第70話 プライベート対談

 そして堂洞とのコラボ配信の後の話になるのだが、配信上では話せない内容があった。

 その内容というのが例の男、時停穿孔ペネトレイトキーパーの事だ。


 愛波の名は出さず、とあるダンジョンで偶然俺が出会ったという体で話を進めた。

 普通のPKとは一線を超す異常さがあった、と内容を簡単にまとめ、堂洞を突いてみたのだ。


 すると堂洞はどこかに連絡を取り、そして俺に時停穿孔の事をさらに聞いてきた。

 どこで見たのか、容姿はどうだ、武器の形状は、と食らいついてきてくれた。

 俺は奴がPKしている所を偶然見かけ、被害者のその後が芳しくないという話を聞いただけだと前置きし、そいつの特徴を伝えた。


 内容としては国家機密に関わる事なので、ここからは話すことが出来ない、とか言われて話を終わらせられると思ったのだが、案外そうはならなかった。


 もしかしたら俺が被害者の関係者かもしれないと、勘付いていたのかも知れないが……。

 

「君はその男と戦ったのか?」


 時停穿孔の話をし、特徴などを伝えた後に堂洞は言った。


「戦ってはいない。興味がないと俺に言い放って立ち去って行った」


「そうか……だがなぜ、君はその話を私にしたのかね?」


「なぜ、か。なぜだと思う? 俺はPKKだ。あそこまで舐められてはいそうですかと、大人しくしていると思うのか?」


「ただそれだけの理由ではあるまい? 君は何かを知っている、そしてそれを確かめる為に、私にその男の話をした。違うかね?」


「考えすぎだぜ大臣さん。俺はただ人を食い物にしているゴロツキ共が気に入らないだけだ」


「ふむ……そうか。君は過去に何かあったのだな。それだけは分かる。例えるならそうだな、ヤクザかチーマー、いわゆる悪党共が君の大切な人をひどい目に合わせた、その復讐の為に手当たり次第に悪党を狩る映画のダークヒーロー的なポジションかね」


「ふん……妄想が得意なようだな、大臣よ。それでどうなんだ? その男は政府側も認識しているのか?」


「勿論だ。その男は特異危険人物に指定されている。彼による被害は人対人のデスペナではなく、より重篤なものとなる。表立っての公表は今の所控えているが、自衛隊や警察の協力の元に各地のダンジョンを捜索している」


「なぜ公表しないのだ? 公表すれば探索者達も対策や協力をしてくれるとは思わないのか?」


「恥ずかしい事だが……社会的体裁というくだらない不合理なものだよ。保科の幻影とでも言おうか。無論それだけではないがね」


「くだらないな。そのせいで被害者は増えているのではないのか」


「耳が痛いね。だが彼の犯行が公表されるのも時間の問題だと認識しておいてくれたまえ。そして君のおかげで犯人の容姿や特徴を知る事が出来た。これで調査も進む事だろう。協力に感謝する」


「待て。話は終わっていないぞ? この俺にもその調査に一枚噛ませて貰いたい」


「ふむ……君が言う所の舐められたままでは終われない、と?」


「そういう事だ」


「そうか。だが今ここで即断は出来かねる。少し時間を頂きたい所だな」


「……不服だがいいだろう。この俺を戦力として考えれば、どうすべきかは分かるはずだ。信じているぞ堂洞大臣」


「わかった。それではこのあたりで終わらせてもらうが、いいかね?」


「構わん。有意義な話が出来た。礼を言う」


「それはこちらも同じだ。ではまた」


 このような形でプライベートでの対談を終えた後、猛烈な疲労感が俺を包み込んだのは言うまでもないだろう。

 これで政府側と正式にパイプが繋がれば、きっと今よりも奴に近付けるはずだ。

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