第18話 聖水を作った
聖属性の魔石が出来上がったところで、じゃあこれを使って聖水を作ろうか。
キッチンから水を取ってくる。
空き瓶もあったのはちょうど良い。
「どうせなので、聖属性の魔石も増やしておいたらどうですか? アンデッドの浄化とかもできますし、便利ですよ」
アンデッドの浄化……
まぁ、幽霊があるくらいだし、ゾンビとかあるんだろうね。
というか、幽霊もアンデッドの一種かな? お仲間さんだね。
まぁ、そういうなら取っておくことにしようか。
聖属性の魔石を複製して、複製したほうを魔法陣に置く。
一緒に水も空き瓶に入れて置く。
「水に聖属性の魔石を溶かすようなイメージしつつ魔力を注いでください」
イメージによって変わったりするのかな?
とりあえず、言われた通りのイメージで魔力を注いだ。
先程よりも少し時間がかかったが、無事に出来上がった。
出来上がったそれを手に取り、鑑定をかけてみる。
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名称
聖水
説明
聖なる力が宿った水
邪悪なモノを浄化する効果がある
品質
340
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名称も無事に聖水になっている。
説明にもこれが効果があるっぽいことが書いてある。
「聖水の完成……、これでカナは助かるのね……」
「はい。ですが、根本は除去できませんのでお忘れなく」
「もちろん」
覚えてる。
カナに私を認識させる方法。
それはまだ見つかっていないけど必ず見つける。
「でも、この聖水を使えばカナに憑いてる悪霊を祓えるんだよね? すぐにやるべきじゃないの?」
混ざってる意識の中の悪霊だけに効く聖水。
カナが憑かれてるだけで弱っていくのならば、すぐに使ったほうがいい気がする。
「いえ、それはやめておいた方がいいと思います」
ベルからストップがかかった。
「なんで?」
「聞いた限りだと、妹さんの意識ははっきりしていないですよね?」
だろうね。ずっとうつむいてたし。
「その状態だと分離がうまくいかない可能性があるのです」
つまり、
「カナがちゃんと自意識を持っている状態で、聖水を使わないといけないってことね」
「すみません。前に言っておけばよかったですね」
「うん。まぁ、いいよ。使う前だったし」
それに、そういえば、「先にそっち」云々は前にも言われていたことだ。
私も気が急いてしまった。
確認しておいてよかった。
「じゃあ、この聖水は使う時まで保存しておくことにしようかな」
いつか使う日まで。
私は、聖水を指輪に収納した。
そう遠くないといいなぁ……
あとはこの聖属性の魔石だけど……
「ねぇ、ベルこれで魔法使えたりしないの?」
念話の魔石みたいに魔力を込めるだけで魔法が使えたりしないもんかなと、ちょっとした期待もある。
「うーん、使えないことはないですが……」
ですが?
「属性付き魔石は、その属性の魔法を使えるようにするものです。聖属性であれば、浄化とか回復の魔法とかですね」
おお、回復の魔法とかできるのか。
本当にゲームみたいでちょっと憧れる。
「ですが、マスターさん、詠唱も魔法名も知らないですよね?」
「……知らない。ゲームのマネごとならできるとは思うけど」
「魔法を使うためには、詠唱を唱え、魔力を込めて魔法名で放つことが必要です」
あー、なるほどそういう世界観だったか……
詠唱必要とか面倒だなぁ……
「ちなみに念話の魔石は、それに特化するようにしているので詠唱なども必要ないのです」
簡単な魔法ですしねとベルは笑う。
ちなみに、ベルが念話の魔法に詠唱を唱えてないのはベル自身に込められている魔法だかららしい。
「つまり、このままじゃ意味がないってこと?」
「一応単に魔力を込めれば、魔力を聖属性に変換してくれます。」
なるほど。
複雑なことをやる場合は、詠唱と魔法名が必要。
「ちなみに、家にある水の魔石もこれを使っています。魔力を水に変換する感じですね」
「水はわかりやすいけど、聖属性に変換って何?」
「聖属性は簡単な浄化の光みたいな感じですね。弱いレイスやアンデッドになら効果があるはずです」
「なるほど、じゃあ、試してみようかな」
「あ、ちなみに……」
ベルが何か言い出すのと、私が魔力を込めるのは同時だった。
私が魔力に込めた瞬間、視界が真っ白になった。
「きゃっ!?」
まるで、真っ暗な中で急にライトを当てられたみたいに、前が見えない。
ライトどころじゃない、太陽を見てしまったくらいの光量。
目が失明してしまう。
反射的に目をつぶった。
ごとん
下に何かが転がる音がして、光が収束していく。
手にも感触がないし、どうやら、びっくりして魔石を落としてしまったみたいだ。
光が完全に収束して、ゆっくりと目を開く。
視界が歪んでいるけど、どうやら失明はしていないようだ。
床には魔石が転がっていた。
私は呆然とそれを見つめる。
「今のは……なに?」
思わずつぶやいてしまった。
答えはベルから帰ってきた。
「魔石から放たれる魔法の威力は、魔石に込められた魔力と使う時の使用魔力によります」
「つまり……?」
「マスターさん、魔石を作る時に魔力込め過ぎです! それに今も魔力込め過ぎです!」
「そんなこと言われても、普通にやっただけなんだけど……」
「マスターさんの魔力量自体とんでもないので、少しの量とだけ考えてもとんでもない量になるのです!」
1万の10%と100の10%は違うみたいなもんかね?
