第35話 まなみって誰
「はわわわわ! どうしよう! 祈だって! い・の・り。ぎゃああ!」
部屋に戻った私は枕を顔に押し付けながら、ベッドの上でぐるぐるばたばたと暴れまわっていた。
自分でも何であんな事を言ったのかわからない。
いや、分かってはいる。
ただ名前で呼んで欲しいという自身の我儘であり欲だ。
ただ、タイミングも空気も読まずにぶち込むつもりじゃあなかった。
でもでも、そのおかげで私もヴォイドさんのフルネームを知れて、尚且つ下の名前で呼んでもいいだなんて……!
「これはもう実質カップル成立なのでワ?」
それにコノミが口走った『まなみ』という名前、あれはいずれ出来る二人の子供の名前候補なのでは?
「ってそんなわけないでしょ私の馬鹿……でも誰なんだろう、まなみさん。人の名前だよね? 下の名前で呼ぶって事は親しい間柄……は! まさか元カノ!? 元カノの事が忘れられなくて!? くおおお! 悔しい! それは悔しいゾィ!?」
さっきベランダで話した時、それとなく聞こうと思ったのにコノミが爆弾投下するから聞きそびれちゃった。
「……コノミ」
むふふ……!
呟くだけでニマニマしてしまう、これはよろしくない。
何度も呼んで慣れさせなければなるまいて。
頑張れ私、レベルアップして強くなってるんだからきっと大丈夫。
パンパンと両頬を挟むように叩いて気分を一新、アロマを焚いてリンパマッサージをして、帳簿を付けてから寝よう。
最近動画も更新していないから、そっちも編集しないと。
でも編集は明日やろう、明日は何の予定も無いし、駅前のドーナッツ屋さんとスターライトバックスに寄って、それから家で編集しよう、そうしよう。
「ん。相変わらず素敵な香り。それにしても……コノミ、動画出てくれないかなぁ」
アロマを焚いて一息。
コノミが出てくれたらきっと動画の再生数も跳ね上がる。
掲示板を見てみてもコノミ関連のスレが散見するし、すぐに登録者数も伸びるはずだ。
「あ、そだ!」
私は手元にあった携帯を手に取り、コノミにメッセージを送る。
いのりーぬ:ねぇねぇコノミ! レベリングの様子録画してたんだけど、コノミの戦闘シーン切り抜いてチックタックに上げていい?
ヴォイドさん:いつの間に……w いいけど顔は隠して欲しい
いのりーぬ:ありがとう! 顔は勿論隠すよ!
「これでよし!」
パワーレベリング中、後で見直す為に自分たちの戦闘を録画していたのだけれど、その中でたまーに、本当にたまーにコノミの戦闘場面を撮り続けていた事がある。
まぁ、ほぼ毎回だけど数分間だけだし、翆ちゃんや瑠璃ちゃんに送ってる動画はその部分をカットしたやつだし。
問題はないよね! うん!
よーし! 明日編集して投稿しちゃおっと!
そうと決まれば早く寝ないと!
「今日は良い夢みれそう! あ、そういえばコノミにツナ缶使った料理作ってあげなきゃ!」
るんるん気分でリンパマッサージを終え、寝る前のスキンケアをして、私はそのまま眠りについた。
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