第16話 デスペナルティ
翌日、俺はいつも通りダンジョンに赴き害虫であるPK共を駆逐して回っていた時の事。
何やら視線を感じて振り返ると、岩陰で男女の二人組がこそこそとこちらを見ていた。
「……何だ」
俺はおもむろにブラックサレナの銃口をそちらへ向けた。
殺意は感じられないので敵ではないようだけれど、ニコニコ愛想笑いを浮かべて急にナイフでグサリ、なんていうPKもいる。
念の為だ。
「ひっ! う、撃たないでくれ!」
「私達は敵じゃあありません! お話を聞かせてくれませんか!」
「話……? 回復薬が尽きたとかか?」
「ち、違います」
「じゃあ何だ」
ブラックサレナの銃口を下げると、男女は怯えながらも岩陰から出てきた。
身に着けている者からすると、両方とも近接のようだ。
長剣の女と――恐らくガントレットが武器の男。
防具からして中級か上級、ここは中級の後薬園ダンジョンだからまぁ、妥当な所か。
「あの、お兄さん。ジャスティスさんですよね」
「動画で見ました! どうしてダンジョンで銃使えるんですか?」
「チッ……見てたのか」
「見てました! 凄かったです!」
「まるで映画かアニメのようでした! あ、でも……被害者の方は……」
「助けられなかった、と言いたいのか?」
「責めてるんじゃないです! 俺達が最初から助けに入ってれば……」
そう言って二人は俯いてしまった。
今回俺が遭遇したのは、数人の探索者がPKによって殺され、光の粒子となって散っていく瞬間だった。
恐らくこの二人は見ていながらも、最後まで動けなかったんだろう。
そりゃあそうだ。
PKは10人、人を殺し慣れているような奴らに2人で挑んだところで返り討ち。
「いや。いい判断だ。きっと助けに入った所でアンタらも殺されてPKが喜ぶだけだったろうさ」
「でも……」
「気にするな、という方が無理かもしれないがここはダンジョンだ。それに人に殺された場合のデスペナはそこまで重い物じゃない」
「はい……」
「アンタらだって探索証の裏に署名しているんだろう? ダンジョン内で死亡した際の臓器提供意思表示に」
「してます」
「一応は……」
「だったら死は覚悟するべき事だ。それが人かモンスターかの違いだけだ。冷たい言い方かもしれないが他人は他人、他人の為に命を落とす必要は無い」
モンスターやトラップで死亡した場合、ダンジョン外に帰還した際に重篤なデスペナが発生する場合がある。
大雑把に言えば脳死状態になった場合などがそれだ。
探索者全員が携帯している探索証の裏には、そうなってしまった場合、体の使える部位は全て提供します、という署名が必要になる。
保険証の裏にある臓器提供意思表示欄と同じようなものだ。
しかし人に殺された場合、脳死などの重篤なデスペナを喰らう事は無い。
だが……稀に、ごく稀に意識が戻らない被害者もいる。
意識が戻らない被害者は
なぜ時間固定なのかというと、脳は生きており、呼吸もし、心臓も動いているにも関わらず、老いる事がない。
細胞分裂もしないし排泄もしないし、食事すら必要としない。
なのに生き続けている。
まるでその瞬間に、その人の時間が固定されてしまったかのように見える事からそう名付けられた。
だがこの事は公にはされておらず、原因究明の為にとある研究機関が頑張ってくれている。
公にするべきだとの声もあるが、現状そうはならなそうだ。
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