第12話 鑑定スキル
アトリエに戻って、ベルの前でスライムを出した。
「無事に倒せたようですね」
「さっくりとね」
実際、弱いとかそういうレベルじゃなかった。
さすが、いろんなゲームにおける最弱モンスターなだけはある。
「それで、これどうすればいいの?」
魔石を取り出すのはなんとなくわかってはいるけど、一応聞いてみる。
ぺしゃんこにはなってるけど、できるだけ触りたくない。
うん? いや、ひょっとして私すり抜ける?
うまくやれば魔石だけ取り出せるのかな?
「まずは、魔石の取り出しを……と言いたいところですが、その前に」
「うん?」
「先程、探知の説明はしましたが、"鑑定"の方の説明はしていませんでしたので、先にそっちをやりましょうか」
あー、そういえば、そのほうが都合がいいからって流されてたっけ。
「"鑑定"ね。言葉の意味どおりなら、価値とかを測る能力だと思うけど」
「大体そのとおりですね。ただし、錬金術に特化しているという特徴はありますが」
「錬金術特化?」
どういうことだろう?
「まぁ、使ってみていただけると早いかと」
それもそうだ。
使い方は……
「探知の時と同じように……」
そうだと思ったので、すぐにやってみる。
"鑑定"
スライムの死骸を見つつ、心の中で唱える。
すると、スライムの死骸の前に透明なディスプレイが現れた。
アイテムリストと同じような感じだけど、書いてあることが違う。
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名称
スライムの死骸
説明
スライムを倒すことで入手できる死骸
魔石のかけらとスライム液に分解することができる。
品質
10
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なるほど、鑑定ってこんな感じなのね。
説明が説明になっていないのはいいとして、というかこうしか表現できないんだろうけど。
品質って何だろう? 10ってどうなの?
「色々と聞きたいことはあるけど……」
どれから聞いたものか……
「全部そのままの意味ですよ。一応付け足しておきますと、品質は100が最大です」
100が最大ってことはそんなに品質は良くないのかな?
「鑑定に関しては、割とそのままですのでおわかりいただけたかと思います」
「うん。まぁ、特に今聞くことはないかな」
「それじゃあ、次は死骸から魔石のかけらを取り出しましょうか」
うん。まぁ、そうなるよね。
いや、もう覚悟は決めてるし、うまくやればそれだけ取り出せそうなので試す。
何も考えずにスライムに手を伸ばす。
すり抜けた。
やっぱり、魔力まとわないと感触もなにもないね。
そのまま、魔石に手を添える。
イメージは手に魔力を覆うようにして、魔石のかけらを動かすような感じだ。
動くかな?
少し不安だったけど、無事に動いてくれた。
おっ? おー、触った感触がないのに物が動くって不思議な感覚だね。
自分がやってるからわかるけど、知らないとマジックに思える。
触ってるようで触ってないし。
まぁ、思いっきり魔法だけど。
そのまま、魔石のかけらをスライムの外に出した。
透き通った赤いクリスタル。
ただし、2つに割れている状態。
スライムのヌメッとしたやつがこべり付いているわけでもなく、つるつるだ。
「それが魔石のかけらです。鑑定してみてください」
言われるがままに鑑定を使ってみる。
先程と同じように、透明なディスプレイが現れた。
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名称
魔石のかけら(無)
説明
魔力がこもった石のかけら
割れているため、効力が低い
品質
5
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表記的にはさっきと同じなので問題ない。
けど、この(無)ってなんだろう?
「ああ、それは属性ですね。無ならば無属性ということになります」
何も言ってないけど。
「気になるところというとそれくらいですからね」
ふふっ、とベルが笑う。
まぁ、聞きたいところってそれくらいだけど、会ってまだ二日目のベルに読まれてるのはなんか複雑だ。
と、思ったけど、よくよく考えたら契約した時に色々と読まれてたんだっけ?
忘れてたけど、後でちゃんと追求しとこう。
「それで? これは確かに魔石のかけらだったけど、これから念話の魔石を作るんだっけ?」
「その前に、一度、かけらを合わせて魔石にしたほうが良いです。そのほうが効力が強くなります。」
「もしかして、品質5って割れてたせいもあるのかな?」
「それもありますが、もともと、スライムの魔石はそんなに品質がよくないです」
「それで、念話の魔石は大丈夫なの?」
作ってもすぐ壊れるとかだと嫌だなあ。
「マスターさんの魔力で補完すれば大丈夫かと。品質も上がりますよ」
そういうえば、ポーション作る時に魔力云々とか言ってたっけ。
「時間短縮になりますし、効力も上がる。いい事ずくめです!」
なるほど、それならやらない理由はないね。
とりあえず、その魔石とやらを作るとしよう。
「それでは、そのかけらを両方とも魔法陣に置いてください」
魔石を魔法陣の中心に置く。
粉々とかじゃなくてよかった。
「それで魔力を込めつつ、錬成を開始してみてください」
このあたりは一度やっているので簡単だ。
魔法陣を起動して、錬成を開始する。
「ポーションより難易度高いので少し時間はかかりますが、ゆっくり魔力を込めてください」
魔力の入れ過ぎも良くないと。
思えば、魔力使うのも慣れてきたね。
なんとなく、自分の中を何かが流れていくのが感じられるようになってきた気がする。
ただ、蛇口を思いっきり締めつつなんで凄い神経使うけど。
そのまま、5分魔力を注いでいただろうか。
突然、
ぼふぅん!
