第4話 錬金術ですよ!錬金術!
流されるがままに錬金術とやらをやることになった。
本当ははここが安全なことがわかったら、すぐにでも複製魔法試したいんだけど……
そのためにはこのクリスタルが敵意がないかどうか見極めないといけない
「それで、どうすればいいって?」
「まずは、錬金術に必要な道具を用意しましょう」
緑色のクリスタル、ベルはピカピカと光りながら答える。
「先程現れた指輪がありますよね? その中に杖と素材が入っているので、取り出しましょう」
取り出しましょうと言われても、杖とか物理的に入るはずがないし……
「収納魔法で指輪に収納されています」
いや、収納魔法とか言われたところで。
「どうしろと?」
「そうでした、マスターさんは魔力のない世界から来られたんでしたっけ? でしたら、まずはこの指輪から説明しましょう」
「お願い」
「その指輪には、錬金術によって、収納魔法が付与されています。収納魔法というのは、文字通りの意味で、物体を入れたり出したりすることができる魔法のことです」
アニメの4次元のポケットみたいなやつかな? 入れる部分ないけど。
「指輪自体に魔法が付与されているので、魔力を持つ人なら誰でも使うことができます」
「魔力……そういえば神様と交渉したときにもらったっけ?」
「はい、マスターさんは、生物にしてはとんでもない量の魔力を持っていますね。ほんと、ありえない量です……」
そんな事言われても、必要だったからもらっただけだ。
それに厳密では私は
「まぁ、言っていてもしょうがないので、まずは使ってみましょうか。では、指輪をじっと見てください」
「そこに意識を集中するようにしてみてください」
集中、集中。
人差し指にハマる指輪の冷たさを感じるように集中してみる。
すると、指輪が軽く光り、その光が上方向に出たと思ったら、透明なディスプレイのようなものが出来上がった。
「うわっ、なにこれ!?」
「それが指輪の中に入っているもののリスト一覧です。SF映画とかゲームみたいでしょ?」
「あー、たしかに、幼馴染がやっていたゲームにこんなシーンあった気がする。」
個人的には表計算ソフトみたいなイメージだ。
ディスプレイは表のようなものが表示されていて、そこには、
賢者の杖 |1
薬草 |1
水 |1
ガラス瓶 |1
と表示されていた。
左が名称、右が個数かな?
このディスプレイどういう仕組になっているんだろう?
なにもない空間に光を固定するとか現代の技術じゃできなかったと思うけど。
指輪をおろしてみてもディスプレイは同じ位置に表示されている。
手を伸ばしてみるが透明なディスプレイには触ることができない。
横方向を向いてみると追従するように目の前に移動してくる。
ふむ、どうやら指輪じゃなくて、起動した私を起点として位置調整しているのかな?
「えっと、あのー、続き……いいですか?」
「え、あ、ごめん。つい気になって」
話してるときでも気になったものに集中しちゃうのはよくない癖だとは思うんだけど、なかなか治らないんだよね。
「こほん、次はそのリストからアイテムを取り出しましょう。リストの一番上に、賢者の杖というものがあると思うのですが、ありますか?」
「うん。あるね」
「では、それを"賢者の杖を取り出す"と言ってみてください」
「……賢者の杖を取り出す」
言ってみると、ディスプレイの後ろから生えるように杖が出てきた。
そのまま、地面に落ちた。
ディスプレイから賢者の杖という表記が消えていた。
杖は現代のおじいさんが使うようなやつではなく、物語の魔女が使うような杖だ。
ただ、きれいな宝石で装飾とかが入っていて魔女の杖というよりも幼馴染がやっていたゲームに出てくるような杖だった。
過度の装飾でゴテゴテという感じではなく、あくまでも飾るための装飾。
いいデザインセンスしていると思う。
だが、それよりも、
「何もないところから杖が出てきた。どういう仕組み!?」
ディスプレイもそうだけど、こうやってリアルなものが急に出てくると流石にびっくりしてしまう。
さすが魔法のある世界。
「それが収納魔法です。ちなみに、しまうときは、杖に集中して"賢者の杖をしまう"といえばしまえますよ」
杖に集中して、
「賢者の杖をしまう」
言ってみると、杖が光り、粒みたいになったかと思ったら、ディスプレイに吸い込まれた。
ディスプレイを見てみると、賢者の杖の表記が戻っていた。
「という感じでものをしまったり出したりすることが、この指輪の効果です。ちなみに、言葉に出さなくても、念じれば出したりしまったりできますよ」
言葉に出さなくてもいいのは楽だね。
意識を読み取ってくれるのかな?