「なんですか今の魔法は! この家の外にバリアがあるからいいものの、下手をしたらとんでもない範囲を一気に浄化してましたよ!」
へぇ、バリアなんて貼ってあるんだ。
ああ、それで、あのでかい狼が入ってこれなかったのね。
「それに、今の威力だと、生きているものすら浄化してますよ!」
ベルがめっちゃ怒ってる。
いや、でも……
「そういうの先に言っておくべきなんじゃないかな?」
一応反論はしておこう。
「言う前に使ったのはマスターさんの方です!」
「むぅ……」
魔法使ってみたいという気持ちが先走ってしまったようだ。
もうちょっと確認取ってから使うべきだったかもね。
「あ、それはそうと、生きてるものも浄化できるってことは魔物にも効くってこと?」
「あの威力なら効きますが……、絶対やめてくださいよ? ほんと駄目ですからね?」
あの狼倒せるかな?
「いや、あの、ほんとやめてくださいよ。森一帯荒野にでもするつもりですか?」
あー、生きてるものって植物とかも入るのか。
「それに、近くに街とかあったら、一帯消滅ですからね?」
うん。流石にやめておこう。
流石に私も、なんの罪もない人たちを天にやるつもりはない。
「はぁ……、マスターさんはもう少し、自分の魔力に自覚を持ってください」
「はぁ……、まぁ、今のでなんとなくわかったけど」
なんたって、神様にもらったもんだからね。
世界を超えるだけの魔力って考えると、なるほどなぁと思える。
「魔力操作の練習をしましょう。ごく少量の魔力を使う練習を」
「うん。まぁ、どうせやることもないし、いいけど。この魔石を使うの?」
「あっ、ちょっと、待ってください! その魔石は駄目です! 封印です!」
魔力を込める前にベルに止められた。
「さっき、もう一つ魔石拾ってきましたよね。スライムの魔石を」
そういえば、さっきスライム2体倒したからね。
魔石はもう一つ余ってる。
「それで練習しましょう」
「これ、何の属性もないただの魔石だけど、大丈夫なの?」
鑑定でも無属性の魔石になっている。
品質も低いし。
「マスターさんくらいならばこれくらいがちょうど良いでしょう。無属性の魔石は魔力を込めるとただ光るだけです」
無属性なのに光るんだ。
「光ると言っても、輝きがますみたいな感じで、家の明かりとは別ですよ」
ああ、そういうことね。
ベルみたいな感じかな?
「ちなみに、スライムの魔石は品質も低いので通常は光もあまり出ないはずですが。マスターさんが込め過ぎたら相当光りますので」
ので?
「十分、注意しつつ練習しましょうね?」
ベルの言葉にはなんとも言えない迫力が込められていた。
……さっきみたいのは、私も嫌だから頑張るとしよう。
結局の所、気を抜いて魔力を込めすぎて、光で目が見えなくなる。
みたいなことを何度も繰り返してしまうのであった。
うん。1万から1%って例えたけど、これ1億から1%のが正しかったかも?
1億から10取り出すのって難しいよね。
魔力操作の練習は今後も続けていくことになりそうだ。
余談。
「ちなみに私も幽霊だけど聖属性の魔法で浄化されないの?」
「マスターさんを浄化できるくらいの魔力が込められていれば可能性はありますね」
「なるほど?」
「伝わっていないと思いますので細く言いますが、その必要魔力量はこの世界の生物すべて浄化するくらいに等しいかと」
「世界の命と同じ……。それってほぼ無理ってことでは?」
「そういうことです」
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