煙がたった。
だけど、今回は慌てることはなかった。
「……完成、でいいのよね?」
ポーションのときもあったし、心の準備はしてあった。
「はい。魔石、完成です!」
魔法陣の中心には一つの石がある。
ちょうどさっきのかけら同士がくっついたような感じだ。
石を手にとって見る。
これが魔石か……、つなぎ目等は見えず完全に一つの物体になっている。
錬金術の効果か、凄いね。
「そうだ、これも鑑定してみようかな」
「いいですね。品質どれだけ上がったか確認しましょう」
鑑定を魔石に使ってみる。
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名称
魔石(無)
説明
高品質の魔石
相当な量の魔力がこもっている
品質
50
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品質が10倍になってる!
「さすが、マスターさんの魔力ですね……」
ベルがちょっと呆れている感じだ。
「でも、品質50でしょ? そんなに良くないんじゃないの?」
最大は100って言ってたし、50ってどうなの?
テストとかだと、赤点ではないけど、平均点いってないくらいの数字の気がする。
「いえいえ、十分ですよ。そもそも、品質100の魔石なんてドラゴン倒しても手に入りませんし」
なるほど? 基準が分かりづらいけど、そう言われるとなかなかなのような気がしてきた
「まさか、スライムの魔石がそんなになるなんて……」
その証拠にベルは驚きを隠せていない感じだ。
うん。50は品質いいんだね。
そう思っておこう。
「これで念話の魔石作れる?」
「そりゃもう、十分です。というか、もう一回錬金術でマスターさんの魔力を足せば相当な品質になりますよ」
やればやるほど品質上がるってことか。
そりゃいいね。
真っ二つに割れたのは失敗かと思ってたけど、そう考えると悪くないんじゃないかな?
「普通は、そんなに魔力持ってないので節約するんですけどね……」
マスターさん、魔力多すぎてちっとも減ってませんね。
なんとなく、苦笑いしているような感じのベルだった。
「それじゃあ、次はいよいよ、その魔石を念話の魔石にしましょうか」
「うん。ベルが念話を付与してくれるんだっけ?」
「はい。マスターさんを通して私が付与することで念話の魔石になります」
「私を通して?」
「ひとまず、その魔石をもう一度魔法陣に置いていただけますか?」
了解っと。
魔法陣に魔石を置く。
ちなみに、魔法陣は先程のまま起動したままだ。
「次にですね。私に手を触れてください」
うん? ベルを触るってこと?
魔法陣から離れることになるけど。
「あ、そうですね。今移動しますので」
えっ?
言うが早いがベルがすいーっとこちらの方寄ってきた。
「ベル……動けるの?」
浮いてるだけじゃなかったんだ……
「この部屋の中限定ですが、動くことはできますよ」
こんな感じにっと私を一周する。
なんだろう。タイヤもないし、空気で動いてるわけでもないのに凄い不思議な感じ。
「まぁ、いいじゃないですか。ともかく、杖を持っていない手の方で私に触れてください」
なんとなく、釈然としないけれど、左手でベルを触る。
ちょっと冷たい。
「それでは少しそのままでいてください。あ、まだ錬成は始めないでくださいね」
そう言ってベルが喋らなくなる。
待っていると、何かがベルから私の体に流れ込んでくるような感覚がした。
なんか、くすぐったい。
通してって言ってたけど、ひょっとしてこれのことかな?
「なんか、くすぐったいんだけど?」
「すぐに終わりますので我慢してください」
感覚はベルを触っている手から、反対側の手に伝わっていく。
そのまま杖を伝っている感じなのかな? 。
やがて、ベルを掴んでいる手から流れ込んでくるのが止まる。
「ふぅ、念話の魔法は流し終わりました。あとは、マスターさんが魔力を込めれば完成ですよ」
やっぱりさっき通っていったのが魔法だったようだ。
「もう付与できたんじゃないの?」
「いえ、今のは素材として魔法を入れただけで、まだ混ざっていませんので」
錬成を開始するように促される。
つまり、魔法も素材になるってことかな?
見えないものが素材って凄いね。
さすが魔法。
錬成を開始する。
先ほどと同じように、ゆっくりとなじませるように魔力を込めて。
また、
ぼふぅん!
煙が上がる。
見ると、さっきと同じ石が魔法陣中心にある。
その見た目は……
「さっきと何も変わらないように見えるけど」
てっきり色とかでもつくのかと思ってたんだけど?
「鑑定を使ってみてください」
鑑定を使ってみる。
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名称
念話の魔石
説明
念話の魔法が込められた魔石
握って魔力を込めることで念話の魔法が使える
品質
60
残魔力
100%
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おっ? 名称が念話の魔石に変わってる。
ってことは。
「念話の魔石の完成です!」
無事に完成したようだ。
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