異種なんてものがいるのね。じゃあ、あれが、そこら中にうろちょろしてるわけではないんのね?」
「あれがそこら中にいるようなら、とうの昔にこの世界は滅亡してます」
あ、そんなに。
やっぱり逃げて正解だったっぽいね。
「ウルフは、マスターさんの世界の大きめの犬と対して代わりはないんじゃないかと。もっと凶暴ですが」
「やっぱり、あれは例外だったのね。でも、狼の肉を食べるのか……」
それってどうなの?
動物愛護団体とかに訴えられない?
「ちなみに、錬金術を使えば料理もできますよ?」
「錬金術で……料理?」
ちょっとイメージができない。
錬金術って薬とか金属とか扱う術じゃないの?
「肉を素材として、加工すると思っていただければわかりやすいかと」
イメージしてみる。
肉が素材、調味料、塩とかを入れる。
魔法陣に置く(鍋に入れる)。
魔力(熱)を注ぐ。
あれ? 割とあり?
「うん。でっかい魔法陣が鍋代わりってところ以外は納得できた」
そもそも魔法陣に材料入れて合成とかが不思議現象なわけだしね。
「まぁ、試してみるのが一番ですよ? ウルフならそこらへんにいますし狩ってみるのはどうですか?」
うーん、狼には若干トラウマがあるけれど、錬金術で料理ってのは気になるなぁ……
やってみようかな。
何かあっても、また逃げればいいし、できるだけこの近く回る感じで。
「でも、丸腰じゃ無理だし。武器が必要だね」
武器で狼狩り。
なんとも、異世界っぽいことをすることになった。
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