「あと、取り出す位置も見える範囲であれば、選ぶことができますよ。ここに取り出す、みたいな意識をするだけです」
試しに、心の中で"賢者の杖、右手の中に、取り出し”と念じてみる。
先程とは違い、光の粒がディスプレイから現れると、私の右手の中に入り杖の形になった。
そして、そのまま地面に落ちる。
「そっか、すり抜けるんだった」
「あー、マスターさん身体がないんでしたっけ?」
杖に手を伸ばすけど、やっぱりすり抜ける。
「うん、やっぱり駄目ね」
「でしたら、魔力をまとって持ってみてください。さっきと同じように手に集中するような感じで」
軽く手に集中するようにして、もう一度杖に手を伸ばしてみる。
手に何かが触れたような感触。
おっ!?
無事に杖を持つことができた。
「持てた!」
「ちなみに、正確には手で持っているわけではなく、魔力で覆っているような感じですね。慣れれば魔力を飛ばして、物体を操ることもできるようになりますよ」
念動力みたいな感じかな?
それこそ、私が想像する幽霊みたいな感じだ。
「さて、杖も取り出せたことですし、本題に入りましょう」
「本題?」
「錬金術ですよ! 錬金術!」
あー、そんなのもあったっけ? 指輪の衝撃で忘れてた。
「それでは、改めまして、指輪に薬草と水、ガラス瓶が入っていると思いますので、取り出してください。あ、水はガラス瓶の中に取り出すような感じでお願いします。」
「わかった」
どれがどういうものかわからないので、地面をイメージして置くように取り出す。
草と水が入ったガラス瓶が現れた。
この草が薬草ね。
普通にどこにでもありそうな雑草に見える。
それと水とガラス瓶。
水って液体だけが収納されてたってことかな?
しまうときはまだしも、出すときは気をつけないと大変そうだね。
「次はそれを足元にある魔法陣の中心に置いてみてください。水はガラス瓶ごとで大丈夫ですよ」
これやっぱり魔法陣だったんだ。
中心らへんに内枠みたいのがあるからこの中かな。
「この魔法陣で錬金術をするってわけ?」
「はい、その魔法陣にモノを置くことで錬金術の素材として扱えます」
「……ちなみに、円の中に人が入っても大丈夫?」
「多分? 人には何も反応しないはずですので、おそらく、はい」
なんか、
怖いので、円の中には入らないようにしながらガラス瓶を置く。
「置いたよ」
「では、次は魔法陣を起動しましょう。魔法陣の外側の方に丸い印があると思います」
外側の方に丸い印?
ああ、これかな? たしかに魔法陣の端の方に円みたいのがある。
「これ?」
そこの前に立って聞いてみる。
「はい。それで合ってます。そこに杖を立ててください」
杖を立てる。
立てる? 杖の先割と尖ってるけど立つのかな?
