第13話 念話の魔石を使う
「それで、これはどうやって使うの?」
出来上がった念話の魔石を手に取りつつベルに聞いてみる。
「握って、対話したい相手を思い浮かべて、言葉を考えてください。魔力は魔石自体にありますので、魔力を込める必要はないです」
ああ、そういえば、さっき鑑定した時に残魔力って項目が増えてたね。
あれがこめられてる残り魔力なのね。
100%で満タンなことはわかる。
とりあえず、実験したいんだけど、ここにはベルしかいない。
ベルで大丈夫かな?
「問題ありません、もともと私の場合、念話を使っての会話になりますし」
とのことなので、どうせなので、ちょっと距離を取って試してみることにする。
アトリエを出て、リビングを通って寝室へ。
これで声は聞こえないはず。
もっとも、考えるだけでいいって言ってから口に出さなくてもいいんだろうけど。
念話の魔石を握ってベルを思い浮かべる。
『ベル? 聞こえる?』
念じてみた。反応はすぐに返ってきた。
『はい、聞こえますよ』
耳から聞こえるのではなく、頭に直接入ってくるような感じだ。
周りの音も聞こえるし、骨伝導ヘッドホンとかに近いかな?
『よかった。無事に会話できるみたいね』
使い方も特に難しくなかったし、これなら普通にミドリとも会話できるだろう。
『そういえば、これってどのくらいの考えが飛んでるの? さっきの私の感想とか聞こえてる?』
そのあたり、握っただけで全部漏れてしまうと非常に困る。
『いえ、聞こえてませんよ。話そうと思ったことしか伝わっていないです』
そうなんだ。
それなら良かった。
流石に考えを止めるとかできないしね。
『独り言みたいなやつは届かないってことでいいのよね?』
『その認識であっています。もっとも、想いが強ければ届いてしまうこともありますが』
『どういうこと?』
『うーん、説明が難しいですが、例えばの話、魔物に襲われて ”助けて! ” と願ったとします』
『うん』
『そういう心からの願いみたいなものは、指定なく色んな人に届いてしまいます』
助けて、なんて切実な思いだからね。
わかるようなわからないような?
『まぁ、普通に会話している分は問題ないと思っていただければ』
まぁ、そういうものだと思っておこう。
『じゃあ、距離は? これ例えば、私が向うの世界に行ってもベルと会話できる?』
『距離は魔力の容量によりますね。遠ければ遠いほど魔力を消費します。さすがに、世界超えは無理かと……』
『なんだ、残念』
あっちでわからないことをベルに聞ければ便利だったのに。
『そういえば、残魔力は%表記なんだね。実際にどのくらい使えるかとかわからないの?』
どのくらいこもっていて、どのくらいの行動にどのくらい消費するのかわからないと、%表記されてもわからない。
『うーん、実際にどのくらい残っているかの数字化は難しいですね……、しかし、その魔石にはかなりの魔力がこもっているはずですよ?』
かなり……ね、便利な日本語だこと。
『実際使って見てないとわからないってことね』
『そうなりますね。ちなみに、話しつつでも鑑定で見れますよ』
あ、そうなんだ。
もう一回鑑定を使ってみる。
『……100%のままね』
『この距離では大した消費にならないかもしませんね』
うーん、できればもう少し実感が欲しいなぁ。
せめてどのくらいで減るのか知りたい。
『ベル、1%減るのにどのくらいかかるかみたいからちょっと付き合って』
『了解しました。いくらでもお話ください』
その後、携帯電話を出して時間の経過だけを見つつ、話を続けた。
途中立ったままでいるのも疲れて、ベッドでゴロゴロしつつ、3時間くらいは話してたはず。
しかし、残魔力は1%も減らすことができなかった。
『うん。諦めたわ……』
ちょっとやそっとじゃ減らないってことがわかったから良しとしよう。
次はもうちょっと遠い距離で実験したい。
「そういえば、ベルの方は残魔力大丈夫なの?」
ベッドでゴロゴロするのも飽きたので、アトリエに戻って、ベルと直接会話をすることにする。
やっぱり話せるなら直接顔を合わせたほうがいいよね。
ベルは無機物だけど。
「ワタシの魔力も全く減っていませんね。もっとも、その魔石よりも膨大な魔力がこめられているはずなので当たり前ですが」
別に会話以外しているわけでもありませんし、とのこと。
強いて言うならさっき移動してたくらいか。
「あれもさほど魔力を消費するわけでもありませんし。朝も言いましたが、10日くらいに1回で十分かと思いますよ。もしかしたら30日に1回でも大丈夫なくらいかと」
ふむ、
「ベルは自分の残り魔力わかるの?」
「いえ、細かな数字までは、減ってきたような感覚があるだけです」
そういうえば、私も向こうで減ってきたみたいなときにフラっとしたっけ?
あんな感じなんだろう。
「私が鑑定すればわかる?」
「あ、そうですね。マスターさんならわかるはずです」
じゃあ、見てみよう。
鑑定を使ってみる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名称
ベル
説明
錬金術ガイドのクリスタル
残魔力
100%
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
情報が少ない!
いつもの品質とかもないし。
結果をベル自身に伝える。
ちなみに、この透明ディスプレイみたいなやつ、私にしか見えないらしい。
「あー、おそらく、錬金術知識に私の情報がないので、マスターさんの考えだけになってしまうので少ないのではと」
付き合いが長くなれば説明も増えますよとのこと。
まぁ、結構な時間会話したけど、あんまり詳しいことは聞いてないからね。
そもそも、ベル自身わからないらしいし。
「まぁ、残魔力だけでもわかってよかったとしておこうか」
あ、そうだ。
「これ私自身の魔力もわかるのかな?」
「はい。問題ないと思いますよ」
自分の情報見るのってなんか恥ずかしいよねけど、使ってみる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名称
ハル
説明
幽霊で錬金術師
残魔力
100%
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
情報が少ない。
うん。多分だけど、さっき自分の情報見るの恥ずかしいとか思ったせいだと。
名称も、なんで名前だけ? 名字は?
説明も、それ説明になってないでしょ。
いつの間にか錬金術師になってるし。
しかも、幽霊って……
残魔力だけはきちんと出ているからまぁ、いいけどね。
「うーん、やっぱり絶対値で表示して欲しかったなぁ」
「まぁ、そういうものだと思って諦めてください」
なんとか改良できないものかと、何度か試してみたけど、やっぱり駄目そうだった。
頑張って消費量図ろう。
ベルと会話をしたり実験してたりしたら夜になっていた。
日が落ちた時の感覚からすると8時くらいかな?
地球と同じかはわからないけど。
流石に寝るにはまだ早い気がするかなぁ。
でも、やることもない。
ベルと話すのが退屈なわけではないけど、それでしか時間潰せないのもなぁ……
なんか向うから持ってきたいなぁ。
暇つぶしになることなにかないか考えておこう。
ひとまず今は、やることもないので、複製で向こうに戻ることにした。
私の考えが正しければきっと時差は半日くらいだと思うんだけど、8時だったらきっとミドリは起きているはず。
昨日見た日付からすると学校も休みだし、きっと話せるでしょ。
私はベルにお休みの挨拶をして、ベッドに向かう。
ベッドの中で、複製の魔法を使った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます