第17話 複製はチートだった

 昨日と同じく、日の出とともに目を覚ました私は、地球での出来事をベルに話していた。


「それで、これがその聖属性の石なんだけど……」


「………」


 ベルの反応がない。


 ベルは表情とかないから感情読めないんだよなぁ……

 反応がないと困ってしまうね。


「ベル?」


 返事がないので、声をかけてみた。


「はっ? どうやら私気絶していたようでございます」


 気絶とかあるんだ……


「何やら、ありえない物体をみた気がして……」


 あー、ベルからしたら、これはありえない産物なんだね。


「しかし、残念ながら、ありえてる産物なんだよね」


「なんと!?」


 自分でも確認するように鑑定を開く。

 鑑定結果は昨日向うで調べたものと同じだった。


「いや、しかし、品質100%超えるとか……、どうなってるんですか?」


「いや、私に聞かれてもわからないよ」


 むしろ私が聞きたいくらいだ。

 そういえば、ミドリが何か言ってたっけ?


「ミドリ曰く、世界のレベルの違いが関係しているんじゃないか? ってことだけど」


「世界のレベル? なんですかそれ?」


 ミドリの考察についてベルに話してみた。


「あー、なるほど……、世界のレベルというのは新しい表現ですね……」


「だね。でも、筋としては通ってると思うよ」


 世界が成長するという概念。

 いい線はいってる気がする。


「流石の私も別世界のことはわからないですからね。ただ、聞いた限りではあってもおかしくないかなぁと」


「実際のところは、神様にでも聞かなきゃわからないかね」


 私をこの世界に移動させた神様。

 もう会うことはないと思うけど、聞けるもんなら色々と聞きたいね。


「まぁ、いいや。大事なのはこれで目的の素材が手に入ったってこと」


 気を取り直して鑑定の画面を閉じる。


「これで聖水が作れるんだよね?」


「はい。全く問題がないと思います。その聖石と魔石で聖属性の魔石、そこからさらに水と錬金して聖水ができます」


「うん。だったら、残りは魔石と水だね」


 魔石はまたその辺りのスライムを倒せばいいかな?

 水はどうしよう……川とか探さなきゃかな?

 あるかもわからないもの探すのは面倒だなぁ。


「ねえ、ベル。水とかこの家にあったりする?」


 ダメ元で聞いてみる。


「ありますよ?」


 あるんかい。


「前にも言いましたが、この家はマスターとなった人が快適に暮らせるように作られてますので。もちろん水も出るようになってます」


 あー、そういえばそんなこと言ってたね。

 私は幽霊だから必要ないけど、普通だったら生きるのに水は必要だもんね。


「水が出るってことは、どこかに川があるとか?」


「いえ、リビングの台所に水の魔石の蛇口がありますので、水の魔石に魔力を込めれば水が出るようになっています」


 そんなのあるんだ。


「水の魔石なんかもあるんだ」


「単に魔力を水に変換するだけ簡単なものですけどね」


 それで十分。


「あ、それと、ついでだから話しておきますと、他にも色んな魔石がありますよ。暗くなった時用に光の魔石とか」


 なんか色々と付いてるんだね。

 うん。


「その辺りの話し全部詳しく聞かせてもらおうか」


 そういうのはもっと早めに言うべきじゃないかな?

 そんなこと思いつつ、ベルから話を聞いた。


 結論。

 この家は、いたるところに魔石が込められていることが判明。

 冷蔵庫はあるわ、料理用のコンロがあるわ。なんだったら食料もあるらしい。

 電気が通ってないってだけで、地球の家とほとんど同じくらいのことができそうだった。

 残念なのは家に備え付けということで、魔石だけ取り外したりはできないってこと。

 火の魔石とか役に立ちそうなんだけどなぁ……



 とりあえず、水は簡単に手に入るということがわかったので、まずはサクッと聖属性の魔石を作ることにしよう。

 これまた、昨日と同じようにスライムを倒して魔石2個ほどを手に入れた。

 特にトラブルなどもなかった。

 スライムって結構そこら中にいるんだね。

 すぐ近くに2匹もいたので両方とも倒しちゃった。


 さて、それじゃあ聖属性も魔石を作っていこうかな。

 じゃあ、早速聖石を魔法陣に置く……

 と思ったんだけど、なぜかベル「あっ……」っと悲しい声を上げた。


「何?」


「あ、いえ、せっかくの高品質の素材なのに、もったいないなぁと思いまして……」


 もったいない?


「黒ランクの素材は世界に一つだけというくらいには貴重なので、あ、この世界では……ですが……」


 これあっちの神社だったら、そこら辺にいっぱい落ちてたんだけどね。

 正直、使ってもまたすぐに手に入るし、私的にはもったいない感はない。

 それにこれは必要な作業なのだ。


「素材を複製する能力とかあれば良かったんですけどね」


 ベルがつぶやく。

 素材を複製する能力……


「いや、普通に持ってるじゃん私」


 複製の魔法は、自分を複製するだけじゃない、他の素材とかも複製できるんだった。

 前にミドリに複製したポーション渡したりしてたしね。


「そうでした! マスターさんは神様にもらってたんでした! さすがマスターさん!」


 何か褒められた。

 なんか嬉しそうだし、よっぽど素材がもったいないとでも思ってたのかな。


「いや、まぁ、複製使うのはいいけど、複製した素材で錬金とかできるのかな?」


「うーん、さすがのワタシも、複製の魔法とか初めて聞きましたのでなんとも……」


 まぁ、駄目だったら、元の素材使えばいいか。

 それに、複製したほうを使えるってなれば間違いなく便利だしね。


 聖石に複製の魔法をかけてみる。

 特に問題もなく、石が2つに増えた。

 見た目もまったく変わらない。


 あれ? そういえば、前にポーション増やした時はもっと魔力持っていかれたような?

 素材によって変わったりなのかな?


 複製した石に鑑定をかけてみる。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 名称

 聖石(複製品)

 説明

 石

 神聖な場所に長く在るため聖属性が染み付いた

 複製の魔法により複製された複製品

 品質

 256

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 名称が聖石になってる。それに複製品ってついてる。

 これは、多分、私が聖石って認識したせいかな?

 品質とかは特に変わりもないね。


 じゃあ、これを魔法陣に置いて、魔石も置いてっと。

 あとは、錬成を開始してから、魔力を込めて……はい。出来上がり。


「………」


「できましたね……」


 ……できちゃったよ。

 私の手元には元となった石がもう一つ。

 そしてもう片方の手には今作った聖属性の魔石。

 鑑定をかけてみる。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 名称

 聖属性の魔石

 説明

 聖なる力が宿った魔石

 品質

 312

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 品質も上がってる。これは魔力を込めたからかな?

 名称にも複製品ってのもない。


 複製した素材でも錬金できるんだなぁ……

 ってことは、素となる素材を取っておけばいくらでも錬金できるってことじゃん。

 神様からもらった複製能力。

 昨日ミドリが言ってた異世界小説でのお決まり。

 こういうのがチート能力って言うんだね。




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