まぁ、やればいいか。
言われたとおりに杖を立てるようにしてみた。
すると、
「おおっ!」
杖を立てた部分が光り始め、そこから広がるように魔法陣が光出す。
1秒程度で魔法陣全体が光りだした。
「すごい魔法っぽい!」
「一応錬金術も魔法の一種ですからね」
なんか自分の手で魔法が使えたって思うと嬉しくなるね。
「あ、ちなみに、手は離して大丈夫ですよ」
起動されると杖は固定されるとのこと。
恐る恐る手を離してみると、杖は動かなくなっていた。
「ちなみにやめるときは杖を持ち上げるだけです」
なるほど。
固定はされているけど取り外しは自由みたいな感じなのね。
「ではもう一度杖に触れて、錬金術を始めると意識してみてください」
言われたとおりに杖に触れて”錬金術を始める”と意識してみる。
すると、指輪を使った時と同じように目の前に透明なディスプレイが現れた。
しかし、先程のものとは書かれていることが違う。
素材指定? とか書いてある。
今はさっき置いた水と薬草が素材候補として出ている感じだ。
なるほどね。ここまで見ればだいたいわかる。
UI(ユーザーインターフェース)っていうのはパット見でわかるのが重要だよね。
このUIを作った人はそれがわかっている人だね。
「……という感じで素材を指定することができます」
私がUIについて考えている間にベルが喋っていた模様。
「あ、ごめん。聞いてなかった。もう一回お願い」
「ちゃんと話は聞いてくださいっ!」
怒られてしまった。反省。
見ただけでわかるとはいえ、説明聞かないのは良くないよね。
しかし、説明書は読まない。
「こほん、試しに候補の水と薬草を素材にしてみてください」
上がっていた候補の2つの素材を、素材候補から素材に変える。
自分の意思だけで操作できるのは便利だね。
素材にすると意識をすると、パッと眼の前が明るくなった。
何事?
見ると、置いた水と薬草が光る粒子に変わっていくところだった。
粒子は小さな球体に魔法陣の中心に浮き上がった。
「おお、魔法陣のときも思ったけど、これまた魔法っぽい感じね」
光り輝く浮く球体。ちょと透けてるところが現実感なくてとても良いね。
浮いているのもまた良し。
「この状態になるとスタンバイ完了です。あとは杖に触れて錬成開始と意識することで開始できます」
やってみてくださいと言われたので、やってみる。
「錬成開始」
意識するだけでできるだけど、せっかく始めてだしね。
声に出して始めてみた。
ちょっとワクワクしてる。
何が起こるのか。
………
「何も起らないんだけど?」
「錬成には時間がかかりますので……」
あー、そういうこと。
「ちなみにどのくらいかかるの?」
「作るものの難易度にもよりますが、ポーションくらいなら、1時間くらいといったところでしょうか?」
「1時間!?」
そんなにかかるの!?
「はい。これでポーションはかなり短時間な方ですが……」
「マジか……」
なんか、楽しみにしてたものの発売日が延期になったような気分だ。
ちょっと残念。
まぁ、待てばいいだけなんだけど。
「それにしても短時間で1時間ってかなり時間かかるものなんだね」
それならもっと高度なモノ作ろうと思ったらどれだけ時間がかかるのやら……
「時間を気にされるのであれば、魔力を込めて時間短縮しましょうか。込める量で時間短縮ができます」
「そういうのがあるなら先に言って」
「すみません、この次に説明するつもりでしたので」
つまり何も言わなければ1時間も待たせたと。
「では、杖を通して魔法陣に魔力を伝える感じで込めてみてください。あ、マスターさんの魔力は多すぎるので極少量でお願いします。」
「少量とか言われても、難しくない?」
こちとら魔法に関しては素人だ。
ちょっとだけ魔力込めろと言われてもやり方がわからない。
「こう、一瞬だけ右手に力を入れて下に押すような感じでしょうか? わかりますか?」
「わかりますか? と言われても、いや、まぁやってみるけど」
イメージはボタンを押すような感じ。
息を吸って、ふっ、と吐くと同時に杖を下に動かす。
ボンッ!
「わっ……!」
動かした瞬間、球体が爆発したように霧散した。
思わず、杖から手を離してしまった。
「えっ、何!? やっぱりなにか失敗した!?」
「マスターさん、落ち着いてください」
慌てる私にベルが諭すように声をかけてくる。
「今のは錬金術が終了した合図になります。中心を見てください。ガラス瓶がありますよね?」
魔法陣を見ると、さっき入れたガラス瓶が置いてある。
ただし、さっきみたいに中身が無色透明ではなく、緑色に透き通っている液体が入っていた。
「ガラス瓶に緑色の液体が入ってるね」
「それです! それが今回作成したヒーリングポーションです。成功ですよ!」
どうやら、失敗ではなく、完成したとの合図だった模様。
なるほど、
「爆発するなら先に言って!」
わかった。このクリスタル、説明足りないことが多い。
今後はきちんと段取り聞いてから色々とすることにしよう。
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